なんと中国メディアは「住民の75%が日本からの独立を望んでいる」と報道!
尖閣の次は「沖縄乗っ取り」を目論む中国に甘い地元メディア、沖縄政財界の現状を憂慮します
http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20120618-01/1.htm
●「中華人民共和国琉球自治区」――。
中国では、沖縄を自国の領土として組み入れるかのような、こんな言葉が飛び交っている。目前に迫る危機に対して、日本政府にも、当の沖縄にも、自覚があるようには思えない。ジャーナリストの櫻井よしこ氏が、「返還40周年」の裏で起きている脅威を指摘する。
5月初旬の野田佳彦首相とオバマ大統領による日米首脳会談では、日米同盟の進展と米軍再編協議の前進は確認されましたが、沖縄・普天間飛行場の移設問題については事実上、棚上げとされました。
沖縄返還40周年の節目を前に、本来なら、日本政府は06年の日米合意通りに辺野古に移設するための具体的な議論を進め、中国の脅威からの守りを強固にすべきです。
しかし、そうさせない大きな要因は、地元・沖縄の強硬な反対姿勢にあります。
米軍再編は沖縄の基地負担を大幅に緩和します。在沖縄海兵隊の国外への移転規模は8600人に及び、残留する海兵隊は1万900人に減ります。さらに沖縄県南部にある5つの米軍基地・施設が段階的に返還されます。
米軍基地が沖縄に占めている総面積も、再編によって大幅に少なくなります。そのことによる米軍および自衛隊の機能低下を避けるためには賢い工夫が必要で、そのひとつが普天間飛行場の辺野古への移設なのです。
基地負担の大幅軽減につながる再編に、沖縄の人々が反対するのはまったく理屈に合いません。負担軽減を強く主張しながら、実際に負担が軽減される措置に反対する“地元の意思”を見せつけられれば、米国が「本当に日本と沖縄はやる気があるのか」と疑うのも当然です。
しかしここで問われなければならないのは、地元メディアや政治家たちが主張する“地元の意思”は、本当に辺野古移設に対して「反対一色」なのかという点です。
2010年1月24日、辺野古のある名護市で市長選が行なわれ、受け入れ反対派の稲嶺進氏が容認派の島袋吉和氏に約1600票の差をつけ、1万7950票で当選しました。しかし、報道機関の出口調査によれば、辺野古地区の有権者の7~8割が島袋氏に投票していました。
地図を見ればわかりますが、名護市は低い山々を境に、東部と西部に二分されています。辺野古のある東部は人口が少なく、西部には市役所や企業が立地して多くの人が住んでいます。この西部の有権者の過半が辺野古移設に反対したため、反対派の市長が当選したのです。受け入れ容認という“本当の地元”の声が、人口の多い地域の「反対」の声に封じ込められたとも言えます。
私が10年春に辺野古区長の大城康昌氏らを取材した時、彼らはこう語りました。
「西部の人々は山の反対側にいるから、辺野古に飛行場が来ても騒音などとは無縁です。負担は我々が担うのです。『地元の中の地元』の我々の大半は、条件付きで受け入れを了承してきました」
中国の軍事的脅威から沖縄を、そして日本を守るのは、日米同盟に支えられた国防力に他なりません。であれば、彼らの「負担を担う覚悟」は、重視されるべきでしょう。
一方、今年2月には、普天間飛行場が立地する宜野湾市長選挙が行なわれました。反基地闘争の先頭に立ってきた伊波洋一候補が勝てば普天間問題の解決がさらに難しくなることが予想されましたが、結果は対抗馬の佐喜真淳氏が僅差ながら900票差をつけて勝利しました。沖縄の新聞を読む限りでは、基地に対する沖縄県民の感情は極めて悪く、従って伊波氏が有利だと思われましたが、伊波氏は敗北しました。そのことは、沖縄県民の意識が「何が何でも反対」ではなくなってきていることを示しています。
●PAC3配備に「穏やかでない」
しかし、こうした民意の変化や、“本当の地元”の声は、なぜかあまり報道されません。そして「反対」だけが強調されて報じられていると言ってよいでしょう。どう見ても地元メディアの報道は偏っていると言わざるを得ません。
