@人の「死」を理解する、ましてや愛し愛された人の場合は非常に辛い。それを乗り越えるために人は何をして、何を忘れたいと思うだろうか。人にはそれぞれの苦しみや悩みがあり、往々にして「時」が解決していくと言うが・・・「死」に対する理解、納得だけは違うような気がする。
人はいつか「死」を迎える、看取り、看取られる立場に変わる時、人間の儚さを知る・・のか。
『遮光』中村文則
「概要」恋人の美紀の事故死を周囲に隠しながら、彼女は今でも生きていると、その幸福を語り続ける男。彼の手元には、黒いビニールに包まれた謎の瓶があった──。それは純愛か、狂気か。喪失感と行き場のない怒りに覆われた青春を、悲しみに抵抗する「虚言癖」の青年
ー幼少の時に両親を亡くし、「人の死」と言うものに対して「周りを喜こばせる」を抱え生きてきた青年が、一人の女性美紀と偶然会う。意気投合し、愛し合う。今までにない人生をこれから新たに歩もうと言う矢先、その女性美紀は交通事故で亡くなる。これからという夢を互いに描きながら信頼しあい、愛し合っていたことで、目の前に幻想が現れるようになる。
ー離れ難い女性美紀の遺体を見たときに咄嗟に「カタミ」として裁縫された指を持ち帰り、「瓶」に入れ、いつでも一緒にいることで自分の心を落ち着かせ死と言うものを納得させたいと願っていた。仲間にも女性美紀は渡米し勉強しているという幻想を語り始め、自分自身への夢を叶えようと努力した。
ーだが、その幻想と錯覚が現実と合わなくなり、もう一人の女性の愛人が罵倒、暴力を振るったことで、幻想が現れ自分の女性美紀と勘違い、喪失感からその愛人を殺害してしまう。