三宅島、御蔵島への早朝寄航はおぼろげに記憶にありますが、ほぼぐっすり眠ったまま、橘丸での朝を迎えました。
昨夜は東京のネオンの中にいたのに、今は太平洋の青い海と空のど真ん中。眠ったまま遠くに運ばれた感覚は、夜行船の旅の醍醐味です。
目的地・八丈島が見えてきました。2つの山がそびえる様は「ひょっこりひょうたん島」のモデルにもなったそうですが、残念ながら山頂付近は雲の中。
はじめて訪れた時の薩摩硫黄島と同様、簡単には全容を見せてくれませんでした。
八丈島到着。野ざらしの岸壁に横付けされ、船のクレーンを使って直接荷卸しが行われていました。南西諸島のあちこちで見てきた、「島」の営みの一端です。
気温の高さはさほどでもないけれど、肌にまとわりつくような空気に、南の島へ来たことを実感しました。
送迎ありのレンタカーを予約していましたが、送迎できるのは代表の1人のみということで、「同行者」の僕らは待合室でしばし待機。わずかな時間の中で雨が降ったり、晴れが見えたりと、さっそく亜熱帯の季候が迎えてくれました。
待合所の建物はコンクリート打ち放しに、ガラスと木材を使った開放的で立派な建物。この点だけ、今までの島旅とは違いました。
街路には、ハイビスカスがアクセントを添えていました。曇り空の街中でも、「南国」を感じられます。
2泊3日、48時間で6,000円という格安のレンタカー(ワゴンR)に乗り、さっそく黄八丈の手織り教室へ。
「黄八丈」とは八丈島の特産の織物で、島に自生する草木で染められた絹糸を織り上げていきます。こちらでは送料込み2,500円で、コースターサイズの織物作りを体験できます。
「黄」というより、「黄金」と言いたいような輝きを放つ生糸。
おばさんの優しくも厳しい手ほどきを受けつつ、慣れてきたなと思う頃に1枚完成。「耳」の部分を作るのがちょっと難しかったですが、とりあえずは満足な出来栄えでした。
織っている間は「無心」と言っていいもので、時々はこんな時間もいいなと思います。
お昼ごはんには、島寿司を。水着のままでの入店をお断りする看板から、夏の島の様子がうかがい知れます。
島寿司は、ヅケにしたメダイやキンメなど、辛子を薬味にして握った郷土料理。ワサビの代用として辛子を使っていた名残とのことですが、これはこれでいけます。
大将のすし談義を聞きつつの、贅沢ランチでした。
ビジターセンターで明日の山登りの下調べをした後は、千畳岩へ。溶岩流の痕跡が生々しく残る、海岸の岩場です。数万年前の噴火の痕跡とのことですが、数十年前と言われても分からないかも。
海には、八丈小島がぽっかりと浮かんでいました。
海岸からダートを入って100mの原っぱにある、カフェ「空閑舎」。ランチ明けの13時からが営業時間です。
溶岩プレートに乗ってコーヒーやケーキが出てくるのが、なんともユニーク。チーズケーキもアシタバ仕込みで、島らしさが感じられました。
スーパーでごっそり買出しをして、コテージに戻りました。コテージの真下に温泉「見晴らしの湯」があるのは便利で、荷物を解いてさっそく晩の風呂へ。
すっかり暗くなり自慢の見晴らしは楽しめませんでしたが、塩辛くもありつつえぐみもある、火山島らしい泉質の温泉でくつろぎました。
飲み屋までは遠い場所にあるコテージなので、買出してきた島の名物&お酒でカンパイ!八丈産のお刺身は新鮮で、「島だれ」との相性もぴったりです。
「くさや」は人生初体験。八丈島のくさやは匂いがうすく「マイルド」と評されますが、初体験の口にはやはり独特の匂いがまず広がります。でも、酒と合わせていればクセになるのは、分かる味ではありました。