音の四季~風の彩

作曲家、しの笛・龍笛奏者、ジャズピアニスト、城山如水の徒然日記。
オカリナ、フルートの事も・・・・

バカモン・ゴー   < aoitoriのショート・ショート 81 >

2016年07月30日 | ショート・ショート


世界中で「ポケモンGO」というゲームが大ヒットしてからもう10年以上経っていた。

真夏の日本で、数百人から数千人の若者が集団で海に向かって歩き続け、入水自殺を遂げるという事件が起こった。

一方南半球の国では数百人から数千人の若者が集団で雪山を目指して凍死するという事件が起こった。

この集団自殺事件が日本のいたるところで起こり、同時に世界中で集団自殺が続いた。

数日も経たないうちに、世界中の事件での死者は10億人を超える勢いとなった。

彼らは一人残らずスマホを手にして歩いていったのだ。

当局が調査を始めてわかったことは全員が「バカモン・ゴー」というスマホ・ゲームに熱中しながら歩いていったということだった。

10年以上昔に世界中で「ポケモンGO」という、GPS機能を使った、当時としては画期的なゲームに若者達が熱狂した。

1年もたたない短い期間でこのブームは終わった。

しかしこのゲームは、ある組織には絶妙のヒントを与えた。

それはスマホ・ゲームという媒体を使って、人間の行動を誘導的に管理できるということだった。

このゲームにサブリミナルを仕込むと、催眠状態で行動を誘導管理するのも容易だった。

一昔前に流行ったゲームが一段と進化したこの「バカモン・ゴー」に、若者達はもちろん「ポケモンGO」に熱中した世代も飛びついた。

世界中にスマホが普及した時代にあっては、ほぼ全人類が「バカモン・ゴー」に接した。

その結果、若者から始まった集団自殺は大人から高齢者にまで広がった。

結果的に全人類の99%が死滅した。

生き残ったのは地球上の全人類の1%に過ぎなかった。

人類の99%を誘導的行動管理で消滅させたのは、この1%の人類からなる組織だった。

「バカモン・ゴー」をどこからともなくインストールし、世界に広めたのもこの組織だった。

では、この組織は何者なのか。どこの国のどこの民族なのか。

それは、どこの国でも、どの特定の民族でもなかった。

多国籍からなる、多種多様な民族の集まりだったが、ただ、地球上の最高の知性の人類グループだった。

このグループの背景は判然としない。

はっきりしているのは有史以来、人類が築き上げてきた国家、政治、経済、イデオロギー、宗教、民族、体制・・・などと呼ばれるものを総て刷新したということだった。

つまり有史以来の人類の文明をそっくり消滅させて、全く新しいシステムの文明を始動させたということだった。

これは陰謀なのか、犯罪なのか、それとも文明の進化なのか・・・だれにも分からなかった。

ただ、この時点で人工知能はシンギュラリティを超えていた。



   < aoitoriのショート・ショート 81 >


       作 aoitori


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