釣りはフナに始まってフナに戻る、という言葉がある。
山は白馬に始まって白馬に戻ると言っても過言ではないとぼくは思っている。
夏でも融けない雪渓がある。
春から秋の斜面を彩る様々な高山植物がある。
山頂の360度の大展望がある。
幾つかの縦走路もある。
何時間も歩かないとたどり着けない温泉もある。
何度来てもその度新鮮な魅力で迎えてくれる。
今年も登りに行った。今回は単独。
駐車場のある猿倉から一時間ほど歩くと白馬尻小屋に着く。
その途中、やはり単独で歩く人がいた。
簡単な挨拶を交わし先に行く。
山のファッションも今や街のおしゃれ感覚が席巻している中、ぼくにはこの程度が好ましい。
大雪渓もこの夏の猛暑で夏瘦せ。
何度この雪渓を登り何度ここを滑り降りたのだろう。
まだ若い頃、幾度となく友達登りに来た。
あの頃一緒に登った人たちは、今どんな暮らしをしているのだろう。
色々なことがあった。
長男と長女は高校生の時に山頂直下の白馬山荘でバイトをしていた。
一人で登りに来たことも何度もある。
朝家を出て白馬岳に登り、昼には家に帰りついていたこともある。
ここはぼくのホームグランド。
この黒づくめの二人連れはトレイルランニングスタイル。
少し話をする。
『何処から来たんですか?』
『高山村』
県外の人なら判らないだろうなと思いつつ、そっと言ってみる。
『ええっ、ぼくら須坂市です』
須坂市というのはお隣の市だ。
トレイルランニングの大会にもよく参加しているという。
長野県の市町村対抗駅伝の、須坂上高井チームのメンバーだという。
しばらく一緒に登りながら、トレイルランニングの大会に出ればいい所まで行きますよ、出てみませんかと誘う。
ぼくは山登り専門だったが、このところ少し山を走ることを最近解禁したところだと告げる。
山登りは自信があるが、平地を走るのは速くない。
トレランはトータルの競技なので、山登りで挽回出来ますよと言う。
まあ、考えておこう。
ぼくは還暦なのだ。
村営の山小屋が見えてくる。
もう草紅葉が始まっている。
山の秋は早足で通り過ぎる。
9月終わりには雪が降ることもあるのだ。
山頂直下の白馬山荘。
正面は雲上のレストラン、スカイプラザ白馬。
黒ずくめの怪しい男(失礼)は途中でぼくを抜かした無理がたたって後塵を拝したトレランランナーが到着したところ。
このレストランはかつては大勢の人で賑わっていたのだが、今は数組の客がいるだけ。
でも、この静かさはとてもいい。
山頂はのどかだった。とても穏やかで、遠く槍が見えた。剣も黒部の谷を隔ててその雄姿を見せていた。
山頂から白馬山荘に戻って、ベンチで昼寝をした。
あまりにも気持ちよくて、気が付いたら1時間以上が過ぎていた。
ゆっくりと下る。
大雪渓の上部は、登山路がかなり荒れていて、ガレ場があり、浮石があり、とても走れるような状況ではない。
ところどころに花が咲いていた。
この時期、花の種類は少ない。
替わりに山ボーイ、山ガールのファッションの花が咲いていた。
なんだかなあ、という気もしないでもないが、まあいいか。
山を下りて、車でしばらく走ったところにおびなたの湯はある。
ここでゆっくりと汗を流して、家に帰った。
良い山行だった。
「雲ひとつない青空」 っていう表現がありますが ・・
この程度の雲があるのが、最高にきれいだと思います。
山頂からの写真は、見るとその時の気持ちがよみがえるんでしょうか。
想像してみようとしても、わからないです。
よみがえるのか、その思いは、そこに立った時だけなのか 。。。
どういう気持ちがするんでしょう。
雲の合間に見える山々 ・・
愛しいでしょうね、たとえようも無く ・・
何でしょう、かわいいという想いでしょうか。
山は登頂だけが全てではない、でしょうが。
でも、こういう写真は見てるだけで、胸に迫るものがありますね。
頂上の広さはどれぐらいですか。
案外広そうに見えますが。
白馬岳は頂上が広いんです。
信州側は切り立った崖ですが富山県側はなだらかです。
こういう山にいると、別天地という言葉がぴったりです。降りて行くのが嫌になります。