師匠の黒野保三先生のご逝去により、自分自身の修業時代、そしてそこから得られたものや、今の自分の糧となっているものを回想して、師匠というものは何なのか?!を辿っています
最近、二つのドラマを、今更ながら視聴して感動しています。
どちらも役所広司さんが出演しています
一つは『陸王』 足袋を製造する会社の新しいチャレンジへの情熱に涙腺崩壊しています。
もう一つは、『宮本武蔵』 1984年に放送された新大型時代劇ですが、師とは何か、道へかける情熱や厳しさ、など、多くを感じることができる時代劇に感動しています。
私がこのドラマの二つに共通するのは、高い技術力を追求することと、その道にかける情熱、時代にあった新しいものを取入れる(理解する)ことと共に、時代が変わっても変わらない目に見えない大切なものを信念として貫いているところかなと思います。
鍼灸師 田中良和 ~新たなる旅立ち~ 師匠って何だ?!を辿る物語 ☆第2話 修行開始☆
さて、心については星稜高校野球部時代から人生において大切なものであることは、よく理解していました。と思っていましたが、やはり心を鍛錬する場は社会にあります。本当に自分の心が試されるのは、仕事に就き、社会という荒波に人生の船を出してからが本番です。
仕事をする、勉学に励む、技術を磨く、これは全て人の心がなせる業です。
黒野先生は、その心の成長、鍛錬というものを重視されていました。
それは単に厳しいだけではなく、時に楽しく、時に難しく、集団生活の中で人間性を磨き、育てていく場をつくっていただいていたということです。それが”二葉清友会”です。
この会は、治療院や研究所での鍼灸の臨床や学問、研究とは別の会として運営され、様々な行事が行われていました。しかし、この活動は、鍼灸臨床や学問と結びついています。学んだことを日常生活の中で活かし、失敗を繰り返しながら心を練っていく。そこでさらに学びを深めるという、なんとも上手く考えられた仕組みです。
行事をざっとあげますと・・・
月例研修会(月1回)
日々の日常生活や鍼灸臨床、実社会での事件・事故など社会現象、また黒野先生の貴重な経験を題材に、東洋哲学思想をもとに、その課題を読み解きお話いただき、皆でシェアする勉強会です。先生のお話の後、黒野先生とのエピソードや日常の経験についての心の在り方等の会員発表(弟子や外部から勉強に来られている鍼灸師が中心)があり、さらに深めていきます。
また、黒野先生の心の師匠である、佐治先生(僧侶)がご存命の時は、時々、佐治先生からも心のお話を勉強させていただきました。
囲碁会(月1回)
黒野先生はプロの棋士について学ぶアマチュアの段持ちでした。強さに応じて3クラスに分かれて囲碁大会が開催されました。鍼灸とは関係ないのですが、これが全く関係なくもないのです。全体を考える、先を読む、相手を読む、など非常に得るものの多いゲームです。
祝宴(親睦会 年3回)
正月をのぞき、新年のはじめの日曜日に新年会が開催されます。先生と親交のある鍼灸師の大先生や宗教界、経済界、囲碁界(囲碁仲間)、芸術界、医師、銀行員など様々なジャンルの皆さまや、外弟子、内弟子、その家族、研修や勉強会に参加されている皆さまが参加し楽しく行われます。
4月には春の祝宴、9月には秋の祝宴で黒野先生の誕生日祝い、新入生歓迎、結婚、出産、開業、卒業などの祝宴が、こちらも楽しく行われました。研究所には夜のお店ではありませんがカラオケセットがあり、黒野先生も歌を歌うのが大好きでしたので、皆で、飲んで歌って楽しい時間を過ごします。私のカラオケ好き♬は、修業時代に培われた(笑)ものであることは間違いないでしょう
周年記念旅行(5年に一回)
二葉清友会の会員やそのご家族が参加しての記念旅行が一泊二日で実施されます。バス旅行です。道中も楽しい催し満載で、やはりカラオケもあるわけで 下呂や恵那、伊勢や賢島、浜松、伊豆などなど楽しい旅を企画していただきました。宿泊は温泉です。そこにはちゃんと催し(宴会)が企画されています。隠し芸大会が開催です。 そしてちゃんと賞が用意されており、最後は審査発表があります。何をやって、笑わす?真面目にやる?どっちなど、楽しいことを思考し企画する心は、こんなところでも養ったのかもしれません。
急遽、行われた58周年記念旅行。今思えば、実施して良かったと思います。
祝宴の隠し芸大会が終わり、くつろいでいるヤツ
挨拶する黒野先生
写真を並べていいのか
黒野先生の節目のお祝い
還暦、喜寿、傘寿のお祝い、県知事表彰受賞のお祝いなど、弟子が企画し師匠の節目や功績をお祝いしました。
東洋医学研究所では、鍼灸や医療など学問を勉強する、技術を修得するだけではなく、このような心を養う教育も行われていました。私は毎年、行うのが当たり前だと思っていた行事でしたが、今、考えてみると、これを継続してやっていくということは、いろんな意味で当たり前ではないことが、よく理解できます。
黒野先生は、それだけ人としての心の在り方、集団やチームとしての心の在り方、日常生活での心の在り方などを大切にされ、一事が万事ではありませんが、すべての行動に自分の心が表われると言われます。
それは鍼をうつ、灸を据えるという行為、患者さんに対する接し方にも自然と出ます。だから心を養い、鍛えることは大事なのだということです。
人間性や人間力を養うことは、人生を歩むための最重要事項でもあるのです。
二葉清友会というのは、黒野先生を囲んで行われた勉強会がはじまりで、それが東洋医学研究所設立にまで至った重要な会です。2021年で60周年を迎える会でしたが、二葉清友会が還暦を迎えた年に、先生は旅立たれました。
どれだけ師匠の教えを修得することができたか・・・吸収の遅い私としては疑問符??なところもありますが、今、現在の自分があるのは、学問や技術の修行と同様、心の修行があったればこそだと感じています。
私が黒野先生のところへ弟子入りしてから、住込みの10年余りを含めて約34年。これまでも、これからも、この心の教えは脳の奥深く、細胞の中にまで入り込んでいると思っています。人生の岐路、物事を実践する時、そんな時の行動実践の指針となることは間違いありません。師匠だったらどう考え行動するかと。
師匠というのは、思想であり、哲学であり、魂の存在であり、人生をそっと後押ししてくれる、そんな心の指針となるランドマークのような存在なのかなと思います。
次回は、心の鍛錬は日常生活からということで、鍼灸臨床や学問の話に入る前に、修行生活の中から心を鍛えるエピソードを書かせていただきたいと思います。すっごくたくさんあるんですが、印象に残っているエピソードを回想させていただきます。
黒野保三先生が鍼灸臨床や東洋医学、臨床哲学について書かれた書籍です
とりとめのない文章、最後までお読みいただき、ありがとうございます
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