教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

道徳授業を計画する際の留意点

2016年05月17日 23時55分55秒 | 教育研究メモ

 最近ごぶさたしております。今年度からいろいろ立場が変わって、より忙しくなり、かつ公開できる話があまりないので、無言の日々が続いております。

 今年度から、幼児教育コース専任から児童教育コース・幼児教育コース併任(主に児教コース担当)に担当替えになりました。本学科児童教育コースは2年生から10の専修に分かれるのですが、そのうちの教育学専修を担当することになりました。教育学専修担当教員は実習指導における道徳教育の指導も担当するので、最近は道徳の模擬授業の指導もしております。指導を通しておおよそ定まってきた道徳の授業の計画に関する助言を少しまとめておきたいと思ったので、下記にメモっておきます。自分の覚書ですが、あわよくば読者からも意見をいただけたらうれしいなと思っています。

・道徳の授業は国語の授業ではない。読み物教材の読み解きに終始してしまってはもったいない。それなら国語の時間にやった方がよい。
・道徳教育は学校の教育活動全体において行う。しっかり読み解きをしなければならないなら、国語の時間と連携(時間割を連続させるなど)するなど、大きな観点から授業を構想するとよい。まさに必要なのはカリキュラムマネジメントである。
・『私たちの道徳』にはかなりの数の読み物教材が所収されている。『私たちの道徳』が国民の税金によって配布されていることを考えると、これを十分活用できる力も養わなければならない。読み物教材の活用については、考えなければならないことがいっぱいだ。
・『私たちの道徳』はなるべく使いたいが、必ずしも、「完璧」な教材やどこの教室でも使えるわけではないので、掲載されているままを使わなければならないという思考停止には陥ってほしくない。場合によっては、子どもたちに合った形や、道徳的価値や問題の本質に迫れるような形に加工する必要がある。もちろんその場合は、もとの教材をしっかり研究した上でのことである。安易な考えで、教材の良さを台無しにしてはならない。
・子どもたちの道徳性を発達させる上で、個人で考える活動や教師とのやりとりで考える活動を設けることも大事である。しかし、それ以上に大事なのは子どもたち同士で話し合い、お互いに刺激し合うことである。道徳性の発達は、関わり合いの中で進む面がある。話し合いの時間を確保しようと思うと、読み解きの時間をどれだけ整理できるかが肝要である。結局、教材研究の質が問われてくる。
・もちろん、教材の読み解きをしっかりしていないと話し合いをしてもたかが知れている。話し合いの質を高めるために教材を読み解くならば、それなりの時間が必要である。教材の読み解きと話し合いについて、その発問・活動内容・時間配分等を考えるのは難しい。時間配分の基準は、教材・活動および取り上げる価値内容の性質によって異なるだろうから難しい。
・道徳の授業のねらいは、単なる教材の理解には収まらない。教材の理解は手段である。ねらいは、子どもたちの普段の生活のなかで発揮される道徳性を発達させることである。そのためには、教材の内容を他人事に受け止めてしまうような活動を計画してはいけない。導入は子どもたちの普段の生活の中から発想すべきだし、展開も子どもたちの生活に引き寄せようと試みなければならない。終結は当然読み物の感想を書かせるのではダメだし、表面的な「~しないといけないと思いました」的感想で満足してはいけない。そういう意味で言うと、道徳授業の編成原理は、「生活から教材へ、教材から生活へ」と言えるのかもしれない。
・終結部では、ワークシートでも教師の話でも感想でもその授業に適切な形であれば形はなんでもよいが、どんな終結であっても、その授業で学んだ道徳的価値がその後の生活の中で生かされていくように工夫しなければならない。
・評価規準を作るにあたって、まだこれといった参考情報は見当たらない。しかし、ないので考えなくていいとはならない。評価規準がなければ道徳授業はできない。それは、学習指導要領で評価せよと言っているからというよりは、授業中の判断基準が必要だからである。基準(規準)がなければ、授業中に適切な即興的思考・指導支援をできない。
・インターネット上(教育研修センターHPなど)に多くの指導案がアップされている。当たり前だが、これらの指導案が完璧なわけではない。しっかり批判的に検討して、良いところを取り入れ、改善すべきところを改善する姿勢が学生には必要である。「参考にした指導案にこう書いてあったから」などという言い訳は×。先行実践に学ぶことは大事だが、自分の頭でもしっかり考えよう。

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