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加計問題・愕然とするしかなかった「前川新会見」の空疎な中身

2017-06-26 19:24:05 | マスコミ
加計問題・愕然とするしかなかった「前川新会見」の空疎な中身

マスコミよ、ツッコむ点は山ほどあるぞ

嘉悦大学教授 髙橋洋一

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52122


◇やっぱりマスコミは不勉強


 筆者はもう1ヵ月近くも加計学園問題について書いてきたが、ある人から、マスコミでも筆者と同じく、加計学園問題の発端が、獣医学部新設について門前払いをしてきた「文科省告示」にあることを指摘する人が出てきたと聞いた。やっとか、と思ったら、この現代ビジネスのコラムで、長谷川幸洋さんが書いたという。

筆者は長谷川さんの番組でこの問題を解説したこともあるが、まだこのことを指摘するのが長谷川さんだけなのか…マスコミは本当に不勉強だと驚いている。


加計学園問題はもういいだろう、また別のことについて書こうと思っていたところ、先週金曜日、前川氏が日本記者クラブで記者会見を行った。これについてマスコミが鋭い質問をしていたら、筆者が触れる必要もなかったのだが、相変わらずマスコミの質問にはまともなものがなかったので、本コラムでは、改めて先週の前川氏の記者会見と、マスコミが突っ込むべきだったポイントについてを示そう。


これまでの前川氏の記者会見に関して、挙証責任の話についての問題点は、5月29日付け本コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51868)で記し、前川氏が部下の報告を無条件に信じ、文科省文書の内容が正しいとしていることについては、先週の本コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52049)にその問題点を書き、前川氏の発言は間違っていると指摘した(何度も繰り返すが、獣医学部新設に際して、その是非を考えるための獣医師の「需要見通し」については、新設の許認可を持っている文科省側が示す責任=挙証責任がある、ということだ)。



ところが、前川氏は先週新たに行った記者会見でも同じミスを繰り返していた。もっとも、さすがに、「挙証責任」に関しては質問が出ていた。それに対して、前川氏は、


「私は政府の中でどっちが挙証責任があるかという議論をするのは実は不毛ではないかと思っておりまして、やはり協力しながらお互いの持っている情報をつきあわせてどうするのがいいのかを考えるべきだと思っておりまして、何か裁判のように挙証できなかったら負けだとかですね、挙証責任を負わないほうが、正当性が推定されるんだとかいう論の立て方自体がですね、ちょっとおかしいんじゃないかと思っております」


と答えている。前の記者会見より随分ぼかしているが、それでもピント外れな答えだ。


この答え方は、これまで筆者が書いてきたように間違いであるが、改めてマスコミ諸子のために、挙証責任がなぜキーになるかを説明しておこう。



◇それでもシラを切るとは…


この問題の本質は、そもそも「文科省告示」の段階で、文科省が獣医学部の新設を認めず、門前払いしてきたことにある。役人の常識では、そもそも認可制度があるのに「門前払い」を行うのはマズいことであり、「新設を認めない」と告示することはほとんど違法といってもよい。


普通であれば、その告示自体を廃止して、新設についての資格要件を定めた告示を新たに出すところだ。ところが、行政スタイルが古い文科省はそれができずに、結局、新たな告示を出すこともできなかった。


結果、獣医学部新設に関する2015年6月30日の閣議決定において、獣医師の増加に対して需要があるかという「需要見通し」をはじめとする4条件を設け、この4条件を満たす場合は新設を認める(逆にいえば、満たせなければ新設の必要はない)というところに逃げ込んだ。


この経緯から見ても、4条件の挙証責任は、許認可を持っている文科省にあることは明らかだ。そうでなくても、許認可官庁が挙証責任をもつのは、いわば役人の常識である。そんなこともわからないなら、文科省の許認可はやめるべきと筆者が言ってきたのは、そうした意味である。


そして、挙証責任が文科省にあるならば、前川氏の「行政が歪められた」という発言はすべてその根拠を失い、崩れるのがわかるだろう。

ところが、前川氏はいまだに挙証責任についてはシラを切り続けている。そこで、本コラムでは誰でもわかる決定的な証拠を挙げよう。



特区に関しては、その諸手続を法律・閣議決定で定めている。その中でも「国家戦略特別区域基本方針」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/pdf/kihonhoushin.pdf)はその名の通り特区に関する基本であり、これは閣議決定されている。


その中の23ページで、

「規制所管府省庁がこれらの規制・制度改革が困難と判断する場合には、当該規制所管府省庁において正当な理由の説明を適切に行うこととする」

と書かれている。筆者から見れば、これは許認可をもつ規制官庁なら当然であるので、わざわざ書く必要もないことだと思っているが、国家戦略特区に関わる省庁には、文科省のような「非常識官庁」もあるために、念のために書いたのだろう。


前川氏も、この閣議決定を知らないとはいわないだろう。この閣議決定は安倍政権直後に行われたものなので、もし前川氏に異論があったなら、部下が交渉する前に、内閣府にそれを言っておく必要がある。



先週のコラムでも筆者が引用した「特区ワーキンググループ」では、閣議決定されたこの基本方針通り、獣医学部新設については文科省に挙証責任があるといっている。文科省官僚がそれに反論できなかったのは、この基本方針がある以上、当然である。

だからこそ、2015年6月30日の閣議決定にある「4条件」について、2016年3月31日までに文科省がその見通しを示せなかったら、そこで文科省の負けが決まり、議論終了だ、ということだ。


