教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

道徳的に不完全な人間は、道徳教育を行えないか

2015年09月01日 23時55分55秒 | 教育研究メモ

 道徳的に完全な人間など存在しない。したがって、人間が道徳を教えることはできない。
 この言は果たして真理か。

 否。
 人間の道徳的不完全性は、むしろ道徳教育を可能にする。

 人間は道徳的に不完全であるからこそ、道徳的実践に努力する。道徳とは、単なる道徳的知識や社会のルールではなく、道徳的知識やルールに対する納得に基づく実践である。それゆえに、納得づくの道徳的実践に対する努力は、道徳そのものになる。道徳的実践は感化の力を有する。深く広い道徳的理解に基づいて、道徳を実践しようと努力する教師の姿は、被教育者の道徳性を目覚めさせることができる。
 道徳教育の目的は、道徳を知識として教えることではない。道徳を知識として教えることは、道徳教育の目的ではなく、その手段である。道徳教育は、人間が本性として有する道徳性を喚起して自覚させ、道徳的判断力を育成して日常的に道徳的実践に取り組む態度・習慣を涵養することを目的とする。そのため、教師の道徳的実践に対する努力は、子どもがそれに感化される時、道徳教育の手段の一つとなる。

 道徳的に不完全な人間だからこそ、道徳的実践に努力することができ、道徳教育を可能にする。

 (参考:高山岩男の道徳教育論)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 6~8月の業務 | トップ | 道徳教育における「教えてや... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

教育研究メモ」カテゴリの最新記事