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映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE 【監督:中澤祥次郎】

2012-04-13 01:57:21 | 映評 2011~2012
個人的評価: ■■■■■□
[6段階評価 最高:■■■■■■、最悪:■□□□□□]

テレビがデジタル時代に突入し、1TBのHDDをテレビにつないで番組録り放題見放題になったのはいいけれど、それが録画番組溜まる一方状況を生み、かえって番組を観なくなってしまった。
そんなわけでゴーカイジャーもフォーゼも録画はしているんだけど、鑑賞は遅々として進まず、ゴーカイジャーとっくに終わってゴーバスターズになってるのにそちらに移れない有様。
そんなわけでゴーカイジャーはあまりキャラとか設定とかよくわからないのだけど、ギャバンと共演となれば見ないわけには行かない・・と劇場に向かったのであった。

ここ数年の特撮はウルトラマンメビウス、仮面ライダーディケイドなどオールドファン向けサービスが流行り。歴代戦隊が入れ代わり立ち代わり登場するゴーカイジャーはそうしたオールドブームの決定版と言えるかもしれない。
オールドファンを泣かせる重要な要素は、当時と同じ俳優の登場とあのころ親しんだ音楽の再利用である。
それっぽいけど違う曲がかかった時のオールドファンの落胆は計り知れないし、同じ曲だけど変に現代的なアレンジがされていたりしてもがっかりしてしまう。
しかし本作のオールドファン泣かせは徹底している。音楽にはゴーカイジャーテレビシリーズを担当した山下康介と共に、渡辺宙明(名前はミチアキと読むのだが、ファンはむしろチュウメイと読み、彼の音楽を愛を込めてチュウメイ節などと呼ぶ)がクレジットされている。宇宙刑事三部作(ギャバン、シャリバン、シャイダー)を担当した他、ゴレンジャーからゴーグルファイブまでの初期戦隊シリーズ、数々の特撮番組を彩った作曲家である。
本作のギャバンがらみのシーンの音楽はほぼ渡辺宙明が担当している。しかも、単にギャバンの昔のサントラから人気曲を引っ張ってきただけではなく、宙明自らが再アレンジして再録しているのだ。もちろん変なアレンジではなくかつてのテレビシリーズよりも豪華な編成になったオーケストラのためのアレンジだ。
冒頭ギャバンがゴーカイジャーたちの前にそのシルバーのボディを見せて登場する時は、レーザーブレードのテーマをスローで重厚に演奏した曲が響き渡り、この時点で私らおっさんは涙があふれそうになる。

クライマックスでギャバンが蒸着する場面では「チェイス!ギャバン」のインスト版がかかる。ラテン風のトランペットのイントロが印象的な名曲だ。
電子星獣ドルのテーマも再録でさらにかっこ良くなって響く。余談だが電子星獣ドルのテーマって、人造人間キカイダーの挿入歌「ハカイダーのうた」のイントロとすごく似ているんだよね。どちらも宙明作曲。ドルのテーマを忘れていた私は一瞬「え?ハカイダー?」って思ってしまった。
そしてそして、ギャバンがクライマックスついにレーザーブレードを繰り出すと、あのころ僕たちを興奮のるつぼに叩き込んだレーザーブレードのテーマが、さらに熱くかっこよくなったアレンジで映画館に響き渡る。

こうした宙明節を映画館で堪能出来ただけでも充分に楽しめた作品だった。
ところがオールドファン泣かせはそれだけじゃない。

当然だが宇宙刑事ギャバンこと一条寺烈は、大葉健二さんが演じる。
さすがにあのころのようにスーツアクターも兼務してはいないのだろうが・・・しかし大葉健二さんの生身のアクションにおける動きのキレがすごい。あの年であれだけ動ける日本人は他には郷ひろみくらいしかいない。あれならもしかしてギャバンのスーツアクターも大葉さん自身が演じているのでは・・・との幻想を抱く・・・いや、幻想じゃない。大葉さん本人にちがいないと信じて生きていく事にする。


何よりファンを泣かせるのは三人の大葉健二の共演だ。
「バトルフィーバーJ」で大葉さんが演じたバトルケニアこと曙四郎、「電子戦隊デンジマン」で大葉さんが演じたデンジブルーこと青梅大五郎も本作でゲスト出演。ラストでは一条寺烈とともに三人の大葉健二が合成で共演を果たす。
いちおう番組放送順に先輩後輩関係がはっきりしていて、デンジブルーとギャバンはバトルケニアを「先輩」と呼び敬語で語りかけるし、バトルケニアとデンジブルーはギャバンを呼び捨てタメ口にする。わりとこういう細かい部分も観ていて嬉しくなるのだ。

ところで、この記事を呼んでいる皆さんは宇宙刑事三部作といえば「宇宙刑事ギャバン」「宇宙刑事シャリバン」「宇宙刑事シャイダー」のことを指すことは知っているね。けれどもシャイダーの最終回の翌週に宇宙刑事スペシャルみたいな特番が放送されたことは知っているかな?

この番組はギャバン、シャリバン、シャイダーの名シーンをダイジェストで紹介するような内容だったのだけど、番組の終わりにサービス映像があったんだ。
一条寺烈と伊賀電(シャリバン)と沢村大(シャイダー)の三人が平和の戻った地球で談笑していると、突然青空から声が響いたんだ「勇者たちよ。地球の子どもたちは君たち三人が揃った姿をまだ見た事がない。見せてあげてはどうかな?」(うろ覚え)。その声に促されて三人の宇宙刑事は次々と「蒸着!」「赤射!」「焼結!」を決めて三人の宇宙刑事が一つの画面に勢揃いするというものだ。

何が言いたくてこんな長い思い出話をしたのかもう分かったね。
本作のラストで、三人の大葉健二が青空から響く声「勇者たちよ。あのころの子どもたちは君たち三人が揃った姿を見た事がない。ここで見せてあげてはどうかな?」に促されて、バトルケニア、デンジブルー、ギャバンに次々と変身する場面。あの宇宙刑事スペシャルを覚えていた僕らおっさんは爆笑だったけど、同時にすごく嬉しいサービスだったんだ。

そんなこんなでギャバンとバトルケニアとデンジブルーと大葉さんと宙明さんの五人のおかげでとっても楽しい90分を過ごす事ができて、ボクは心の底から満足したよ。

シナリオとしてはよく判らないところが山のようにあったけれど、そんなのいちいち突っ込むのは大人げないよ。
ギャバンがゴーカイジャー5人相手に圧勝するオープニング
「ギャバンの蒸着はわずか0.05秒で完了する。そのプロセスをもう一度見てみよう」というあの懐かしい場面。(わずか0.05秒の間に「了解、コンバットスーツ電送シマス」とかコンピューターが答えている。どんだけ早口なんだ・・・と小学生のあのころも突っ込んでいた事を思い出す)
レーザーブレードの音楽にのってゴーカイレッドも倒せなかった敵をギャバンダイナミックで粉砕するクライマックス。
ここまでギャバンをリスペクトしまくった映画作られたら、些細なアレやこれやを貶すなんてとてもできないよ。

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ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円


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