さすがに内閣府は、文科省の「泣き」を一度認めて、9月16日まで議論を引き伸ばしたのだが、結局文科省は何も変わらなかったので、そこまで、だったのである。




◇なぜこれが読み取れないのか


マスコミが話題にしている例の文科省文書は、それ以降に作られたものだ。だから、筆者から見れば、終戦になっているのに武装解除しない敗残兵の泣き言、言い訳にしかみえない。前川氏は、「官邸の萩生田副長官、和泉補佐官にせかされた」というが、決着はついた、つまり終戦したのだから「打ち方やめ」といっているだけだ。


どうして、終戦が決まってから、ありもしない「総理の意向」が出てくるのかということを、マスコミは質問しなければいけないが、それもできてはいない。まったく情けないものだ。

マスコミはこうした経緯を無視して、あたかもあの文科省文書が正しく、2016年9月下旬以降も文科省と内閣府で交渉が続いていたかのように報じ、そのなかで「総理の意向」があったに違いないと言っているが、ハッキリ言えば間違いだ。



新たに出てきたとされる萩生田副長官に関する文科省文書は、以上の経緯を知っていれば何も問題ないことが分かる。

つまり、萩生田副長官は、農水省の意向を文科省に伝えて、文科省が負けている、つまり終戦になっていることを知らせただけだ。つまり、農水省としては、新設を禁止すべき需供状況でないとしているが、文科省は需要見通しを2016年3月までに作らなかった。それが、「農水省は了解しているのに文科省だけがおじけづいている」という内容の意味だ。こんな簡単なことを報じられないようでは、マスコミはどうかしている。



筆者は、彼らは確信犯的に前川氏に加担していると思う。というのは、先週の前川氏の記者会見自体、マスコミ側が持ち込んで実施したもののようだからだ。その証拠に、司会者が冒頭のところで「(今回の会見は)日本記者クラブが前川さんに申し入れをしました」といっている。このため、マスコミから厳しい質問はほとんど飛ばず、前川氏の言いたい放題になっていた。



もっとも、いい質問もあった。

「今回問題になりました総理のご意向などと書かれた文書についてですけど、前川さんが報道機関に文書を流したとの指摘があります。これは前川さんが流したのでしょうか。また、前川さんは特区の選定過程で行政がゆがめられたと声をあげています。ただ一方で、前川さんが事務次官に就任した際に、文科省の歴代幹部が長年天下りをしていた実態を承知していたと思うんですけど、この時なぜ省内のゆがみについて声をあげなかったんでしょうか」

という質問だ。これに対して、


「まず、情報の流出元については、私はコメントいたしません。ということでご理解いただくしかありません。2つ目の質問は、私はちょっと意味が取れなかったんですが、天下りを承知していたのに自制しなかったのはなぜかというご質問ですか。私は天下りといいますか、今回の再就職規制違反の発端になった吉田局長の早稲田大学への再就職への経緯は、事務次官として人事課から報告を受けるまでは承知しておりませんでした。

また、その他の案件についても、違法な事例があるということはその時点では承知しておりませんでした。再就職等監視委員会の指摘を受けて改めて違法行為というものが明るみになって、その時点で私は違法行為についての認識をするに至ったということですから、知っていたのに是正しなかったというのは当たらないと考えております」


と前川氏は答えている。流出元については、自分ということを示唆したのかと邪推してしまった(笑)。




◇官僚失格…?



加えて天下りについては、前川氏の言葉で愕然とした。ご承知の通り、この天下り斡旋禁止を企画立案したのは、筆者である(第一次安倍政権政権時代のことである)。このため、筆者は霞ヶ関全部を敵に回したともいわれた。

天下り斡旋禁止は、霞ヶ関全体で天下りについてどのように対処するかと各省人事部局が集まり協議した「有名な法律」である。それまでの天下り規制とまったく異なっていたために、キャリア公務員で知らない人はまずいない。


そもそも官僚は法律の執行を行うのが仕事だ。それなのに天下り斡旋を禁止する法律を知らないというなら、官僚失格である。前川氏は、事務次官、文科審議官、官房長という人事で重要ポストを歴任しているので、知らなかったでは済まないはずだ。「知っていたが、必要悪としてやってしまった」というのが普通だろう。


記者会見では、「そんなの知らないはずないでしょ、知らなければ官僚失格のはず」とさらに追及すべきだった。



前川氏は、官僚失格またはトンでもないウソをついていることになる。この「または」は数学と同様で、官僚失格とウソつきを兼ねていることも排除していない。


ちなみに、前川氏が現役時代に行っていた違法行為は、文部科学省における再就職等問題に係る調査報告

(http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/04/19/1382987_04.pdf)に詳しい。



この報告書では、50回程度、前川氏が登場しており、多くの事例において、前川氏が「法第106条の2第1項に規定する「地位に就かせることを目的として」「役職員であつた者に関する情報を提供した」ものと考えられる。」とされ、文科省天下り問題の中心人物であり、「天下りキング」ともいうべき人物である。



筆者は、本コラムにおいて、再三天下りと許認可の関係を指摘してきた。天下りに尽力する人は、許認可を厳しく運用する。前川氏はその典型人物である。

前川氏は「行政がゆがめられた」というが、天下りに好都合な行政を、内閣府によってゆがめられてしまったという意味ではないか。内閣府のほうが、文科省のゆがんだ行政を正して、天下りをなくそうとしているはずなのだが。どうも、マスコミは間違った報道ばかりをしているようだ。


2017.6.26

















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