10月25日(水) 曇りときどき晴。
大阪厚生年金会館藝術ホールで開催された「alva noto + ryuichi sakamoto insen」の大阪公演二日目を聴きに行った。
alva notoはベルリンを拠点に映像作家、音楽家、プロデューサーとして活動しているカールステン・ニコライ(Carsten Nicolai)の別名。坂本龍一とのコラボレーション"alva noto + ryuichi sakamoto"で何枚か作品を発表しているが日本でのリリースはない。『insen』(画像)は2005年にリリースされたアルバムで、昨年、今年とヨーロッパを中心にライヴ・ツアーを行ってきた。日本公演の直前はオーストラリアだったようだ。
僕はこれまで"alva noto + ryuichi sakamoto"の活動を全く追ってなかった。今回のチケットを購入してもCDまでは手が回らなかった。 前夜になってiTunes Storeでネット配信されている『insen』をダウンロードしたぐらい準備不足だった。エレクトロニカはCDじゃなくて音楽配信でいいと思ってしまう。「どうせラップトップから音出してるんだから」と。

alva notoと坂本龍一のコラボレーションが何時どのようにしてはじまったのかは知らない。僕は2003年のMorelenbaum2/Sakamotoのアルバム『A Day in New York』でalva noto(カールステン・ニコライ)と出会うことになる。そのアルバムにはボーナス・トラックとして「Insensatez/re-model by alva noto」が収録されていた。「Insensatez/re-model by alva noto」をはじめて聞いた時は衝撃が走った。CDが音飛びしていると思ったのだ。レコード盤を針で引っかいてスクラッチ・ノイズを出したヒップホップが登場した時のような感じだといえばいいのだろうか。とにかく不良品を掴まされたような気持ちになったのを覚えている。それがalva notoだったのだ。
会場には開演の10分ほど前に着いた。係りの人が「まもなく開演します。開演すると演出の都合上入場できなくなります」とアナウンスしていた。クラシックのコンサートのように1曲終るまで入場させないようだった。
ステージには向かって左にヤマハのグランド・ピアノ(たぶん坂本龍一がライヴ・ツアーでいつも使っているMIDIピアノだろう)。ステージ一面に広がる横長のスクリーン。右側には変わった形(台形)のセットがあって、その上にラップトップが2台置いてあった。
5分押して開演したのだろう。坂本龍一とカールステン・ニコライが現れて緊張感に満ちた演奏がはじまった。坂本龍一がグランド・ピアノの中に頭を入れて、直接弦を引っかいたり、叩いたりしだした。スクリーンには大小の円がゆっくりと点滅、まるでケータイのヒカリドロップスのようにチカチカとしていた。カールステン・ニコライはラップトップを操っていた。1台はたぶん映像をコントロールしていたのだと思う。その音楽はサンペンス映画の序章にながれるテーマ曲のようであった。
「もっとも美的なメタル・マシーン・ミュージック」と評されるニコライのライヴ・パフォーマンス。ビジュアルはとっても大切な要素だ。スクリーンに現れるミニマルな図形は、教授が弾く現代音楽のような調べと、ニコライのラップトップから繰り出されるパルス信号や音波と融合していた。ビジュアルと音響が溶け出すように絡みあっていた。
そう、会場内には教授が焚いているお香の香りが立ち込めていた。その空間の中で僕はふっと意識が遠のく一瞬を何度か迎えた。眠りの森に迷い込みそうだった。アンビエント・ミュージックを体感しながら瞑想しているようでもあった。デジタルのノイズが激しく会場を揺らし、スクリーンでは幾何学模様が打つかる激しいライヴ・パフォーマンスが展開された時、それまでと違う意識に翻弄された。ほとんど目が開けられないくらいに光が瞬いていた。「この曲が早く終ってほしい」とさえ思った。それが本編の最後の曲だった。
アンコールで「戦場のメリークリスマス」を解体し再構築した「XMRL」が披露された。「戦メリ」であって「戦メリ」ではないこの曲がもっともわかりやすかった。
■alva noto + ryuichi sakamoto insen
2006年10月25日(水) 大阪厚生年金会館藝術ホール
1階H列025番
alva noto
ryuichi sakamoto
Set List
01.
02.
03.
04.
05.
06.
07.
08.
Encore
09.
10.XMRL
11.
勉強不足のため曲名が不明です。ただいま調査中。
ちなみに厚生年金会館大ホールではせっちゃん(斉藤和義)がやってました。