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映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

映像作品とクラシック音楽 第41回 エンニオ・モリコーネ(私的)アルバムベストテン 第10位〜第4位

2021-11-05 00:13:00 | 映像作品とクラシック音楽
クラシック音楽が印象的な映像作品について語るシリーズ…と銘打ってやってきましたが、今回は趣向を変えて、クラシック音楽ではなく、映画音楽の話。映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネのCDの私的ベストテンを紹介しよう思います。
モリコーネの音楽は、クラシック音楽的と言えなくもないし、全然違うとも言えるしで、そもそもがジャンルにとらわれない、モリコーネという一つのジャンルを作っているように思います。モリコーネ節としか言いようのない世界。
日本だと伊福部昭さんがスタンス的に近い気もしますが、モリコーネはジャズにもポップスにもロックにも影響を与えていったところが特殊にして偉大だと思います。
そんなモリコーネ節を堪能できるCDを10枚勝手にセレクトしてみました!

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第10位 CINEMA CONCERTO - ENNIO MORRICONE AT SANTA CECILIA(日本版タイトル「モリコーネ・プレイズ・モリコーネ」)

もうだいぶ前、2004年6月のことですが、エンニオ・モリコーネの来日コンサートを鑑賞しました。会場は国際フォーラムでした。
ど定番のモリコーネの名曲の数々と、あと大河ドラマ「武蔵」が終わった直後だったので、「武蔵」の楽曲から数曲が演奏されました。
とにかく圧感で、やばいくらい感動しました。
アルバム「CINEMA CONCERTO - ENNIO MORRICONE AT SANTA CECILIA」は、そのコンサートのライブ録音ではありませんが、収録内容は来日コンサートの内容にだいぶ近いです。「武蔵」はありませんが。
続夕日のガンマンやニューシネマパラダイスなどのオーケストラコンサート用編曲版の定番曲を楽しめるお得な一枚です。続夕日のガンマンはどんなアレンジにしてもカッコいい曲だと言うのがよくわかります。



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第9位 1900年(O.S.T)

ベルトルッチとのコラボも印象深いモリコーネですが、中でも最高なのが「1900年」です。5時間ある長尺の映画ながら濃密な物語と映像で飽きずに観ることができましたが、音楽が果たした役割も大きかったと思います。メインテーマの美しさはいつ聴いてもうっとりします。欠点は録音が非常に悪く高音部が割れてます。コンサートで取り上げられることも少ない曲なので、仕方なくこれで1900年のテーマを聴いている感じです。モリコーネ存命のうちに再録音してほしかったです

https://youtu.be/hsBo3rN6Z1M



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第8位 バグジー(O.S.T.)

マフィア映画のよく似合うモリコーネ。暗黒街の内側での悲喜こもごもがこんなに似合う作曲家が他にいるでしょうか…って、ニーノ・ロータがいますけど、イタリア人の資質なんでしょうかね。
フリューゲルホルンのもの悲しいソロが印象的な「Act of Faith」、浮遊感というか夢遊感な愛のテーマ「Fly Away」など聴いてるだけで泣けてきます。

https://youtu.be/zAXKZDxcVts



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第7位 海の上のピアニスト(O.S.T.)

原題が「Legend of 1900」で、「1900年」と混同しやすくて要注意です。モリコーネの第2のパートナーのジュゼッペ・トルナトーレ監督とのコラボ。映画オープニングの自由の女神が見えるシーンの音楽は最高に素晴らしいです。何度聞いても心が震えてきます。

https://youtu.be/mcofLYYH1yY



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第6位 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ(O.S.T.)

これがモリコーネサウンドのいったんの完成形じゃないでしょうか。生涯の戦友とも言えるセルジオ・レオーネ監督とともに築きあげたモリコーネの音楽世界。レオーネにとっても一世一代の勝負作で彼のキャリアの最高峰の映画になりましたし、お互いに高め合う関係だったと思います。
パンフルートの音色が染み渡る「Cocky's song」はじめ、全曲名曲。コンサート定番曲も多いですね。

https://youtu.be/xFllzsmPzsE




愛のテーマが後の『マレーナ』のテーマ曲とそっくりなんですが、前述の来日コンサートではワンアメの愛のテーマとマレーナのテーマ両方演奏してくれまして、似てるとか流用とかそんな意見気にしない感じが素敵です。
「アマポーラ」のアレンジも素晴らしいです。

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第5位 天国の日々(O.S.T.)

