2013/03/05 OnAir - 1st. Week - 特集:『ZOOEY』 第一回
01.Pretenders:Popstar
02.Todd Rundgren:Wailing Wall
03.Ron Sexsmith:Back Of My Hand
04.Ron Sexsmith:Lost In Thought
05.Moon Martin:Aces With You
06.佐野元春 & The Coyote Band:世界は慈悲を待っている
07.佐野元春 & The Coyote Band:虹をつかむ人
08.佐野元春 & The Coyote Band:La Vita é Bella (ラ・ヴィータ・エ・ベラ)
09.佐野元春 & The Coyote Band:愛のためにできたこと
10.佐野元春 & The Coyote Band:ポーラスタア
11.佐野元春 & The Coyote Band:君と往く道
---------------------------------------------------
■内容の一部を抜粋
・特集:『ZOOEY』 第一回
まもなく発売される佐野元春 and The Coyote Bandのアルバム『ZOOEY』の特集。
・Popstar
プリテンダーズの「Popstar」。
2月23日の東京公演でツアーのファイナルを迎えた佐野元春 and The Coyote BandのWinter Tour。ライヴはいつもこの曲ではじまっていたそうだ。
・Wailing Wall
トッド・ラングレンの「Wailing Wall」。
リスナーからWinter Tourのライヴ終演後にかかっていた曲にリクエスト。トッド・ラングレンの1971年のアルバム『Runt: The Ballad Of Todd Rundgren』に収録されている。
・3PICKS!
「Motoharu Radio Show」では毎月番組推薦盤3枚のCDをピックアップしている。今月3月の「3PICKS!」はロン・セクスミス『Forever Endeavour』、バンド・オブ・ホーセズ『Mirage Rock』、そして佐野元春 and The Coyote Band『ZOOEY(初回盤)』。どのレコードも心に響くよいソングライティングと素晴らしいサウンドがあると元春。この中から今週はロン・セクスミス『Forever Endeavour』。
・ロン・セクスミス
カナダ出身のシンガー・ソングライター、現在49歳。これまで11枚のスタジオ録音盤を発表している。とても優れたシンガー・ソングライターで、ポール・マッカートニー、エルヴィス・コステロ、エルトン・ジョン、彼のファンだという同業者もけっこう多くいる。デビューのきっかけとなったのは1995年に出した最初のアルバムをエルヴィス・コステロが絶賛したことから注目されるようになった。ロン・セクスミスが書く曲はメロディも詩もとても素晴らしいのでこれまで多くのシンガーがカヴァーしている。レイ・デイヴィス、ロッド・スチュワート、ニック・ロウ、k.d.ラング。そうしたカヴァー・レコードを通じてロン・セクスミスの曲は多くの人に知られていった。新しいアルバム『Forever Endeavour』は現在のポップ・ロックのシーンでとてもよい仕事をしてきているミッチェル・フルームがプロデュースを担当している。このアルバムのミュージシャンのクレジットを見てみるとミッチェル・フルームの仕事には欠かせないドラマーのピート・トーマスの名前がある。1989年の元春のアルバム『ナポレオンフィッシュと泳ぐ日』にも参加したドラマーなので個人的にも親しみを感じると元春。今回もこれまでのロン・セクスミスらしい自然で温かみのあるやさしい曲がたくさん収録されている。アルバム『Forever Endeavour』から「Back Of My Hand」と「Lost In Thought」の2曲。
・Aces With You
リスナーからのリクエストで、むかし元春が伊藤銀次さんに勧めた曲、ムーン・マーティンの「Aces With You」を銀次さんにプレゼントしたいとのこと。
「そうですね。銀次の音楽性にとても近いものを感じたので、この曲聴いてもらえるかなぁと思って、彼に推薦したのを覚えています。ムーン・マーティン。'70年代後半、'80年代前半に活躍したソングライターです。後にロバート・パーマーがBad Case Of Loving Youという曲をカヴァーして有名になりました」と元春。
・GreenPeople
環境問題に取り組むユースたちを紹介するレポート「GreenPeople」。毎週このコーナーでは環境を巡る社会活動を通じて様々なアクションを起こしている人たちを紹介。このコーナーの協力はNHKの環境特集番組「エコチャンネル」。
http://www.nhk.or.jp/eco-channel/
今週はNPO法人「ごみじゃぱん」。家庭ゴミの半分を占める容器や包装ゴミに着目し消費者が容器、包装ゴミの少ない商品を選ぶ取り組みを行っている。神戸大学の学生たちが中心になって2006年から活動している。
・佐野元春 and The Coyote Bandのアルバム『ZOOEY』の特集
