今年の6月にヨーロッパアルプスに出かけた際のこと。
フランス シャモニにある標高3700mに建つエギューデュ・ミディ駅で、一人コスミックリッジでのトレーニングを終えて大混雑の駅で下りのロープウェイを待っていると年配の日本人男性登山者が声をかけてこられました。どうやら下りロープウェイの整理券を貰うシステムが分からないらしく僕に尋ねてこられたのです。
その後無事に整理券を手に入れられて、暫し立ち話となり色々話をしている内にその方曰く「肺癌のステージⅣで脳に転移もしている。一昨年既に余命1年の宣告を受けた」とのこと。更に「幸い余命期間を越えて未だ生きれているのでせめて若い頃からの憧れだったグランキャピサンのクライミングをしたいということで現地のガイドに依頼して訪れている」とのことでした。
グランキャピサンといえばこのシャモニを代表する大岩壁、大岩峰のロッククライミングルートです。いくらガイドと一緒とは言っても並大抵のことではありません。なのでその話を聞いて「大病を抱えてそんな所に登ろうと思うなんて、世の中なんとスゴイ人がいるものだなぁ~」と驚愕の思いで聞き入っていました。結局、ロープウェイの順番が回ってきたので名前を伺うこともなく「天気に恵まれると良いですね! 頑張って登ってくださいね!」とだけ言って別れましたが、先日たまたま雑誌の「山と渓谷 12月号」を立ち読みしていると、その中の「読者紀行」というページに「グランキャピサンの340分」という文を寄稿されていました。
結果的には途中で撤退となったようですが、それでもそのような大病を抱えながらもこの地を訪れ、そんな大きなチャレンジをされたということに改めて感動の思いでいっぱいになりました。きっと憧れだったことを成し遂げたいという思いがこの方の生きる力となって支えているんだと思えてなりません。常に夢や希望を持ち続けることって本当に素晴らしいなぁ~と教えてもらった出来事でした。
宜しければ是非「山と渓谷 12月号」を読んでいただければと思います。
グランキャピサン(赤丸で囲った岩峰。これで上部が見えているだけです)
熱く、楽しくいこう!