具体的に見てみましょう。今年4月、北朝鮮が人工衛星と称してミサイル発射を予告し、政府がPAC3(地対空誘導弾パトリオット)を沖縄本島と先島諸島に配備した時、地元メディアは次のような社説を掲載しました。
〈(沖縄県民は)PAC3の配備に対しても、心穏やかでない気持ちを抱いている。このままだと、日米一体となった沖縄の軍事要塞化が進むのではないか、との懸念が強い〉(沖縄タイムス、4月4日付)
〈PAC3を積んだ濃緑の大型自衛隊車両の列と観光客が乗るレンタカーが、道路を並走する光景を目にした県民の多くが、穏やかでない感情を抱いたことだろう〉(琉球新報、4月5日付)
さらに、琉球新報は、現地に入った自衛隊員が銃を携行していることについて、
〈戦場なら敵の攻撃をかわすために必要かもしれない。しかしここは国内だ。住宅地に隣接する場所で携行する銃は住民に向けられることにならないか〉(4月7日付)
としています。言うまでもなく、自衛隊は北朝鮮の「衛星」が沖縄に実害を及ぼすことのないように行動したにすぎません。にもかかわらず沖縄タイムスも琉球新報も、政府、さらには自衛隊の意図と努力を評価するより、敵視するような社説を掲載しています。日米一体の軍事要塞化が進むとの指摘は、米軍再編が、実質的には沖縄の大幅な負担軽減につながる事実を無視した一方的な見方です。さらに、テロや破壊・妨害工作など不測の事態に対処するために携行された銃が「住民に向けられる」と書いた琉球新報の社説子は、一体どのような根拠でこのくだりを書いたのでしょうか。平成の今、米軍や自衛隊が日本国の住民に銃を向けると本気で考えているとしたら、この社説子の事実を見る目は曇っており、物事を判断する能力は劣化していると言わざるを得ません。
隣の中国では人民解放軍が自国の国民に銃を向け、弾圧し、殺害し続けています。それと同じような、住民に銃を向ける事態が我が国で発生すると本気で考えているとしたら、是非、その根拠を示してもらいたいものです。このように根拠を示さずにセンセーショナルな社説や記事を報ずることは、沖縄の人々の判断を誘導することにもなります。
いわゆる本土の新聞だけを読んでいれば、いかに沖縄のメディアがバランスを欠いているかはよくわかりません。そこで尖閣諸島のある石垣市での、こんなニュースを紹介してみます。09年4月、米国の掃海艦2隻が石垣港に入港しようとした際、市民団体などが猛反発して、当時の大浜長照市長が、“非常事態”を宣言したのです。日米同盟の相手国である米軍の掃海艦が乗組員の休養のために寄港したのに対してなぜ非常事態の宣言なのか、理解しかねましたが、この時の報道も非常におかしなものでした。
琉球新報はなんと8歳の小学生の「戦争が起きそうな気持ちになる」という言葉を引用していました。幼い子供の発言をこのように政治的に使うより、琉球新報の記者は掃海艦の寄港の軍事的・政治的意味をこそ、堂々と論ずればよいのです。「戦争が起きそう」と思うのなら、その根拠を述べて警告すればよいのであり、それこそが一丁前の記者の書くべき記事なのです。
感情的な反米報道の一方で、彼らは中国の蛮行には目をつぶります。
04年11月に中国の潜水艦が石垣島周辺の日本領海を侵犯した時に、大浜市長をはじめ、沖縄の有力政治家が強く抗議したという話を私は寡聞にして知りません。10年4月に中国艦隊が尖閣諸島沖の東シナ海で大規模訓練を行ない、その後に沖縄本島と宮古島の間を航行した時も同様です。地元メディアの中国の脅威についての報じ方は、まるで問題意識を欠いていると言ってよいでしょう。
沖縄の経済界の言動にも理解しがたいものがあります。沖縄最大の建設会社・國場組の元会長で財界の重鎮である國場幸一郎氏(沖縄県日中友好協会会長)が「沖縄にとって中国は親戚で日本は友人、親戚関係をもっと深めたい」と発言したとの記事が、琉球新報などに掲載されています(共同通信の配信記事)。この記事では、東シナ海における中国の強硬姿勢に対しても〈沖縄の経済界では懸念の声はほとんどなかった〉とされています。
しかし、このような考え方は、日本人として非常識ではないでしょうか。自らが所属する日本国を友人と位置づける一方で、尖閣、沖縄への野心を隠さない中国を血のつながった親戚とし、日本国よりも近い存在と位置づけることへの疑問を提示するのがメディアの役割でしょう。
