個人的評価: ■■■■■□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
【愛のローリング・キャッチ!!】
写真・・・ジョン・ウー先生の理想の愛の形を奇跡のダイビング・ローリングキャッチで体現した周瑜閣下と小喬さま
いきなりクライマックスのことから書き始めますが、壮絶としかいいようのないジョン・ウー印全開のシーンとなっていました。
前作には無かったジョン・ウーお決まりの超至近距離拳銃突きつけ合いが、本作では銃から剣に代わって再現。しかも周瑜と曹操でやり合うとは・・・
勢揃いした孫権・劉備連合軍の主要人物に囲まれ、燃える城と死屍累々を背景にそれでも王者の威厳を保ちながら勝ち誇った発言をする曹操。ジョン・ウー映画における悪党の死亡フラグが立ちまくるシーンがむちゃくちゃ思い出されてきます。
「弟は哀れだな。お前のせいで刑事から犯罪者に落ちるんだ。俺は金の力で三日後には釈放さ」と言ってホーさんに撃ち殺されるシン (From 挽歌)
「最後に勝つのは善人だと信じていたのか」と勝ち誇りながらルンさんに銃を向けるが、ホーさんとケンの銃撃を食らって倒れたところにルンさんにとどめの一撃を撃ち込まれそのルンさんから「最後に勝つのは悪人だと信じていたのか」と決め台詞を吐かれるコウ (From 挽歌2)
「狼」でも「ワイルドブリット」でも「ハードボイルド」でも悪党が正義の銃弾を喰らう前のお決まり展開だったではありませんか。
だからいかに史実を変えないためとは言え、「去れ!」と言って殺さずに引き上げる孫権・劉備一派にガクッとずっこけそうになってしまったのでした。
しかしなんといってもクライマックスにジョン・ウー的愛の結晶名シーンが炸裂しまくり胸がすく想いでした。
うん10億とか100億とかそれくらいの予算規模の映画の一番のクライマックスシーンであんな大技を本気で炸裂させてくれるのは香港映画人だけではないでしょうか。ジョン・ウー先生・・・あなたはやはりハリウッドに魂を売り渡してはいなかったのですね・・・と熱い感動がわき上がってきました。
あれほど「小喬、小喬」とメロメロだった曹操が、クライマックスで小喬を人質にして残忍に落とせぇぇっと命ずる豹変ぶりも凄いのですが、小喬さまをドタバタのすえ櫓の上からビョーンと落として、ジャッキーのプロジェクトAばりに天幕破って落ちたところを最愛の夫、周瑜さまがダイビングしてしかもローリングしながらキャッチして、もちろんその辺の件はスローモーで・・・愛の高潔さをこれでもかと見せまくる場面。ウー先生のロマンチストぶりを説明する上で決して外せない伝説的名シーンとして未来へ語り継がれていくことでしょう。
そういえば「ミッション・インポッシブル2」の時にウー先生は「今回、初めてラブロマンス映画を撮ったんだ」みたいな趣旨の発言をしておられました。その発言から10年近く経っても私はその発言の意味がよくわかりませんでした。しかし「レッド・クリフPart2」を観て、ようやく少しだけその真意が見えてきた気がします。
三国志で観たかったあのシーンがないとか、なんで苦肉の策を描かないんだとか、孔明と周瑜の出し抜き合いはないの?とか、ユンファが出なくて寂しいとか、そうしたあれやこれやの不満もあのD.R.C.(ダイビング・ローリング・キャッチ)で全て吹き飛びました。
ああウー先生。あなたは三国志が撮りたかったのでも、中国で映画を撮りたかったのでもない、貴方の理想の愛を描きたかったのですね。
トニーの腕を通して貴方がキャッチした愛を、私もがっちりと受け取りました!!!
【孔明!!戦わんかい!!】
写真・・・決戦が近づいたが特にやることがなくひまを持て余している諸葛亮
大都督周瑜閣下はもちろんのこと、孫権公や、孔明の君主たる劉備公までが自ら最前線で剣を振るい矢を放っておられるというのに、孔明は何しとんじゃい!!平原で偉そうに立ってるだけって、どういうこと!!? 戦え!!クライマックスは挽歌のユンファみたいに周瑜のピンチにかけつけてニヤッと笑いかけろ!!
