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ブログ版 シュプリッターエコー

新しい民族移動の予感―マートン旋風

2010-07-25 21:29:00 | 阪神タイガース
 能見と岩田という二人の中心投手を欠きながら、とにかくタイガースが1位ジャイアンツを0.5ゲーム差で追っているのは、やはり今年からタイガースに加わったマートン外野手の活躍が大きいですよね。
 セントラル・リーグの打撃王(リーディングヒッター)を争うほどの打棒を発揮しているんですから。

 カブスがこういう優秀な選手をよく日本へ出したものだと思いますね。
 中日ドラゴンズで主軸を打っていた福留選手がカブスへ行って、それでマートン選手がカブスからはみ出した形になって、そうして日本のタイガースへ移ってきたのですから、まあ、双方にとってよかったということにはなるのですが。

 でもマートン選手はもとはボストンの名門チームのレッドソックスがドラフト1位で指名したほどの選手ですから、潜在能力はなかなかのものなんですよね、きっと。
 それが、大リーグではもうひとつ力を発揮できなかったのは、あるいは精神的なところに理由があったかもしれません。

 マートン選手って、なんていうか、ほんとうに生(き)真面目な性格なんでしょう?
 打席に立つたびに、ベンチでノートをとっている姿はもうおなじみですものね。
 相手投手がどんな球を投げるか、それを自分の体感を通して記録している。
 それを次の打席に生かすんです。
 コーチのアドバイスもとても誠実に受けとめる。
 ちょっとアメリカ人バナレしている。
 むしろ、日本人以上に日本人的なんですね。

 つまり、彼にとっては、アメリカよりも日本のほうが実力を発揮しやすい精神風土だということなんじゃないでしょうか。
 彼の生真面目さや誠実さは、アメリカ人より日本人のほうが高く評価し、温かく迎え、敬意も表し、だから彼がいっそうのびのびと実力を出せる、そういう土壌が彼の周囲に生まれているように見えるんです。

 これからは、いろんな部門でそういう「移動」が起こるんじゃないでしょうか。
 同じ国に生まれても、その国に合う人と、ほかの国のほうがぴったりという人とが出てくる。
 個人の多様化がますます深くなりますから当然のことなんです。
 民族がひとつの強いかたまりになっているというのは、そのうち幻想でしかなくなってしまうでしょう。
 まだそこまでは進んではいませんが、そのうち自分に適した国あるいは都市・地域を求めて人々が移動し合う時代が来るのではないでしょうか。

 マートン選手の活躍を見ていますと、そんなことを考えます。

 やがて新しい民族移動が今度は個人のレベルで、しかも地球の全体で始まるのではないでしょうか。