教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

大学の授業方法の「いろは」?

2011年11月05日 22時28分03秒 | 教育研究メモ

 11月、まずは1週間乗り切った…
 来週からさらに忙しくなるのに、すでに力尽きかけている私。

 さて、今日は、私の授業実践上意図的に使っている方法を少し紹介します。どこから学んだかというと、主に自分の体験・教育観・試行錯誤や友人・同業者の助言からです。
 私が普段から意識的に使っている方法は、以下の4つ。多くの大学教員が当たり前にやっている方法だと思いますので、過度な期待は禁物。大学の授業の「いろは」とでも思っていただければいいんじゃないかと。

① 一般的・実際的問題の考察に対する知識・経験の応用に関する機会提供
 (要するに小レポート)
 各科目ごとに2回~4回、授業内容と連動した一般的・実際的問題にかかわる小レポートを課し、授業やこれまでの生活で得た知識と経験を応用して考察する機会を提供しています。
 個別指導上非常に有意義な方法なのですが、採点・添削に時間がかかるので、使える時間が激減する現状下では真っ先に削減対象になってしまいます。今年度は4回(科目によって2回)書かせるようにしましたが、ここら辺の回数が、教育の質を維持するためにはギリギリのラインかなと感じています。科目によっては2回にしましたが、これは苦渋の決断、苦肉の策です。
 なお、かつては14回(つまり毎回)書かせていた時もありました。学生も大変ですが、大講義の場合は添削のため徹夜せねばならず、私も大変でした(苦笑)。

② 授業目的・目標の明示による授業内容の理解・定着の補助
 (要するに毎回の授業目標の明示)
 毎授業、授業の目的と具体的目標を板書・明示し、授業内容の理解および定着の補助としています。
 講義という授業形式は、学生に自分から学習しようとする姿勢を持たせることが難しい形式です。しかし、学習効果は、学生自身が自分で意識的に学ぼうとしなければ上がりません(もちろん、教師が工夫しなくてよいという意味ではなく、教師の工夫は当然のこととしてその上での効果を求めるにはという意味です)。この方法は、学生自身が意識的に学ぶためのしかけの一つです。
 板書をしておけば、学生が授業中に「この話は何の話だろうか」とわからなくなったら、板書されている目的・目標を見ることで「なるほど、今の話はこの目的・目標に達するために必要な話なんだな」と思って学習の方向付けが自分でできます。

③ レポートに対する評価基準・結果の明示とコメント
 (要するに、前もって学生に評価基準を提示した上で、学生が作成してきたレポートを添削してコメントすること)
 全15回中数回課する小レポートと、全回のまとめとして課する本レポートとの両方について、文章表現の力量を高めることを目指して評価基準(6~9段階評価)を学生に示した上で書かせています。段階に幅があるのは、小レポートと本レポートとの評価基準を微妙に違えているためです。
 また、そのレポートについて評価結果を明示するとともに、若干の添削・コメントを付けて返却して、今後の課題設定を支援しています。小レポートについては、各科目ごとに2回~4回・5名~135名分、本レポートについては、各科目ごとに1回・5名~135名分行っています。なお、135名というのは、今のところ受け持っている大講義の受講人数のうち、おおよその最大数です。これだけ添削すると、2~3日くらいはかかります。人によっては、一科目の履修生200名とか300名とか受け持っている先生もいますが、そういう方がこれを何回もやると発狂しそうになるでしょうねぇ(200くらいなら私も経験ありました)。
 レポート作成は、ただ文字を書けばよい作業ではなく、教員が学生を評価するのための資料づくりをさせることでもなく、学習活動であり教育活動です。評価基準を学生に先に示すのは、レポートを書く時に「こういう書き方をすれば良いんだな」と意識して、学び、かつ実践して欲しいからです。評価結果を学生に明示するのは、「自分にはこれが足りなかったのだな」と次の課題を見つけさせるためです。評価基準には、とくに文章の書き方について基本的なこと(大事なこと)を織り込んでいます。また、教育・保育の考え方について、基本的なこと(大事なこと)を添削・コメントで伝えたりします(最近はあんまり出来ませんが…)。

④ 授業内容の再整理・理解深化の機会提供
 (要するに小テスト)
 各科目ごとに4回~10回、前回の授業内容に関する小テスト(1~2問、3~5分程度)を課して、前回の授業内容について再整理し、理解を深める機会を提供しています。
 時間をあまり使いすぎては新しい内容に入れませんので、問題はすぐ答えられるように簡単に作ります。採点にもあまり時間をかけられないので、採点しやすいように選択問題の場合が多いです。授業で習った知識の使い方の可能性を知る機会にしたいと思っていますので、単語を答えさせることはあまりしません。レポートのコメントでも言いましたが、小テストも学習活動であり教育活動なのです。
 小テストは、「ああ、なるほど、前回の内容はそういう風にまとめられるのか」と理解を深めて欲しいと思って作っています。選択問題であれば、少なくとも選択肢の文章を読んで理解しようとします。そういう過程を発生させることをねらっています。
 またテスト時は持ち込み可です。憶えるんじゃなくて、むしろ調べられるようになって欲しいと思っているからです。

 あと、「授業内容に関するDVDの鑑賞と考察機会の提供」なんてものも書けますが、これを「方法」だなんて、私は恥ずかしくて書きたくないんですよね。ビデオやDVDなどの視聴覚教材を使うことが授業評価の項目に入っていることがありますが、ビデオやDVDは数ある教材の一種でしかないので、なぜこれだけが特別扱いされるのか納得しかねます。また、ビデオ・DVDなどの教材はあまりに完成されすぎていて、授業の流れが固定されてしまいます。教員が手を抜くために使う、という実態もあります。確かに学生の受けが良いこともありますが(時間も人も金もたくさん使って完成された教材なので、そりゃあ受けるでしょうよ)、私は自分で授業をつくりたいので、個人的に好きになれないんでしょう(笑)。


 すでに書いた事務書類の内容をコピペするだけだから、カンタン早い!…と思ったのに、コメントを増やして時間を食ってしまった。しかも、まだうまく説明できてない。
 …いや、もう休もう。休め。

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