まあ金城孔明が戦場をウロウロしていたら、関羽や周瑜の足手まといになるのはもちろん、尚香にも「邪魔だ」と言われそうだが。
この二部作での孔明の働きをふりかえってみよう
(1)長坂の撤退戦で、無策でオロオロする
(2)単身呉に渡り馬のお産を手伝って周瑜に恩を売り、同盟締結に成功
(3)亀の甲羅をモチーフにした陣で曹操の陸上部隊を撃破。(ただし関張趙+周瑜の超人的戦いによるところも大)
(4)矢を10万本手に入れる
(5)激戦の間は何もせず、戦いが終わってから偉そうに現れて周瑜から馬をもらう
軍師としての功績らしい功績は(3)と(4)くらい。
トニー・レオンの周瑜は死に際に「天はこの世に周瑜を生みながら、なぜ諸葛亮をも生んだのだ!」とは絶対に言わないだろう。
うーむ、いくらなんでももう少し孔明に見せ場を用意してもよかったのではないでしょうか、ウー先生!!
【新たなジョン・ウー・ヒロイン】
写真・・・国家元首の妹でありながら敵陣でスパイ活動を働いたり、最前線で刀を振るわれたりと大忙しの尚香さま
この二部作でジョン・ウー映画のキャラクターとして最も興味深いのが強いヒロイン。特にヴィッキー・チャオ演じる尚香である。
ジョン・ウー映画は基本的に男の映画であり、ヒロインの存在感は弱い。女キャラは基本的に男の引き立て役であり、悪く言えば男を困らせるための役回りである。
「ハードボイルド」のテレサや、ハリウッド作品でのヒロインなど「いざとなれば戦うヒロイン」も描くようにはなったが、結局は敵に捕まって人質になるのが関の山だった。
それは本作の小喬にも言えることではある。しかし尚香は違った。
このヒロインはジョン・ウー映画で初めての、ピンチを一人で切り抜ける強いヒロインにして、明らかに主戦力の一人に数えることができるヒロインなのだ。
本作の前半における曹操陣営での諜報活動の件など観ていてスカっとする活躍ぶりであるし、ジョン・ウーのトレードマークの白い鳩を託されているところからも、ウーのこのキャラへの思い入れの程がうかがえよう。
しかも男勝りなだけでなく、ちゃんと女の色気も表現するため、周瑜らの前でクルクル半裸も披露してしまう。
冷静に考えると、国家元首の妹が敵国で一人でスパイするなど正気の沙汰ではないのだが、この強く明るく元気で可愛く気高いニュー・ヒロインの創造はジョン・ウーにとって大きな成果となるだろう。
だからこそ、尚香がクライマックスでさして活躍もせず、死屍累々の中で悲しみの涙を溢れさす古典的ヒロインに落ち着いてしまったのが残念だった(あれこそ小喬の役回りだろう)。颯爽と馬にまたがり曹操の首を取り来る尚香の姿が観たかった!!
しかしヒロインが単独主人公となるジョン・ウー映画が観れる日は近い!!!と期待させてくれるヴィッキー・チャオの大活躍であった!!