中国はすでに沖縄を自国の領土に組み込むための伏線を張ってきています。10年9月19日には、人民日報傘下の環球時報が、在日中国大使館に勤務した経験がある研究者・唐淳風氏の論文を掲載しました。その中で唐氏は「沖縄は日本の領土ではないのだから、日本は釣魚島(尖閣諸島の中国名)について中国と対話する資格はない」とし、「沖縄では住民の75%が日本からの独立を望んでいる」と書きました。
また、新華社は同年8月20日、中国社会科学院日本研究所の学者・呉懐中氏が「沖縄の主権は中国に属する」と主張したことを紹介しました。最近では中国のネット上に「中華人民共和国琉球自治区」や「中華民族琉球自治区」といった言葉が当たり前のように飛び交っています。
中国は尖閣諸島を「核心的利益」と呼び、沖縄までその食指を伸ばそうとしています。
このように沖縄を虎視眈々と狙う中国にとって最も好都合なのは、米軍が沖縄からいなくなることです。そのために、沖縄で反米・反基地運動が盛り上がり、日米同盟に楔が打ち込まれれば中国にとって思惑通りであり、中国の沖縄に対する働きかけは幾層にもわたって行なわれているはずです。「世論戦」を仕掛け、相手国の「世論の分断」をはかることは中国の得意とするところです。反米、反基地、そして反日の論調が強い沖縄の現状は、中国の歓迎するところだと思えてなりません。
一党独裁体制を維持するためには国際ルールも人の生命も顧みない中国共産党の価値観と、自由と民主主義を守ろうとする価値観との戦い今、世界はこの2つの陣営に二分され、「第二の冷戦」と言ってもよい状況にあります。いたずらに「反米」「反基地」一辺倒となっている地元メディアや政財界は、こうした状況をしっかり認識すべきです。そして政府は、彼らの声に左右されるのではなく、沖縄の“本当の民意”が変わりつつあることを踏まえて、国益を前提に米軍再編と国防のあり方を考えていくべきなのです。
(SAPIO 2012年6月6日号掲載) 2012年6月18日(月)配信
尖閣の次は「沖縄乗っ取り」を目論む中国に甘い地元メディア、沖縄政財界の現状を憂慮します
http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/sapio-20120618-01/1.htm
●「中華人民共和国琉球自治区」――。
中国では、沖縄を自国の領土として組み入れるかのような、こんな言葉が飛び交っている。目前に迫る危機に対して、日本政府にも、当の沖縄にも、自覚があるようには思えない。ジャーナリストの櫻井よしこ氏が、「返還40周年」の裏で起きている脅威を指摘する。
5月初旬の野田佳彦首相とオバマ大統領による日米首脳会談では、日米同盟の進展と米軍再編協議の前進は確認されましたが、沖縄・普天間飛行場の移設問題については事実上、棚上げとされました。
沖縄返還40周年の節目を前に、本来なら、日本政府は06年の日米合意通りに辺野古に移設するための具体的な議論を進め、中国の脅威からの守りを強固にすべきです。
しかし、そうさせない大きな要因は、地元・沖縄の強硬な反対姿勢にあります。
米軍再編は沖縄の基地負担を大幅に緩和します。在沖縄海兵隊の国外への移転規模は8600人に及び、残留する海兵隊は1万900人に減ります。さらに沖縄県南部にある5つの米軍基地・施設が段階的に返還されます。
米軍基地が沖縄に占めている総面積も、再編によって大幅に少なくなります。そのことによる米軍および自衛隊の機能低下を避けるためには賢い工夫が必要で、そのひとつが普天間飛行場の辺野古への移設なのです。
基地負担の大幅軽減につながる再編に、沖縄の人々が反対するのはまったく理屈に合いません。負担軽減を強く主張しながら、実際に負担が軽減される措置に反対する“地元の意思”を見せつけられれば、米国が「本当に日本と沖縄はやる気があるのか」と疑うのも当然です。
しかしここで問われなければならないのは、地元メディアや政治家たちが主張する“地元の意思”は、本当に辺野古移設に対して「反対一色」なのかという点です。
