木洩れ日通信

政治・社会・文学等への自分の想いを綴る日記です。

ブラック&アメリカ型企業に決別を

2013年02月08日 | Weblog

ブラック企業はなぜ生まれるか、そして日本企業の全てがブラック企業になり得る
ブラック企業で働き、疲れきって退職に追い込まれた若者の相談に乗っている「poss」というNPOを主宰する今野晴貴の話をテレビで聞いた。
中央大法学部で学んだ実に弁の立つ迫力ある29才の青年だ。
ブラック企業とは若者の就職が困難な今の時代を悪用して、大量に採用し、長時間労働と暴言で離職に追い込み、社員を使い捨てにする企業のこと。
会社に残れた者は体力があり、どこまでも従順に会社の奴隷になれる精神力の持ち主だが、それもせいぜい30~40ぐらいまでという恐ろしい事態が今進行しているという。
中小、新興の企業ばかりとは限らない。よく知られている大手企業にも広がっている。
今野氏によれば離職に追い込むテクニックはシステム化、マニュアル化されているので個人でなかなか太刀打ちできないという。
こうして離職した若者はすっかり自信を失い次の一歩がなかなか踏み出せず、仕事の技術をみがく機会も失い、ニートや引きこもりになってしまう。
なぜこんな企業ばかりになってしまったのか。それはアメリカ型の「株主資本主義」や「役員資本主義」に毒されてしまったからである。
「会社は株主のためにある」とアメリカの経営者が言っている姿を見て「何を馬鹿なことを言っているんだ」と思ったけど、アメリカで洗脳された竹中平蔵に代表されるような「経済学者」達は「その通りだ」と考えたようだ。
企業はそこに働く社員によって成り立つし、そこで生み出される製品やサービスは社会にとって必要とされるから存在するのだと考えるのが普通だと思うけど。
七〇年代あたりまでの日本企業は年功序列・終身雇用を基本として、社員に安定・安心を与え、その代わりに企業を我が家と同様に考える忠誠心を得ていた。
しかし今この会社に従属する体質だけは残り、終身雇用は破壊されてしまった。最悪の状態だ。会社が要求するように能率よく仕事が出来ないのは自分に能力がないからだと思い込み、会社の体質に問題があるというふうに考えがいかない。
日本型企業風土とアメリカ型効率主義と規制緩和が巧みに悪用され、ここに日本企業の全てがブラック企業になり得るという構図が見えてくる。
以前このブログで富裕層を悪性ガン細胞にたとえたが、まさにブラック企業のやっていることはガン細胞の増殖に等しい。共に死滅する運命でしかない。
しかし希望の風景が全く見えないわけでもない。

年間140日休日・有休40日・70歳定年・年収平均600万から700万
という夢のような会社がこれもテレビで紹介されていた。
岐阜県にある電気設備資材メーカー「未来工業」だ。
社員780名の中企業。1965年創立以来赤字なし。スイッチを一つにまとめる設備で80パーセントのシェアを誇っているというところがこの社員優遇を可能にしているのだろうが、無駄を徹底的に省くというのはどこでもやっていることだろうが、いわゆる「ほうれんそう」という報告・相談・連絡というのはこの会社にはない。自分で考えるというところが他と違う。
放送では触れていなかったが、おそらくこの規模だと株式市場から資金を調達することはしていないと思う。つまり株主の利益を第一にする会社ではなく、経営トップの報酬も社員にくらべてべらぼうに高額というわけではないのだと思う。
NHKの「クローズアップ現代」でも社員みんなが経営者であり労働者である「協同労働」が紹介されていた。目新しいものではなく、昔からある経済活動だが、世界中でこの働き方が見直される機運にあるという。
目的は何よりも地域の雇用を守ることと、地域の必要を掘り起こすことにある。本来の意味での経済活動であり社会活動といえるのではないか。
スペイン北部の巨大協同組合モンドラゴンが紹介されていたが、新しい仕事のための再教育、労働シェア、時に賃金カットも皆で考え、議論して決めるという。
賃金の格差も5倍程度に抑え、地域の実情に合わせているという。
どんな事業にも課題は次々に出てくるが、「アメリカ型資本主義」は病んだ思想なのだという認識を共有したいものである。

コメント
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