[追記1]
本作ではジョン・ウーの好きな、しかしあまりきれいに決まったことの無い「クロスカッティング」がめずらしく見事に決まった。孔明の10万本の矢調達作戦と、周瑜の離間の計の同時並行描写である。アクションをかっこよく見せるためのクロスカッティングなら神レベルの域に達しているウー先生だが、ストーリーテリングのためのそれは「M:I:2」などで観てきたが、解り難くしているだけだった感があった。本作では別々に展開する二つのエピソードが次第に近づいてきて一つの結末へと導かれる過程がテンポよく、しかもそれぞれのシーンの効果を高め合って描かれていた。この場面は脚本作りの参考にしたい。
[追記2]
団子のシーンが何とも言えず面白い。
トニーの団子一気食いシーンは、TV放映時に「決して真似しないでください」とスーパーを付けるべきだろう。
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【愛のローリング・キャッチ!!】
写真・・・ジョン・ウー先生の理想の愛の形を奇跡のダイビング・ローリングキャッチで体現した周瑜閣下と小喬さま
いきなりクライマックスのことから書き始めますが、壮絶としかいいようのないジョン・ウー印全開のシーンとなっていました。
前作には無かったジョン・ウーお決まりの超至近距離拳銃突きつけ合いが、本作では銃から剣に代わって再現。しかも周瑜と曹操でやり合うとは・・・
勢揃いした孫権・劉備連合軍の主要人物に囲まれ、燃える城と死屍累々を背景にそれでも王者の威厳を保ちながら勝ち誇った発言をする曹操。ジョン・ウー映画における悪党の死亡フラグが立ちまくるシーンがむちゃくちゃ思い出されてきます。
「弟は哀れだな。お前のせいで刑事から犯罪者に落ちるんだ。俺は金の力で三日後には釈放さ」と言ってホーさんに撃ち殺されるシン (From 挽歌)
「最後に勝つのは善人だと信じていたのか」と勝ち誇りながらルンさんに銃を向けるが、ホーさんとケンの銃撃を食らって倒れたところにルンさんにとどめの一撃を撃ち込まれそのルンさんから「最後に勝つのは悪人だと信じていたのか」と決め台詞を吐かれるコウ (From 挽歌2)
「狼」でも「ワイルドブリット」でも「ハードボイルド」でも悪党が正義の銃弾を喰らう前のお決まり展開だったではありませんか。
だからいかに史実を変えないためとは言え、「去れ!」と言って殺さずに引き上げる孫権・劉備一派にガクッとずっこけそうになってしまったのでした。
しかしなんといってもクライマックスにジョン・ウー的愛の結晶名シーンが炸裂しまくり胸がすく想いでした。
うん10億とか100億とかそれくらいの予算規模の映画の一番のクライマックスシーンであんな大技を本気で炸裂させてくれるのは香港映画人だけではないでしょうか。ジョン・ウー先生・・・あなたはやはりハリウッドに魂を売り渡してはいなかったのですね・・・と熱い感動がわき上がってきました。
あれほど「小喬、小喬」とメロメロだった曹操が、クライマックスで小喬を人質にして残忍に落とせぇぇっと命ずる豹変ぶりも凄いのですが、小喬さまをドタバタのすえ櫓の上からビョーンと落として、ジャッキーのプロジェクトAばりに天幕破って落ちたところを最愛の夫、周瑜さまがダイビングしてしかもローリングしながらキャッチして、もちろんその辺の件はスローモーで・・・愛の高潔さをこれでもかと見せまくる場面。ウー先生のロマンチストぶりを説明する上で決して外せない伝説的名シーンとして未来へ語り継がれていくことでしょう。
そういえば「ミッション・インポッシブル2」の時にウー先生は「今回、初めてラブロマンス映画を撮ったんだ」みたいな趣旨の発言をしておられました。その発言から10年近く経っても私はその発言の意味がよくわかりませんでした。しかし「レッド・クリフPart2」を観て、ようやく少しだけその真意が見えてきた気がします。
三国志で観たかったあのシーンがないとか、なんで苦肉の策を描かないんだとか、孔明と周瑜の出し抜き合いはないの?とか、ユンファが出なくて寂しいとか、そうしたあれやこれやの不満もあのD.R.C.(ダイビング・ローリング・キャッチ)で全て吹き飛びました。
ああウー先生。あなたは三国志が撮りたかったのでも、中国で映画を撮りたかったのでもない、貴方の理想の愛を描きたかったのですね。
トニーの腕を通して貴方がキャッチした愛を、私もがっちりと受け取りました!!!
【孔明!!戦わんかい!!】
写真・・・決戦が近づいたが特にやることがなくひまを持て余している諸葛亮
大都督周瑜閣下はもちろんのこと、孫権公や、孔明の君主たる劉備公までが自ら最前線で剣を振るい矢を放っておられるというのに、孔明は何しとんじゃい!!平原で偉そうに立ってるだけって、どういうこと!!? 戦え!!クライマックスは挽歌のユンファみたいに周瑜のピンチにかけつけてニヤッと笑いかけろ!!