佐野元春 : さて、Motoharu Radio Show、今月一ヶ月間はまもなく発表する僕の新しいアルバムを特集します。今夜はその第一回目。アルバムのタイトルは『ZOOEY』。ここのところ活動を共にしているコヨーテバンドとセッションしました。これまでツアーで何曲か披露してきているのですが、新曲をこうしてまとめて聴いていただくのはこの番組が初めてということになります。まず1曲目はリード・トラックとしてこの番組でも何回か聴いていただきました。「世界は慈悲を待っている」。アルバムの1曲目に持ってきました。荒地から一歩踏み出した景色ですね。そんなイメージで書いてみました。ドラムス:小松シゲル、ベース:高桑圭、彼らの演奏はとてもいいですね。全体的な雰囲気はモータウン・リスペクトの一曲となりました。この曲は単純なふたつのコードの繰り返しでできてます。ダンス曲でよくあるかたちですね。そして渡辺シュンスケくんの弾くハモンド・オルガンがとてもいい感じで心をかき立ててくれます。誰の心の中にもある"Grace"という美しいソウル、それを表現してみました。この曲を新生コヨーテバンドから挨拶代わりの一曲として紹介します。僕の新しいアルバム『ZOOEY』から「世界は慈悲を待っている」。
世界は慈悲を待っている
佐野元春 : さて、僕の中で半ば偶像化しているレコーディング・プロデューサーがいます。フィル・スペクター。幼い頃、両親が持っていたレコードを聴いて以来、ザ・ロネッツの「Be My Baby」、この曲は僕の大好きな曲のひとつになりました。'60年代、フィル・スペクターが発明したサウンドは正に大都市ニューヨークの街の音でした。街に暮らす人たちのためのポップ・ソングですね。そのスペクター・サウンドの様式を用いてプロデュースしたのが次に聴いてもらいたいこの曲、「虹をつかむ人」です。僕の中では「SOMEDAY」、「月夜を往け」に続くフィル・スペクター・リスペクトの一曲となりました。聴いてください。新しいアルバム『ZOOEY』から「虹をつかむ人」。
虹をつかむ人
佐野元春 : さて、3.11以降に書いた最初の曲はこの曲でした。「La Vita é Bella (ラ・ヴィータ・エ・ベラ)」。この時期、東北の震災と原発事故で国全体が打ち拉がれてました。ポップ・シンガーに求められたのはチャリティ、そしてソングライターに求められたのはヒューマニズムでした。同じ時期、僕はNHK「ザ・ソングライターズ」で同業のソングライターに同じ質門を繰り返して訊きました。「ソングライティングは現実を乗り越えることができるんだろうか?」答えは様々。しかしどのソングライターも表現を諦めないという強い意思を持っていたのが素晴らしいなと思いました。この曲では渡辺シュンスケくんのオルガンからはじまります。夜明けのイメージですね。続いて深沼くんが弾くディストーション・ギター。この曲の感情を表しています。愛しいことに理由はない。人の命は続いていく。ただ残念なことに人が"La Vita é Bella (ラ・ヴィータ・エ・ベラ)"、人生は美しいと感じられる頃には、身も心も擦り傷だらけです。聴いてください。僕の新しいアルバム『ZOOEY』から「La Vita é Bella (ラ・ヴィータ・エ・ベラ)」。
La Vita é Bella (ラ・ヴィータ・エ・ベラ)
佐野元春 : さて、文学や歌に限らず、今も昔も世の中の作家たちの興味というとそれは愛の矛盾についてですね。どの作家もこれをテーマして手を替え品を替えてなんだかんだと呟いています。例えばシェイクスピア。何行も費やしてそれを物語にしています。しかしスモーキー・ロビンソン。彼はたった3分のラヴソングでそれを表現します。しかも13歳の女の子でも感じるやり方で表現する。これはとても素晴らしいことだと思います。僕が理想とするラヴソングのかたちですね。次に聴いていただきたいこの曲、そんなふうに表現できてたらいいなと思います。聴いてください。僕の新しいアルバム『ZOOEY』から「愛のためにできたこと」。
愛のためにできたこと
佐野元春 : さて、「あの人がいてくれる限り大丈夫」そんな人がいてくれると心強いですね。ちょうど今の季節冬の空を見上げると一際輝く星があります。いつも僕らの営みを照らす守り神のような存在、それがポーラスタアです。今夜は僕の新しいアルバム『ZOOEY』、このアルバムからの曲を聴いていただいてます。このアルバムのレコディーングがはじまるとき、バンドにメンバーが一人増えました。ギターの藤田顕くんです。この曲で彼はフェンダー・ジャズマスターを使ってとても感じのいいアルペジオを弾いてくれてます。そしてもうひとりのリズムギターは深沼元昭くんです。曲の中ギター・ソロも深沼くんが弾いてますが、これがシンプルかつ強力なフレーズですね。この曲のハイライトといってもいい、僕の大好きな瞬間がここにあります。みなさんも是非、聴いてみてください。新しいアルバム『ZOOEY』から「ポーラスタア」。
ポーラスタア
佐野元春 : さて、みなさんもそうだと思いますが、機嫌がいいときに口ずさむ曲というのがあると思います。僕の場合は'60年代の名曲、ヤング・ラスカルズの「Groovin'」ですね。この曲を口ずさむと何か心が晴れ晴れとした気持ちになります。何か人を信じることに少しだけ無防備になれるような、そんな感じです。次に聴いていただきたいこの曲もそんな気持ちで書いてみました。誰かに愛されてるという感覚。とても大事な感覚です。そこにある安心感というのは何にも代え難いですよね。しかしどうでしょう。この曲は愛されるということに慣れた人たちにとってはきっとピンと来ないかもしれません。世の中にはそうでない人たちであふれています。次に聴いていただきたい「君と往く道」。この曲はそんな人たちにこそ口ずさんでもらいたいなと思っています。では今夜の特集、最後の曲聴いてください。アルバム『ZOOEY』から「君と往く道」。
君と往く道
・アルバム『ZOOEY』デラックス盤
パッケージは『ZOOEY(初回盤)』と『ZOOEY(Deluxe Edition)』の二種類。デラックス盤の詳細はスペシャルサイトに掲載されている。
http://www.moto.co.jp/ZOOEY/deluxe.html
・次回放送
来週も引き続いてアルバム『ZOOEY』の特集。