教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

発達状況に応じた保育について【3歳児】

2011年06月15日 23時55分55秒 | 幼児教育・保育

 一つ大仕事が終わりました。次は、たまっている仕事を片付けていきたいと思います。
 さて、以下続き。5歳児までまとめていますが、1歳分ずつもったいつけて公開しております。


【3歳児ならではの経験の例】
 3歳児の一般的な発達状況は、次のようなものがある。例えば、膝のバネや平衡感覚が発達し、地形に合った動きや三輪車やボールなどの遊具に応じた運動が確かになる。左右の手の協調が進み、紙を持ってハサミで切ったり、箸を使ったり、一人で衣服をうまく着脱したりできるようになる。トイレへ一人で行くようにもなる。
 自分ですることをくり返すことで自信がつき、言葉での自己主張や理由をつけた拒否がはっきりするようになる。次第に相手との関係を踏まえて行動することも見られるようになるが、まだ妥協は難しい。親しい大人との関係を基礎として、子ども同士の関係も親密化し、2~4人程度の群れをつくるようになる。並行遊びが見られ、友だちと時間と場所を共有して遊ぶことを楽しむようになる。感情のコントロールが未熟であり、気持ちの浮き沈みは激しい。記憶を維持しつつ自分なりに再現することができるようになり、生活再現のごっこ遊びを楽しむようになる。使える語彙が500~700語程度に増加し、かつ助詞や副詞を含む単文を話し、初歩的な複文も話すようになり、話の前提に疎い親しい大人以外からの質問にも答えられるようになる。「どうして」や「いつ」とも聞くようになる。
 視点の違いはまだ理解できないが、不思議に思えるようになる。丸や四角だけでなく、台形やひし形などもわかるようになり、二つの図形を合成するようにもなる。物事の抽象化や規則性への気づきが始まり、赤・青・黄・緑などの基本的な色や、1~3までの数を理解し、自分で造語を作ったりする。顔を描いたり、描いた丸を名付けたりして、意図的に表現するようにもなる。想像力が豊かになり、想像上のお化けや怪物などをこわがったりするようになる。
 保育者は、3歳児の保育において、どのようなことをすべきか。3歳児の時期では、図形を区別したり、合成したり、視点の違いに気づいたりするようになり、ブロック遊びや折り紙を楽しめるようになる。図形の区別・合成や視点が変わると違った形に見えることなどに気づくよう、そのような機会を意図的に作ったり、声かけをしたい。また、まだ並行遊び中心であるために一見わかりにくいが、3歳児は友だち同士の場の共有を楽しんでいる。みんなで一緒に同じ行動をして楽しめるように、場と時間を設定することなどが考えられる。
 3歳児は、集団での設定保育を効果的に行えるようになる時期とも言える。ただし、まだルールの理解などは難しいため、3歳児の集団保育・遊びは4・5歳児のそれとは基本的に異なるものとして理解しておく必要がある。

<主要参考文献>
心理科学研究会編『育ちあう乳幼児心理学―21世紀に保育実践とともに歩む』有斐閣コンパクト、有斐閣、2000年。

(以上は、白石崇人『保育者の専門性とは何か』幼児教育の理論とその応用2、社会評論社、2013年に所収しております)

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