自分はあまりドラマを観ない人で、全話完走するのは多い年で年に3つくらい、少ない年で0くらいなものだった。
大ヒットドラマもスルーしがちで、あまちゃんも半沢も逃げ恥も、去年でいうとふてほどとやらも観ていない
それでも2024年は例年になくドラマを結構観た
と言っても全話完走したのは
「さよならマエストロ」
「虎に翼」
「ベイビーわるきゅーれエブリディ」
「無能の鷹」
「下山メシ」
5つか。記事一つ書くほど、観たぞ!ってほどでもなかった。
でもこの機会に感想を
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「さよならマエストロ」
クラシック音楽系ドラマはわりとチェックするようになって、一昨年(2023)も「リバーサルオーケストラ」は全話観た。
その「リバーサルオーケストラ」と比べたら、はっきり言うとはるかに面白かった。
リバーサルのすぐキレる割に具体的なこと言わないパワハラ気質指揮者より、「さよならマエストロ」のほめて伸ばす系で音楽愛があふれまくる指揮者の方がついていきたくなるし、弱小地方オケが上手くなっていく過程も説得力ある。
指揮者志望の女子高生に、指揮をするなら何でもいいから楽器ができるようになりなさいと諭すのも、当たり前っちゃそうなのだけど素直になるほど、と思えた。その女の子が音楽に否定的な父に聞かせるバイオリンによる「きらきら星」のなんと感動的な音色だったことか。
物語の軸が、親子の和解という、ベタベタだが王道の何が悪いと突き進むのも話に入り込みやすくてよい。ただしその物語の主軸が最終回前に決着ついてしまい、最終回が何これと思うようなグダグダだったのは残念。
音楽家として一流、父親として三流な主人公を演じた西島秀俊と、その父親をどうしても許せない娘を演じた芦田愛菜、それぞれ好演。陰気キャっぽい役の多かった印象の西島秀俊の愛されキャラは良かった。
2024年に亡くなった西田敏行さんの最晩年作としても記憶に残したい
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「虎に翼」
2024年の映画アニメひっくるめた全映像作品の中でも1、2位を争う傑作。NHKの朝ドラ全話完走なんて、いつ以来だろう。「ふたりっこ」以来か?
戦前、女性が法律用語で「無能力者」とされていたことに「はて?」と疑問を抱いた寅子(トモコ)が法曹の世界を目指す。
だって世の中ってそういうものだから仕方ないじゃないというような風潮に抗って奮闘する寅子ら法学部女子たちの戦いと、友情が芽生えたりヒビが入ったりする日々は毎回面白かった。
世の中の風潮に黙って従った結果、日本は戦争で多くの大切な人々を失った。
ドラマでは日本国憲法第14条「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」が強調されていたが、寅子の姿は第12条「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」を体現していたと思う。
戦後編で、今でいうLGBTQのことに踏み込んだり、夫婦別姓のことに踏み込んだりしたことに、主に右側界隈から批判が出ていたが、戦前編からの流れを考えればそこは当然通るべき経路に思える。
現代と地続きで、かつ昔を美化しない姿勢は非常に好きだ。
本作の最大の功労者は脚本の吉田絵里香だ。
だった15分の1話の濃密さと、週単位でのまとまりの良さ、そして半年間の全体での構成のうまさ。吉田氏の脚本によるアニメ「ぼっち・ざ・ろっく」も1話ごとのまとまりとシーズン全体を通じたまとまりが見事で、構成力がずば抜けてすごい人なのだと思った。
惜しいのは、終盤、原爆裁判や尊属殺人など法律ドラマとして最大の見せ場となるべき時に、寅子は裁判官の立場であるが故に傍観者的なスタンスを余儀なくされることだ。そうなるとヨネの出番となるべきだが、ここで急にヨネが話をグイグイ引っ張る主人公になるのもおかしく、ドラマ的なもりあがりを欠いた。寅子とヨネのダブル主人公のドラマでスタートしていれば終盤もっと盛り上がったろうが、それだと前半から中盤の感動は薄れてしまっただろう。
難しいところだ。
それでも戦争を経て日本がいかにして法のもとの平等を手に入れてきたか、先人たちがどれほどの苦労をして掴み取ってきたかを教えてくれる素晴らしいドラマだった。
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「ベイビーわるきゅーれ エブリディ」
