Eric Clapton Japan Tour 2006

2006年11月14日 | Live

11月14日(火)
曇り一時雨。

ステージには天井から幕が垂れ下がり無数のライトが散りばめられていた。その下に十体の照明が林立。スクリーンやモニター・ヴィジョンはなかった。アリーナを縦に使用しているので後ろや真正面のスタンド席は本当に遠くて米粒ぐらいにしか見えないのだが...

10分ほど押して会場の照明がスッーと落ちてメンバーが登場した。ステージはひな壇になっていて、上の段にはヴァッキング・ヴォーカルのミシェル・ジョンとシャロン・ホワイト、ドラマーのスティーブ・ジョーダンがいた。下の段は両サイドにティム・カーモンとクリス・スティントンのキーボードが配置され、ドイル・ブラムホール2世、デレク・トラックス、エリック・クラプトンのトリプル・ギター、そしてベースのウィリー・ウィークスというラインナップだった。

エリック・クラプトンは黒い半袖シャツにブルージーンズ。ギターは黒(本当は濃いグレーだそうだ)のストラトキャスター。おなじみのシグネイチャー・モデルだ。シャイな性格だといわれるクラプトンは派手なアクションもなくギターを弾いた。曲はシームレスに続いて意外にあっさりと終った。2時間10分くらいだった。

今回はドイル・ブラムホール2世、デレク・トラックスとトリプル・ギターが話題だったが、バンドが繰り出すグルーヴが半端ではなかった。アリーナは1曲目からスタンディングとなったが、圧倒されるというか、まぁオーディエンスが若くないこともあると思うのだが(苦笑)、身じろぎしないで見つめているという人たちが多かった。

僕はアリーナの後ろだったので、最初は双眼鏡越しにステージを見た。クラプトンの姿を見た後は、話題のデレクに釘付け。デレクは1979年生まれで現在27歳。叔父さんがブッチ・トラックス(オールマン・ブラザーズ・バンドのドラマー)で、1999年にオールマン・ブラザーズ・バンドに加入。デュアン・オールマンを髣髴とさせるスライド・ギターが話題となっている。クラプトンとのつきあいは昨年の秋からだという。J.J.ケイルとクラプトンのジョイント・アルバム『The Road To Escondido』のレコーディング・セッションに参加するようにと、直接クラプトンから電話をもらったことがきっかけとなり、バンドへの加入が決定したという。

クラプトンとデュアン・オールマンが共演した「いとしのレイラ」はデレク & ザ・ドミノス『Layla and Other Assorted Love Songs』(画像)に収録されている。今回はこのアルバムからの曲が多いらしい。それがキャリアの総括といったものなのか、デレクのスライド・ギターをフィーチャーしたライヴ・ツアーなのか、僕にはわからなかったが、クラプトンもやはり「まとめ」の段階に入っているのだと思った。

コアなファンからは「Sit Down Set」と呼ばれるアコースティック・セット。クラプトンが座って弾き語りをはじめるとオーディエンスも着席。はじめはたったひとりで、次の曲からギター、その次の曲はリズム・セクションとメンバーが増えていった。

バンドが揃っての「After Midnight」で後半がスタート。ようやく知ってる曲の登場だ。正直にいうと曲名がわかったのは「Wonderful Tonight」、「Layla」、「Cocaine」、「Crossroads」の5曲だけだった。「Wonderful Tonight」のイントロだけで喜んでいたら蹴られそうだけどミーハーなんだから仕方がない。

「Little Queen of Spades」ではクリス・スティントンのキーボード・ソロに続いてデレクのソロがあったのだと思う。会場から「がんばれ!」なんて微笑ましい声援が飛んだ。クラプトンから見ればデレクは息子といってもいい世代。なにか音楽の伝承が目の前で行われているような感じがした。「職人」とか「誇り」といった言葉が頭に浮かんだ。クラプトンの存在が大きく感じられた。それは「Layla」のエンディングでふたりのセッションがはじまった時に最も強くそう思った。僕はもう鳥肌が立つほど感動していた。後ろを向いてソロを弾くクラプトンの背中はとてつもなく大きく見えた。

■Eric Clapton Japan Tour 2006
11月14日(火) 大阪城ホール
アリーナ席 57列 55番

Eric Clapton - guitar, vocals
Doyle Bramhall II - guitar
Derek Trucks - guitar
Chris Stainton - keyboards
Tim Carmon - keyboards
Willie Weeks - bass
Steve Jordan - drums
Michelle John - backing vocals
Sharon White - backing vocals

Set List
01. Pretending
02. Got to Get Better in A Little While
03. Old Love
04. Tell the Truth
05. Anyday
06. Motherless Children

Sit Down Set
07. Driftin' Blues (EC solo)
08. Key to The Highway
09. Outside Woman Blues (with rhythm section today)
10. Nobody Knows You When You're Down and Out
11. Running On Faith

12. After Midnight
13. Little Queen of Spades
14. Further On Up The Road
15. Wonderful Tonight
16. Layla
17. Cocaine
Encore
18. Crossroads
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Dream Power ジョン・レノン・スーパー・ライヴ 2006

2006年11月14日 | 佐野元春

11月4日土曜日、午前11時10分。僕は新幹線のぞみ84号に乗って東京へ向かった。上着のポケットからiPodを取り出してビートルズの『Abbey Road』を聴いた。ジョン・レノンが「Come Together」を歌う。

"もし、この世界をもう少し良くしたかったら、今すぐにみんなで繋がろう"

そんなふうにジョンは歌っている。僕はその時まだ知らなかった。僕がその夜、頭の上でクラップしながら、ジョンが言ったその言葉を証明しようとするなんてことを。

名古屋に着く前に『Abbey Road』は終った。もう片方のポケットから文庫本の『ポートレイト・イン・ジャズ』(和田誠[絵]/村上春樹[文])を取り出してページを繰った。

関係ないですけど先週、『「ひとつ、村上さんでやってみるか」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける490の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか? 』とスコット・フィッツジェラルドの翻訳本『グレート・ギャツビー』が出ましたね。『グレート・ギャツビー』は愛蔵版ではなくてペーパーバックのほうを買いました。

ポケットから『ポートレイト・イン・ジャズ』を取り出してページを繰ってると、ビリー・ホリディについて書かれた一文が目に留まった。

[声をつぶして、麻薬に体をむしばまれるようになってからのヴァーヴ時代の彼女の録音は、若い頃あまり熱心には聴かなかった。]

そう書いてあった。でも三十代に入り、四十代へと進むにつれて好んでターンテーブルに乗せるようになったのだと続けていた。そして何が、そんなにまで強く惹きつけられるのかと考えた結果、もしかしたらそれは「赦し」のようなものではないかと、そう感じるようになったのだと村上春樹は書いていた。

しかし、ビリー・ホリディの優れたレコードを1枚あげるのなら、ヴァーヴ時代ではなくて、コロンビア時代の「君微笑めば」になるのだと村上春樹は続けた。そして最後にこう書いていた。

[「あなたが微笑めば、世界そのものが微笑む」
そして世界は微笑む。信じてもらえないかもしれないけれど、ほんとうににっこりと微笑むのだ。]

その夜、僕は武道館で見た「光」ににっこりと微笑んだ。そして世界が微笑んだ気がした。素晴らしい体験をした。そんなわけでジョン・レノン音楽祭「Dream Power ジョン・レノン・スーパー・ライヴ 2006」をSITEDOIにアップしました。
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