教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

はじめに 『保育者の専門性とは何か』(幼児教育の理論とその応用②)

2013年02月22日 23時55分55秒 | 教育研究メモ

 ようやく一週間が終わりましたね。
 さて、拙著『保育者の専門性とは何か』、ぼちぼち買っていただいているようで、光栄の限りです。感想などありましたら、このブログまでいただけると幸いです。とはいえ、本務優先・健康第一ですので、返事はどれほどできるかわかりませんが…
 以下は、拙著の前書きの一部です。別記事の目次などを参照しつつ、こんな内容なんだなと思っていただければ幸いです。


拙著『保育者の専門性とは何か』幼児教育の理論とその応用②、社会評論社、2013年より

 

はじめに

 本書の目的は、保育者の専門性について、幼児教育の方法と内容に焦点をあてて検討することである。なお、ここで用いる「保育者」とは、幼稚園教諭・保育士の総称とする。

 「保育」は、幼稚園で主に使われる「幼児教育」と、保育所・福祉施設で主に使われる「保護養育(保護教育)」とを包括する概念である。「幼児教育」は、幼稚園教諭にとっては自らの主要な職務を指す重要な概念である。また、保育士にとっても、的確な保育実践とその判断基準を形成する上で、幼児教育について一定の見識をもつ必要がある。幼児教育の方法・内容を考えることは、幼稚園教諭になるにしても、保育士になるにしても、重要なことである。

 本書は、主な読者として、保育者になりたいと考えている学生を想定している。また、幼児教育の方法・内容や、保育者の仕事について基本的なことを確認したいと思っている保育者や一般の人々にも、ぜひ読んでいただきたい。

 保育者の専門性とは何か? この問いは様々に考えることができるが、本書は、とくに幼児教育の方法と内容に注目して考えることができるように構成している。これにより、読者の教育観・保育観・子ども観などを深め、保育者として働く上で、または保育者と協同する上で、必要かつ基本的な考え方や態度を形成することをねらっている。

 本書の内容は、幼児教育の諸理論に関する多くの先行研究を、筆者なりに解釈してまとめたものである。一部の内容については、筆者が改めて資料に基づいて研究し直したところもある。応用例については、なるべく中正的見解に基づくように留意した。何年も実践経験を積んできた現職保育者には物足りないかもしれないが、まだ実践経験の浅い保育者志望者には、有用な理論とその応用例を提示できると思っている。読者が本書によって、少しでも幼児教育の理論的基盤とその応用への手がかりを得て、保育者の専門的職務とその生活とを理解することができれば幸甚である。

 現代日本で幼稚園教諭免許状や保育士資格を取得するには、「教育実習指導」「保育内容総論」「保育者論」などの専門科目について、それぞれ単位を取得しなければならない。これらの科目では、保育者の専門性(幼児教育の方法・内容への理解も含む)に関する体系的知識を学び、保育者の専門性にもとづいて考える訓練を行う。これによって、保育者の実践的問題について一般的な見通しを得ることをねらっている。本書は、このような科目趣旨に対応するよう、内容を精選・体系化したつもりである。[略]

 保育者は、生涯の出発点である幼児期において、その時期特有の教育にたずさわる。将来、自分は、保育者として、どのように幼児期の教育にたずさわるべきか。知識は、考えるための「材料」であり、「使う」ことで初めて意味が生じる。読者には、ぜひ本書を使って、将来の自分の生き方や実践を想像してほしい。

 [後略]

コメント (2)
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