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権力で引き裂く格差社会とは『風の影』(上・下)

2020-11-28 07:55:41 | ミステリー小説から見えるもの
富豪の傲慢さが貧相な家族を道連れ、仲間との差別意識から悲惨な事件へと引き込む恋愛・冒険ミステリーだ。親と子、権力で家族を引き裂き、若い恋愛を力でねじ伏せていく、そこには隠された実の子供の関係を暴き、幼心に恨みを掻き立てる、且つ複雑で醜い人間社会の格差を生み出した。人の欲望・金で周りを消し去るかのようにできる世界は現代でも恐ろしい
『風の影』カルロス・スイス・サフォン
・1945年のバルセロナ。霧深い夏の朝、ダニエル少年は父親に連れて行かれた「忘れられた本の墓場」で出遭った『風の影』に深く感動する。謎の作家フリアン・カラックスの隠された過去の探求は、内戦に傷ついた都市の記憶を甦らせるとともに、愛と憎悪に満ちた物語の中で少年の精神を成長させる…。呪われた本、執筆した著者、本を燃やす男等の人、裏切りや失われた友情の物語は、風の影の中に生きる愛と、憎しみと、夢の物語、恋愛、冒険ミステリー。
・「忘れられた本の墓場」で見つけた1935年出版された一冊の本「風の影」の著者に興味を持ち、元役人、その後は浮浪者フェルミン、今は古本屋での手伝いする知恵ものの店員と探索する。その本は70冊ほどで廃刊となっており、その著者はその後パリで結婚する前日に亡くなったことを知る。その後不気味な男が現れその本を言い値で買い取りたいと言い出し、その後は一切を燃やすのだと告白。「彼は本の中に住んでいた」を思い出し、ダニエルは販売せず、先ずはこの著者の謎めいた生涯をたどることにした。
・ダニエルの調べでは、この本の著者フリアン・カラックスは、帽子屋を営んでいる父親の実の子ではないことを知っており、その為母はピアノができないほどの打撲と仕打ちを父から受けていた。息子は父を恨み、母は息子を遠くパリへ送り出す。そこでは娼婦のサロンでピアノを演奏し、生活をしていた。その後富豪の娘ペネロぺと結婚する約束するが、結婚式の前日に決闘で亡くなってしまう。フリアンは「誰かしら覚えてくれている人間がいる限り、僕らは生き続けることができる」と言っていたと言う。
・フリアンはある富豪の娘を恋したことで、富豪は娘を閉じ込め一切外出させなくさせた。それはフリアンの愛した娘は、フリアンと兄弟だったからで、昔フリアンの母はその富豪の男の子を宿し、その子がフリアンだったのだ。富豪の娘が妊娠していたことが分かり富豪は激怒、数年後に母子とともに若くして亡くした。
・富豪の息子はそのことでフリアンを敵視し、フリアンを追い詰め、フリアンの結婚式の前日に決闘を申し込む。それには昔の仲間で危険人物的存在であったフメロ、誰もの恐れる英雄、殺人者、陰謀者、策略家と化し警察官となる。フメロは昔の恨みから決闘の拳銃に細工をし、フリアンを殺す仕組む、ところがその息子を殺害してしまう。それは実はフメロの計画通りフリアンをいつ殺害してもいい条件(殺人罪として)を作ったことにあった。
・その後、ダニエルは、富豪一家は破滅し、館もそのままとなり、フリアンの母も海外へ去ったことを知り、富豪の館の地下には若い母子の棺がそのまま眠り続けているのをダニエルとフリアン(変身した姿)が知ると、フメロがそれを嗅ぎつけてフリアンを襲撃。が逆にフメロが殺されてしまう。

・知恵、記憶が有能な店員フェルミンの言葉
    1、悪い人が多い理由
    「悪いやつには特定のモラルと、意図と、ある種の思考性が前提にありますからね。でも馬鹿な人間、つまり野蛮な人間は、じっくり考えたり、論理的に思考することをしないんだ。本能だけで行動する動物と同じですよ。奴らは、自分が良いことをやっていると思っている。自分はいつも正しいと思い込んでいる。そして、自分とは別種と思しき人間を片っ端からやっつけていくことに誇りを感じているんですよ。」
    2、恋人に対して
「『誰かのことを愛しているか』の質問に対して、一瞬でも考えてしまうようなら、その人はもう、その相手を愛してはいない、その先も永遠に愛する事はないって」
    3、友情と夫婦愛
「彼女にふさわしい男になる為にする事は、何を相手に与えられるかじゃなくて、どれだけ譲れるかってことが、時には大切なんです
    4、暇な人間のする事
暇な人間はね、いつでも他人の生活に首を突っ込んでいないと、気が済まないんですよ
    5、天も恵とは
「運命はね、いつも未知の曲がり角にいるんです。スリや、男の袖を引く女や、宝くじ売りみたいにです。人の求めに応じる3つの権化です。だからこっちから出向かなきゃいけないんだ」
    6、人というもの
「話すのは愚か者、黙るは卑怯者、聞くは賢者の技なり」
    7、片思いの心
「言葉より残酷な牢獄がある」(愛してもらえない自分を例えた言葉)
    8、後悔
「人生にチャンスは2度ない。あるとしても、それは後悔する事でしかない」