これも虎翼に匹敵するレベルの超傑作ドラマだった。何と言っても伊澤彩織のアクションが最高。テレビドラマでこれほどまでの格闘アクションを楽しめるなんて、なんと贅沢なことか。キレッキレのアクション。伊澤彩織が、殴り、蹴り、飛び、ぶん投げて、絞めて、そして撃って、その動き一つ一つにアクションスターのオーラを感じる。キアヌ・リーブスのジョン・ウィックと夢のガチバトルやってくれないかしら。ベイわるとジョン・ウィックって作品の空気感が似ているのでアリだと思う。キアヌと伊澤さんどっちが強いんだろう。
アクションだけでなく、まひろとちさとの友情物語としても、まひろの社会に馴染めない殺しのスキル除けばただのダメ人間であることの憂いとか好き。殺し屋としてしか存在価値を見出せなかったまひろが、ちさとの親友としての存在の方がより大きいことに気づくドラマは感動的だ。
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「無能の鷹」
原作コミックが好きすぎてドラマ版も全話完走。原作3エピソードくらいを無理やり1エピソードにまとめるような話が多く、無理があるようにも思えたが、総じて気楽に笑って楽しめるドラマで、全8話はあっという間。たったの8話で原作の最終回エピソードまで完走し切ったのはすごい反面、そこまで急がなくても第二期に回すことも考えて良かったのでは…と思う。(人気なくて打ち切りだったのかもしれんが)
鷹野さんを演じるには美人すぎない?と思った菜々緒さんも3話くらいになると慣れた。ありだと思った。スケッチャーズのCMが入ると本編なのかCMなのか分からなくて一瞬の戸惑いと笑い。
虎翼でブレイクしたヨネさんこと土居志央梨が、面倒くさがりのプログラマー鵙尾さんを演じる。原作でもそこまで出番の多いキャラではなかったけど、それにしてもせっかくなんだからもう少し出番増やしてほしかった。特に服のサブスクやるエピソードを拾っておきながら、サブスクにより性格豹変するくだりをオミットしたのは残念すぎる。
開発部の描き方が、陰気で、社会人的におかしい奴ばっかで、いつもエナジードリンクな描写がウケる…と思っていたら、こないだの朝、開発の人とエレベーター一緒になったらその人も朝からREDBULL飲んでて、あながちギャグでもないと思った。
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「下山メシ」
体力のなくなってきたこの頃、山には行きたいけれどもうテント背負って縦走とか無理。だから最近は低山を楽しむようになった。と、ちょうどそういう頃にピッタリのドラマ。
志田未来演じるイラストレーターのイタダキミネコが関東の低山に登り、さっさと下りて麓の飯屋に行く。
そんだけの話であるが、最近登った山が扱われていたり、今度登る山の参考になったり。
30分という長さもいい。
フォーマットの決まったワンパターンドラマだが、そういうところも頭使わなくていい。
しかし時々演出はすごい。
第一話で固定カメラワンショットでひたすら食べ続ける志田未来を映すところなど、よくカット切らずカメラ動かさず我慢できたものだ。すごい。そしてそのカットに相応しい食べる演技を続ける志田未来も素晴らしい。
この役者、とにかく食べっぷりがいい。美味しそうに食べるなぁ…と初めてナデシコに会った時のリンみたいな感想をもった(などとゆるキャン△ネタぶっこんで恐縮です)
食べる演技があまりに様になっているから、大盛りナポリタン食べた後でピザ頼んだりするのも有りかと思える。
惜しいのはこれもたった8回で終わったことか。もしかして燕岳の燕山荘に行くのかと期待したが…
しかしおかげさまで冬の登山が盛り上がった。「よし下山しよ」はよく使う言葉になった。ぜひ第二期もお願いします。
下山メシで登った山(☆は私も登った山)
御岳山☆
高尾山☆
大野山
陣馬山
高水三山
愛宕山
弘法山☆
関東の低山というとほぼ丹沢、奥多摩、秩父、筑波に限定され、どこも、アプローチにそこそこかかり、低山と言えど日帰りはなかなか疲れる。一方で冬でも登れるところが長野県暮らしの頃より嬉しい。
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などと2024テレビドラマふりかえりでした。
虎に翼がとにかく最高で、ベイビーわるきゅーれもまた最高すぎて、下山メシが最高というほど大げさは似合わない日々の楽しみでした。
2025もよいドラマにめぐり会えますように