テレンス・マリックを伝説の監督にした1978年作品です。
ほとんどのシーンをマジックアワーと言われる、日の出前の20分と日没後の20分という1日40分しかない時間帯で撮影した作品で、なんでそんなことするのかと言うと、その時間帯の映像が魔法でもかけたみたいにめちゃめちゃ美しくなるからです。
若い頃のリチャード・ギアが主演で、大農園にやってきた出稼ぎカップルが、兄妹と偽って女が農園主を誘惑して財産を騙しとろうとするが、農園主を殺してしまい逃亡する。
アメリカンニューシネマが芸術映画に昇華したような作品です。
マリックはこの作品で燃え尽きたのか、それから20年映画を撮りませんでした。1998年になってようやく『シン・レッド・ライン』を発表し、以降はコンスタントに新作を発表するようになりました。(シンレッドラインは好きな映画ですが、それ以降はあんまり…)
それはともかくマリックは人生の勝負作とも言えた『天国の日々』の音楽をモリコーネに依頼しました。78年だからハリウッドでもモリコーネは、「マカロニウェスタンの作曲家」という印象だった頃でしょう(アメリカ人はスパゲッティウェスタンと呼んでいたそうですが)
しかしモリコーネはケレン味あふれるウェスタン調の音楽ではなく、クラシカルな響きでありながら、どこかポップな感じも絶妙にブレンドされ、あわせて「泣かせのモリコーネ」も十分堪能できます。
メインテーマ「Harvest」こそ、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」の「水族館」に似ていますが(しかもサントラにはわざわざインスパイア元の「水族館」も収録されています)、他の曲はこれでもかとモリコーネの世界が展開されます。
特に恋人たちのテーマ「The Farmer and the Girl」が切なさと優しさと、どこかノスタルジックにもつつまれて、大好きな曲です。

https://youtu.be/OxuvJU0MVaU




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第4位 フランティック(O.S.T.)

ロマン・ポランスキーが手がけたヒッチコック風サスペンス映画。たぶんタイトルからしてヒッチコックの「フレンジー」を意識してるのかもしれません。ストーリーは全然違いますが、巻き込まれサスペンスという点では同じです。
パリを訪れたアメリカ人夫婦(旦那はハリソン・フォード)が旅行鞄の取り違えから、麻薬密輸組織に狙われ妻が誘拐され、言葉の通じない異国で妻を取り戻すためにハリソンが右往左往する映画です。
ポランスキーとモリコーネという組み合わせも考えてみれば珍しいですが、モリコーネは極上のサウンドでサスペンス映画も盛り上げます。
かつてLPで発売されたサントラではアルバムの2曲目と最後の曲の10曲目が同じタイトルで、その名も「Frantic」
2曲目の方は映画のオープニングメインタイトルに使われた、ドラムスが力強くリズムを刻むけれどもどこか哀愁も漂うあたりがモリコーネ的ですが、まあわかりやすいメインテーマ曲って感じです。
対して10曲目の「Frantic」は、そのメインテーマのメロディをフルートでゆったりと奏でた部分はあるにしても、全く別の曲で、全体的に重々しくより悲しげな曲で、特にエレクトリックベースの音がめちゃめちゃかっこよく、何度聞いても身震いします。

https://youtu.be/4T7BPE81ZKs




それ以外のスコアもまた、フリューゲルホルンのもの悲しい音がパリの裏町の危険さ怖さをかもし、かと思えばパリらしく陽気なアコーディオンの音がどっか遠くの方から響いてくることで、かえって物悲しさや不気味さを強調したりと、モリコーネの音楽職人ぶりを堪能できます。
クラシカルなスコアとは言い難く、ノリノリな曲があるわけでもないのですが、アルバム全曲通じて構築されたのは、危険を感じるすえた匂いで、涙よりも血の香りが強いモリコーネの暗黒スコアの傑作だと思いますので、ぜひとも御一聴頂きたいです!

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そんなところで、ベスト3の発表は次回ということにさせていただき、今回はこの辺で筆を置きます
それではまた、素晴らしい映画と音楽でお会いしましょう!

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1 コメント

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映画 モリコーネ (もののはじめのiina)
2023-01-28 08:20:20
モリコーネ映画化される前に、ブログに特集を組んだのですね。
巧い感をしています。

当方は、そもそも映画音楽の巨匠モリコーネの名は知っていても、具体的にはよく知らない。
あの映画もあの曲もモリコーネだったんだという風に映画は進んでいきました。

モリコーネを凝縮していて見ごたえがありました
音楽を志す方には好い刺激になるのと同時に、一般にも人間万事塞翁が馬の教訓を与えます。^^
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