@女は男を、男は女を騙して互いの欲を夢見ながら付き合いをする。だが、最後に女の方から騙していたが唯一嘘でないと一言「あなたが最初から好きだった」と言う言葉で互いの欲が消えさり愛情へと傾く。誰もが「こうあれば良い、こうであって欲しい」と願望を持つが現実は理想とは真逆が多い。
何事も理想通りにはならないから、最初から期待は持たない方が返って良いこともある、と言うことか。
『山本周五郎作品集4』山本周五郎
・「壺」
百姓の男が武士に殺される。それに怒った仲間の百姓の男が剣術を得て武士に試合を申し込む。腕に自信を持った百姓の男がある日の試合に「勝負あり」と言われて止められる。それは百姓の男が切られることは見えており、敵討が目的だけの男には武士道というものがなく鍛え直す必要があると考えた。そして土に埋めた壺を掘り当てればその道が分かるというと男は一目散に土を掘り起こし始めた。だが見つからず言われたのは「侍とは己を君主に捨てた者、自分というものはない。その覚悟を生かしていくのが侍だ」「人間の値打ちは身分によって定まるものではない、各自その生きる道に奉ずる心、己のためではなく生きるために、身心を上げて奉ずる心、その心が人間の値打ちを決定するのだ」と言われて目が覚める。
・「暴風雨の中」
貧しい家に生まれた男はワルになり、ある商家の主人を殺害した。それは主人があまりにも貪欲で何人もの人がその所為で苦しめられ最後には自殺したものもいた。法に触れなければ域を超えた欲は貪っていたのだ。その男が暴風雨の中死を覚悟で一軒の家に残った。そこに岡っ引きが。さらに恋しい女が豪雨で傾きそうな家に入り込み生き様を語ると女は一緒に死のうと覚悟を決める
・「雪と泥」
良い男、金づるを求めて女は男を仕留める。立ちくらみと称して男に近寄るとその男侍はある武家屋敷の長男坊、気が優しいく世間知らずの気弱な男だった。互いに一目惚れとして何か昔からの縁があってのきっかけとして付き合い始める。女は玉の輿で金を騙し取れる相手だと、男は大店の娘で金があると。。。だがある日のこと女の方から「あたしあなたを騙しました、初めから騙していたんです」と告白し、親方に使われており金が必要だったと言うと男がなんとか用立てすると約束する。それは女が「たった一つ、あなたが好きだ」と言う事の他は嘘だったと。男は金を手に入れるため人斬りに及んだが自分も斬られる。