2010年1月24日、辺野古のある名護市で市長選が行なわれ、受け入れ反対派の稲嶺進氏が容認派の島袋吉和氏に約1600票の差をつけ、1万7950票で当選しました。しかし、報道機関の出口調査によれば、辺野古地区の有権者の7~8割が島袋氏に投票していました。
地図を見ればわかりますが、名護市は低い山々を境に、東部と西部に二分されています。辺野古のある東部は人口が少なく、西部には市役所や企業が立地して多くの人が住んでいます。この西部の有権者の過半が辺野古移設に反対したため、反対派の市長が当選したのです。受け入れ容認という“本当の地元”の声が、人口の多い地域の「反対」の声に封じ込められたとも言えます。
私が10年春に辺野古区長の大城康昌氏らを取材した時、彼らはこう語りました。
「西部の人々は山の反対側にいるから、辺野古に飛行場が来ても騒音などとは無縁です。負担は我々が担うのです。『地元の中の地元』の我々の大半は、条件付きで受け入れを了承してきました」
中国の軍事的脅威から沖縄を、そして日本を守るのは、日米同盟に支えられた国防力に他なりません。であれば、彼らの「負担を担う覚悟」は、重視されるべきでしょう。
一方、今年2月には、普天間飛行場が立地する宜野湾市長選挙が行なわれました。反基地闘争の先頭に立ってきた伊波洋一候補が勝てば普天間問題の解決がさらに難しくなることが予想されましたが、結果は対抗馬の佐喜真淳氏が僅差ながら900票差をつけて勝利しました。沖縄の新聞を読む限りでは、基地に対する沖縄県民の感情は極めて悪く、従って伊波氏が有利だと思われましたが、伊波氏は敗北しました。そのことは、沖縄県民の意識が「何が何でも反対」ではなくなってきていることを示しています。
●PAC3配備に「穏やかでない」
しかし、こうした民意の変化や、“本当の地元”の声は、なぜかあまり報道されません。そして「反対」だけが強調されて報じられていると言ってよいでしょう。どう見ても地元メディアの報道は偏っていると言わざるを得ません。
具体的に見てみましょう。今年4月、北朝鮮が人工衛星と称してミサイル発射を予告し、政府がPAC3(地対空誘導弾パトリオット)を沖縄本島と先島諸島に配備した時、地元メディアは次のような社説を掲載しました。
〈(沖縄県民は)PAC3の配備に対しても、心穏やかでない気持ちを抱いている。このままだと、日米一体となった沖縄の軍事要塞化が進むのではないか、との懸念が強い〉(沖縄タイムス、4月4日付)
〈PAC3を積んだ濃緑の大型自衛隊車両の列と観光客が乗るレンタカーが、道路を並走する光景を目にした県民の多くが、穏やかでない感情を抱いたことだろう〉(琉球新報、4月5日付)
さらに、琉球新報は、現地に入った自衛隊員が銃を携行していることについて、
〈戦場なら敵の攻撃をかわすために必要かもしれない。しかしここは国内だ。住宅地に隣接する場所で携行する銃は住民に向けられることにならないか〉(4月7日付)
としています。言うまでもなく、自衛隊は北朝鮮の「衛星」が沖縄に実害を及ぼすことのないように行動したにすぎません。にもかかわらず沖縄タイムスも琉球新報も、政府、さらには自衛隊の意図と努力を評価するより、敵視するような社説を掲載しています。日米一体の軍事要塞化が進むとの指摘は、米軍再編が、実質的には沖縄の大幅な負担軽減につながる事実を無視した一方的な見方です。さらに、テロや破壊・妨害工作など不測の事態に対処するために携行された銃が「住民に向けられる」と書いた琉球新報の社説子は、一体どのような根拠でこのくだりを書いたのでしょうか。平成の今、米軍や自衛隊が日本国の住民に銃を向けると本気で考えているとしたら、この社説子の事実を見る目は曇っており、物事を判断する能力は劣化していると言わざるを得ません。
隣の中国では人民解放軍が自国の国民に銃を向け、弾圧し、殺害し続けています。それと同じような、住民に銃を向ける事態が我が国で発生すると本気で考えているとしたら、是非、その根拠を示してもらいたいものです。このように根拠を示さずにセンセーショナルな社説や記事を報ずることは、沖縄の人々の判断を誘導することにもなります。
