教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

「教育研究活動」とは何か

2008年07月15日 19時49分58秒 | 教育研究メモ
 以下、単なる読みにくいメモです。理解しがたいこと、いろいろ矛盾や論理のブレなど多々あるかと思います(^_^;)。

 概念「教育研究活動」とは何か。
 その意味は、文脈によって異なります。大学の文脈では、「大学教職員による教育活動と研究活動」という意味を持ちます。一方、大学以外の学校や教育団体の文脈では、「教育研究の活動」という意味を持ちます。私は、教育会における研究活動を語る時、後者の意味でこの言葉を使います。
 「教育研究」という言葉は、「教育学研究」の観念的性格を批判する言葉です。この言葉は戦前からあり、著名なものは、阿部重孝「教育研究法」『教育科学』(岩波講座第20冊、岩波書店、1933年)です。ただ、明確に特殊な価値を付与されていくのは戦後に入って以降であり、宗像誠也『教育研究法』(河出書房、1950年)において、従来の観念的な教育学研究を批判し、教育諸問題の科学的研究を指して使われたのが「教育研究」の本当の始まりでした。その後、教職員組合や教育研究団体では、現実的な教育問題の解決を目指す教員たちの研究活動を「教育研究活動」と呼んでいきます。教職員組合はたびたび研究会を開き、教育研究団体は次々に創立され、「教育研究活動」はどんどんと拡大していきます。そして今では、教育学研究の「教育研究」化および左翼的イデオロギーの低迷にともない、価値的な意味を次第に隠して、一般的形式的な言葉となっているように思います。
 私が「教育研究活動」とは何か語る際には、次の二つの概念が重要になります。すなわち、「教育学研究」と「教育研究」です。単純化しすぎだとも言われると思いますが、教育学研究と教育研究を次のように定義します。ここでは、教育学研究とは、教育に関する事実を認識し、認識の結果得られた知を体系化することを目指す研究とします。教育研究とは、教育諸問題に関する事実を認識し、認識の結果得られた知を用いて問題解決を目指す研究とします。
 私が「教育研究活動」に注目する理由には、大きく二つあります。第1の理由には、大学や師範学校における教育学研究活動と、教育団体における教育研究活動とを区別するためです。大学と教育団体における研究活動は、同じではありません。両者の違いを認識することによって、教育に関する知の体系化を目指す教育学研究と現実問題の解決、および現実的な教育問題の解決を目指す教育研究と知の体系化との隔たりについて、問題化することができると考えます。知の体系化と問題解決を遂行するには、それぞれ専門的な知識・技能・経験を必要とし、一人の研究者、一つの機関がカバーできるものではありません。教育学研究と教育研究は区別されるべき概念です。
 私が「教育研究活動」に注目する理由の第2には、教育学研究と教育研究とを連結させて、相互を補完するよう捉えるためです。問題認識を志向してもその解決を必ずしも志向しない教育学研究は、社会から孤立し、教育実践や教育行政の現場から無用視されます。知の体系化を志向しない教育研究は、それぞれの研究が互いに無関係となり、不毛な作業を繰り返して、研究者のエネルギーを非効率的に消費していきます。教育学研究と教育研究とは、それぞれ十全に機能するためには、互いに欠点を補完し合うべきなのです。
 教育学研究と教育研究が出会う場面は、教員養成・研修・収容といった教員の資質形成・向上の過程、または教育政策の形成・決定・立法・実施といった政治過程にあります。そのような過程は、教育会における教育研究活動に見出せると考えています。
 私がこの両義的な言葉を使うのは、次のような意図からです。教育団体に関わる大学人には、自らは教育研究を行っているのだということを自覚して欲しい。実践家には、教育学研究を無視して教育研究を行うことがどれほど不毛か気づいて欲しい。私にとって、教育研究活動という言葉は、教育学研究と教育研究をつなぐ言葉であり、両者の理想的関係を現す言葉です。冒頭で述べた「教育活動と研究活動」という意味の教育研究活動は、「教育・研究活動」とでも称して欲しいくらいです。
 私は、学校や研究所を超えたところにある教育団体において、その理想的関係が実現する可能性があるのではないかと考えています。だから、教育会における研究活動を分析する視点は、なるべく「教育研究活動」という言葉で表現しようとしています。純粋に歴史的事実を説明する時は、単に研究活動と称してきたつもりです(ブレがあるかもしれませんが…)。私が教育会研究において「教育研究活動」という言葉を使うとき、その言葉は、そのまま私の問題意識を含んでいる研究視点なのです。
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