大河ドラマ「平清盛」もいよいよ終幕に近づいてきた。
安徳帝を即位させ、福原遷都を成し遂げて権力の頂点に立った清盛が目にしたものは、果てしない暗闇だった。
追いかけても追いかけても、果てしがないのが権力欲。
あらゆる権力を掌握して自身が権力の頂点に立った時、見えるのは誰一人いない果てしない暗闇。
いつ誰に権力を奪い取られるか知れない、いいようのない恐怖。
独裁権力者が見る最終の風景といえる。
権力、金、権威、地位・・・あらゆる欲望の頂点に立った者が見るのは果てしない暗闇。底知れない暗闇だ。
なぜなら、欲望には限りがないから、欲望の果ての暗闇もその深淵に果てがない。
これは人間の欲望の性(サガ)ともいえる。
芸術においても学術分野においても、求めるものが権威・地位などの欲望であった場合、その頂点には果てしない暗闇が待ち受けている。
芸術の頂点を極めて早逝する天才は多い。
ノーベル賞的天才的物理学者が司祭となり、宗教家に転向する例もある。
人間の欲望の頂点には、立った者にしか見えない暗闇があるのだろう。
こうした人間の業を抉り出すような、大河ドラマ「平清盛」の緊迫感は古今に類を見ない強烈なものと言える。
画面が汚いとか、リアルすぎて面白くないとか、視聴率が最低だとか、話題には事欠かない「平清盛」だが。
これほど心理描写に深く切り込んだ歴史ドラマは久しぶりだ。
緊迫感を盛り上げ、そこはかとない無常感を醸し出す、吉松隆の音楽も絶妙に素晴らしい。
おそらく後世に残る見事な「平家物語」であろうと思う。
まさに現代の権力闘争、欲望の氾濫の果てを見せてくれるドラマであろうと思う。
自分自身の座右の銘は、昔から「祇園精舎」なのだ。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり
娑羅双樹の花の色、 盛者必衰の理をあらはす
奢れる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし
猛き者も遂には滅びぬ、偏に風の前の塵に同じ