いわゆる本土の新聞だけを読んでいれば、いかに沖縄のメディアがバランスを欠いているかはよくわかりません。そこで尖閣諸島のある石垣市での、こんなニュースを紹介してみます。09年4月、米国の掃海艦2隻が石垣港に入港しようとした際、市民団体などが猛反発して、当時の大浜長照市長が、“非常事態”を宣言したのです。日米同盟の相手国である米軍の掃海艦が乗組員の休養のために寄港したのに対してなぜ非常事態の宣言なのか、理解しかねましたが、この時の報道も非常におかしなものでした。
琉球新報はなんと8歳の小学生の「戦争が起きそうな気持ちになる」という言葉を引用していました。幼い子供の発言をこのように政治的に使うより、琉球新報の記者は掃海艦の寄港の軍事的・政治的意味をこそ、堂々と論ずればよいのです。「戦争が起きそう」と思うのなら、その根拠を述べて警告すればよいのであり、それこそが一丁前の記者の書くべき記事なのです。
感情的な反米報道の一方で、彼らは中国の蛮行には目をつぶります。
04年11月に中国の潜水艦が石垣島周辺の日本領海を侵犯した時に、大浜市長をはじめ、沖縄の有力政治家が強く抗議したという話を私は寡聞にして知りません。10年4月に中国艦隊が尖閣諸島沖の東シナ海で大規模訓練を行ない、その後に沖縄本島と宮古島の間を航行した時も同様です。地元メディアの中国の脅威についての報じ方は、まるで問題意識を欠いていると言ってよいでしょう。
沖縄の経済界の言動にも理解しがたいものがあります。沖縄最大の建設会社・國場組の元会長で財界の重鎮である國場幸一郎氏(沖縄県日中友好協会会長)が「沖縄にとって中国は親戚で日本は友人、親戚関係をもっと深めたい」と発言したとの記事が、琉球新報などに掲載されています(共同通信の配信記事)。この記事では、東シナ海における中国の強硬姿勢に対しても〈沖縄の経済界では懸念の声はほとんどなかった〉とされています。
しかし、このような考え方は、日本人として非常識ではないでしょうか。自らが所属する日本国を友人と位置づける一方で、尖閣、沖縄への野心を隠さない中国を血のつながった親戚とし、日本国よりも近い存在と位置づけることへの疑問を提示するのがメディアの役割でしょう。
中国はすでに沖縄を自国の領土に組み込むための伏線を張ってきています。10年9月19日には、人民日報傘下の環球時報が、在日中国大使館に勤務した経験がある研究者・唐淳風氏の論文を掲載しました。その中で唐氏は「沖縄は日本の領土ではないのだから、日本は釣魚島(尖閣諸島の中国名)について中国と対話する資格はない」とし、「沖縄では住民の75%が日本からの独立を望んでいる」と書きました。
また、新華社は同年8月20日、中国社会科学院日本研究所の学者・呉懐中氏が「沖縄の主権は中国に属する」と主張したことを紹介しました。最近では中国のネット上に「中華人民共和国琉球自治区」や「中華民族琉球自治区」といった言葉が当たり前のように飛び交っています。
中国は尖閣諸島を「核心的利益」と呼び、沖縄までその食指を伸ばそうとしています。
このように沖縄を虎視眈々と狙う中国にとって最も好都合なのは、米軍が沖縄からいなくなることです。そのために、沖縄で反米・反基地運動が盛り上がり、日米同盟に楔が打ち込まれれば中国にとって思惑通りであり、中国の沖縄に対する働きかけは幾層にもわたって行なわれているはずです。「世論戦」を仕掛け、相手国の「世論の分断」をはかることは中国の得意とするところです。反米、反基地、そして反日の論調が強い沖縄の現状は、中国の歓迎するところだと思えてなりません。
一党独裁体制を維持するためには国際ルールも人の生命も顧みない中国共産党の価値観と、自由と民主主義を守ろうとする価値観との戦い今、世界はこの2つの陣営に二分され、「第二の冷戦」と言ってもよい状況にあります。いたずらに「反米」「反基地」一辺倒となっている地元メディアや政財界は、こうした状況をしっかり認識すべきです。そして政府は、彼らの声に左右されるのではなく、沖縄の“本当の民意”が変わりつつあることを踏まえて、国益を前提に米軍再編と国防のあり方を考えていくべきなのです。
(SAPIO 2012年6月6日号掲載) 2012年6月18日(月)配信