教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

小学校歴史教科書における寺子屋記述

2009年12月01日 19時14分39秒 | 教育研究メモ
 短大の紀要に「小学校歴史教科書における寺子屋記述」と題しまして、論文を掲載しました。明治から平成までの小学校歴史教科書(一部は尋常小学校)において、「寺子屋」がどう記述されてきたかを明らかにしようとした論文です。教育課程史と寺子屋研究史とを主な背景にすえて、検討しました。時代設定が長いため総説的にしか書けておらず、教科書史を専門にされている方には物足りないかもしれません。内容は、教科書史・教材史研究としても、日本教育史研究史としても読める内容になっているんじゃないかと思っています。
 論文構成は以下の通り。

  はじめに
 1.寺子屋記述の出現
  (1)明治初年における寺子屋否定
  (2)明治10年代の文部省における寺子屋研究の開始
  (3)記事本末体的内容編成の教科書における寺子屋記述の出現
 2.寺子屋記述の発展
  (1)文部省発の寺子屋研究の進展
  (2)徳川吉宗に関する教材としての寺子屋
  (3)郷土史教材としての寺子屋
  (4)人物主義的内容構成の教科書における寺子屋の教材化の可能性
 3.寺子屋記述の再発見
  (1)国定尋常小学校教科書における寺子屋記述の不在
  (2)『くにのあゆみ』における寺子屋の再発見
  (3)封建・身分制維持機関としての寺子屋認識
 4.戦後における寺子屋記述の展開
  (1)民衆性・前近代性を示す教材としての寺子屋
  (2)文化発展の原動力としての寺子屋
  おわりに

 結果的に、いろいろたくさん課題を残してしまったなと思いますが、何とかまとめ切りました。
 この論文の元になったものは、実は、昨年つくった前任校でのレジュメです。母校の研究室にS先生が後期から着任されたので、私も時間をつくって先生の大学院の授業に出席していたところ、他の学生と同様にレポート発表をすることになりました。その授業では、鈴木理恵氏の「歴史教育における遣唐使の発見―メディアとしての教科書分析」(教育史フォーラム・京都編『教育史フォーラム』第2号、2007年、35~54頁)を解説・批判し、さらには一人ひとり自分で教科書教材を選んでその歴史を研究してみようという課題が出されていました。後々別テーマで研究しようと思っていたテーマが「寺子屋」に関係しているので、私は小・中学校歴史教科書における「寺子屋」を選んで課題に取り組みました(当然、口頭発表の数には入れておりません笑)。
 その際、つい熱を入れて取り組んだ結果、他に発表する大学院生たちが焦るほどのボリュームになってしまいました(笑)。S先生からもちゃんと書けば論文になるんじゃないか、とアドバイスいただいたのをいいことに、調子に乗って論文にしたわけです。その過程で、中学校歴史教科書における寺子屋記述については捨象しました(もともと近年の記述しか検討してなかったのもあるので)。
 ですので、なんとなく鈴木氏の論文に似ているように見えるかもしれません。対象も問題意識も違いますが、もとはそこから出発しているので。例のごとく、激務の間を縫って書き上げたので、仕上げの頃は気を失いそうでした…。
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