先々週の水曜日の昼過ぎのことですから、もう10日ほどになるんです。
JR三ノ宮駅の南側の混んだ通路を歩いていたときのことなんです。
前の方からキャリーバッグを引いた中年の婦人が近づいてきましてね。
後ろの方から同じように中年の婦人がこれは急ぎ足で近づいてきましてね。
ちょうどぼくの横で行き違うことになりましてね。
行き違いしなに後ろから来た婦人が、前から来た婦人のキャリーバッグにつまづくことになりましてね。
つまづいてバタッと倒れるそのときに、体のどこかをぼくの脚の、弁慶の泣きどころのその近くに思い切りぶつけることになりましてね。
アタタタタ。
たまらずぼくはそばのベンチに屈みこんでしまうことになりましてね。
バタッと通路に倒れた婦人はどうやらケガはなかったようで、すぐに立ちあがることができましてね。
キャリーバッグの婦人は起きてきた婦人に盛んに「スミマセン、スミマセン、おケガはなかったですか」と高い声で謝りましてね。
倒れた婦人も「いえ、ダイジョウブです、ダイジョウブです」とこれも盛んに高い声で答えてましてね。
まだまだ声を高めながら何回も何回も同じ問答を繰り返していましてね。
その間、ぼくは動くに動けず、ウーンとうなって、ベンチにしゃがみこんでいましてね。
けど二人の婦人はぼくなんかにはまったく無関心のまま、依然ゴメンナサイとダイジョウブを繰り返していましてね。
キャリーバッグの婦人がベンチのぼくを一度だけながめることはながめましたが、
あんた、そこで何してんのん、
という顔で。
なんか邪魔者を見るような目でしてね。
で、ふたりはたぶんもう言い交わすことがなくなって、ちょっと頭を下げ合って、それから右と左へトコトコ別れていきまして。
ぼくは残って、痛みを懸命にこらえ続けていましてね。
するとヘビがカエルを呑んだみたいに、そこのところが膨らんできましてね。
内出血の兆候がどんどん現われてきましてね。
こいつは困ったことになったなあ、と思いながら、こんなことを考えていましてね。
もしあの婦人がぼくにぶつかっていなければ、婦人はそのまま前のめりにベンチに向かって突進して、ベンチの足のあたりに頭から突っ込んでいたろうな。
そしたら大変なケガになっていたかもしれないな。
はからずもぼくはクッションの役割をして、婦人を助けていたんだな。
…と。
でも、そのぼくはけっきょく電信バシラ並みの扱いで。
まあ、世の中とはおおむねそうしたものでありまして。
傷つけられたことは、十が十ともわかるけど、助けられたことは、たぶん二つもわかればいいほうで(まあ、それはぼくもそうですが)。
で、その足、まだ腫れてましてねえ。
まだ痛みが続いてましてねえ。
二か月ほど前に足首の骨にヒビが入ったその同じ左足でしてねえ。
ひとつが治ったらまたひとつ。
みなさん気をつけてくださいよ。
人ごみのキャリーバッグは凶器です。
JR三ノ宮駅の南側の混んだ通路を歩いていたときのことなんです。
前の方からキャリーバッグを引いた中年の婦人が近づいてきましてね。
後ろの方から同じように中年の婦人がこれは急ぎ足で近づいてきましてね。
ちょうどぼくの横で行き違うことになりましてね。
行き違いしなに後ろから来た婦人が、前から来た婦人のキャリーバッグにつまづくことになりましてね。
つまづいてバタッと倒れるそのときに、体のどこかをぼくの脚の、弁慶の泣きどころのその近くに思い切りぶつけることになりましてね。
アタタタタ。
たまらずぼくはそばのベンチに屈みこんでしまうことになりましてね。
バタッと通路に倒れた婦人はどうやらケガはなかったようで、すぐに立ちあがることができましてね。
キャリーバッグの婦人は起きてきた婦人に盛んに「スミマセン、スミマセン、おケガはなかったですか」と高い声で謝りましてね。
倒れた婦人も「いえ、ダイジョウブです、ダイジョウブです」とこれも盛んに高い声で答えてましてね。
まだまだ声を高めながら何回も何回も同じ問答を繰り返していましてね。
その間、ぼくは動くに動けず、ウーンとうなって、ベンチにしゃがみこんでいましてね。
けど二人の婦人はぼくなんかにはまったく無関心のまま、依然ゴメンナサイとダイジョウブを繰り返していましてね。
キャリーバッグの婦人がベンチのぼくを一度だけながめることはながめましたが、
あんた、そこで何してんのん、
という顔で。
なんか邪魔者を見るような目でしてね。
で、ふたりはたぶんもう言い交わすことがなくなって、ちょっと頭を下げ合って、それから右と左へトコトコ別れていきまして。
ぼくは残って、痛みを懸命にこらえ続けていましてね。
するとヘビがカエルを呑んだみたいに、そこのところが膨らんできましてね。
内出血の兆候がどんどん現われてきましてね。
こいつは困ったことになったなあ、と思いながら、こんなことを考えていましてね。
もしあの婦人がぼくにぶつかっていなければ、婦人はそのまま前のめりにベンチに向かって突進して、ベンチの足のあたりに頭から突っ込んでいたろうな。
そしたら大変なケガになっていたかもしれないな。
はからずもぼくはクッションの役割をして、婦人を助けていたんだな。
…と。
でも、そのぼくはけっきょく電信バシラ並みの扱いで。
まあ、世の中とはおおむねそうしたものでありまして。
傷つけられたことは、十が十ともわかるけど、助けられたことは、たぶん二つもわかればいいほうで(まあ、それはぼくもそうですが)。
で、その足、まだ腫れてましてねえ。
まだ痛みが続いてましてねえ。
二か月ほど前に足首の骨にヒビが入ったその同じ左足でしてねえ。
ひとつが治ったらまたひとつ。
みなさん気をつけてくださいよ。
人ごみのキャリーバッグは凶器です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます