2018年11月10日(土)苫小牧市民会館にて、「平30年度 東胆振精神保健大会」が開催されました。
心のアート展の受賞者表彰式の他、
芸人「松本ハウス」の講演会が催されました。
「松本ハウス」といえば…
昔、テレビ番組「タモリのボキャブラ天国」に出演していたなあ…。
もうかれこれ20数年テレビの無い生活を送っている私でさえ知っている「ボキャ天」。
「懐かしいなあ」「変わっていないなあ」と思いながら講演者「松本ハウス」のポスターを見ていました。
松本ハウスのハウス加賀谷さんは、統合失調症を患っているとのこと。
世間では有名だったのかもしれませんが、私は今回初めて知りました。
講演の中でも、自分の思いを言葉にし、私たち会場の皆に対して丁寧に伝えようとしてくれているのがひしひしと伝わってきました。
病気のことをカミングアウトした当時のこと。
自分で決めたきっかけでカミングアウトしたのではなく、偶然鞄の中のお薬を見られたことで周囲に伝えることになったのだそうです。
…という話を聞きながら、私が思っていたのはこのようなことでした。
◇皆に伝えた時、不安だったんだろうな。
◇「不安」なんていうひとことでは表せないくらい、本当に不安だったんだろうな…。
◇自分で自分のことを伝える、今まで言っていなかったことを伝える、言いにくい事を伝えるって、本当に本当に…。
でも同時に、どうしてももっと詳しく気持ちを聞いてみたい事柄でもありました。
講演が終わり、フロアから質問や感想を言う時間が設けられました。
「本当に何でも聞いて下さい」
「どんなことでもいいですよ」
松本ハウスさんからもフロア全体に声をかけてくださったので…
遠慮なく聞いてみました。
「カミングアウトした時のお気持ちを、もう少し教えて頂けますか?」
ハウス加賀谷さんは…
「もうこれで、仕事は終わりだと思いました」
そうおっしゃいました。
本当に大好きでなったお笑い芸人の仕事。
でも、病気のことを伝える事は、「仕事は終わりになること」だと思ったそうです。
ただ、実際は終わりにはなりませんでした。
その後、病気の悪化にて活動できない期間が10年あったそうですが、その後また活動を再開していらっしゃいます。
偏見や差別がないとは言いませんし、お話の中でも、偏見や差別の目を向けられた言動も触れられていました。
…がしかし、ハウス加賀谷さんのまわりには、理解してくれる人、理解しようとしてくれる人がいた。その人たちがいてくれたおかげで、今の自分がいる、と。
「自分の病気のこと、症状のつらさをわかってほしいけれど、でも知られるのは怖い」
「自分も苦しさ、つらさがあるから、他の同じ病気を抱えた人たちの話を聞いてみたい。でも、聞くのも怖い」
これまでに聞いたことのあるフレーズです。
このような思いをもった人たちへ、何かメッセージをいただけませんか?と聞いてみたところ…
「自分が一番楽にいられるポジションを探すことが大切だと思います。」
「無理して言う必要もありません。自分にとって、負担のかからない方法を探すのが良いと思います。」
と。
また、「仕事を復活した当初は『元に戻ろう』としていた」と言います。
でも途中で気づいたことは、「元に戻るのではなく、新しい自分を受けとめていくことなんだ」と考えるようになったそうです。
ハウス加賀谷さんの言葉です。
「たくさん失敗していい。
失敗して、相談して、またチャレンジして…
すると成功したり、でもまた失敗したりする。
失敗から発見することがある。」
私の中で、「ボキャ天 爆発2秒前の松本ハウス」のイメージが大きく変わりました。
それは、人としての深みを知ったということかもしれません。(病気のことに限らずですよ。)
同時に、私の尊敬する医師から聞いた言葉を思い出しました。
「怒り、悲しみ、苦しみをくぐり抜けた人たちには精神的に深みがある」
そしてまた「人とのつながりの中で、人は、生きていけるんだなあ」と、あらためて痛感しました。
ブログの題名に書いた言葉は、ハウス加賀谷さんが治療や療養生活していた10年間で「2つの大切な事がわかった」と言っていた言葉です。
★焦らない
★決してあきらめない
あれ?
就労訓練でも皆とよく話している言葉です。
★焦らない
★決してあきらめない
松本ハウスさんの講演後、聞く前は買おうと思っていなかった(失礼ですみません)本、並んで2冊買っちゃいました。
とても良いお話を伺うことができました。
そして相方松本キックさんとのかけあいが、何より心地よく素晴らしい。
そう思いました。
お笑い芸人としてのライヴではなく、こういった普及啓発のための講演も全国でしているそうですよ。
もし機会があればみなさんもぜひ。
いずみまさこ