まあ金城孔明が戦場をウロウロしていたら、関羽や周瑜の足手まといになるのはもちろん、尚香にも「邪魔だ」と言われそうだが。
この二部作での孔明の働きをふりかえってみよう
(1)長坂の撤退戦で、無策でオロオロする
(2)単身呉に渡り馬のお産を手伝って周瑜に恩を売り、同盟締結に成功
(3)亀の甲羅をモチーフにした陣で曹操の陸上部隊を撃破。(ただし関張趙+周瑜の超人的戦いによるところも大)
(4)矢を10万本手に入れる
(5)激戦の間は何もせず、戦いが終わってから偉そうに現れて周瑜から馬をもらう
軍師としての功績らしい功績は(3)と(4)くらい。
トニー・レオンの周瑜は死に際に「天はこの世に周瑜を生みながら、なぜ諸葛亮をも生んだのだ!」とは絶対に言わないだろう。
うーむ、いくらなんでももう少し孔明に見せ場を用意してもよかったのではないでしょうか、ウー先生!!
【新たなジョン・ウー・ヒロイン】
写真・・・国家元首の妹でありながら敵陣でスパイ活動を働いたり、最前線で刀を振るわれたりと大忙しの尚香さま
この二部作でジョン・ウー映画のキャラクターとして最も興味深いのが強いヒロイン。特にヴィッキー・チャオ演じる尚香である。
ジョン・ウー映画は基本的に男の映画であり、ヒロインの存在感は弱い。女キャラは基本的に男の引き立て役であり、悪く言えば男を困らせるための役回りである。
「ハードボイルド」のテレサや、ハリウッド作品でのヒロインなど「いざとなれば戦うヒロイン」も描くようにはなったが、結局は敵に捕まって人質になるのが関の山だった。
それは本作の小喬にも言えることではある。しかし尚香は違った。
このヒロインはジョン・ウー映画で初めての、ピンチを一人で切り抜ける強いヒロインにして、明らかに主戦力の一人に数えることができるヒロインなのだ。
本作の前半における曹操陣営での諜報活動の件など観ていてスカっとする活躍ぶりであるし、ジョン・ウーのトレードマークの白い鳩を託されているところからも、ウーのこのキャラへの思い入れの程がうかがえよう。
しかも男勝りなだけでなく、ちゃんと女の色気も表現するため、周瑜らの前でクルクル半裸も披露してしまう。
冷静に考えると、国家元首の妹が敵国で一人でスパイするなど正気の沙汰ではないのだが、この強く明るく元気で可愛く気高いニュー・ヒロインの創造はジョン・ウーにとって大きな成果となるだろう。
だからこそ、尚香がクライマックスでさして活躍もせず、死屍累々の中で悲しみの涙を溢れさす古典的ヒロインに落ち着いてしまったのが残念だった(あれこそ小喬の役回りだろう)。颯爽と馬にまたがり曹操の首を取り来る尚香の姿が観たかった!!
しかしヒロインが単独主人公となるジョン・ウー映画が観れる日は近い!!!と期待させてくれるヴィッキー・チャオの大活躍であった!!
[追記1]
本作ではジョン・ウーの好きな、しかしあまりきれいに決まったことの無い「クロスカッティング」がめずらしく見事に決まった。孔明の10万本の矢調達作戦と、周瑜の離間の計の同時並行描写である。アクションをかっこよく見せるためのクロスカッティングなら神レベルの域に達しているウー先生だが、ストーリーテリングのためのそれは「M:I:2」などで観てきたが、解り難くしているだけだった感があった。本作では別々に展開する二つのエピソードが次第に近づいてきて一つの結末へと導かれる過程がテンポよく、しかもそれぞれのシーンの効果を高め合って描かれていた。この場面は脚本作りの参考にしたい。
[追記2]
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トニーの団子一気食いシーンは、TV放映時に「決して真似しないでください」とスーパーを付けるべきだろう。
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
一層、D.R.C.が映えましたね。
挽歌2の「K.S.S.2K.R. (階段逆さ滑り降り二丁拳銃乱射)」と同様に大技は戦いの中でこそ輝きますね
彼には扇子をあおぐという重大な役目が(^^ヘ)。
ということで勘弁してあげてください(゜∀゜)。
きっと孔明は、ひまだなぁ・・・やることねーなー・・・そうだ、ちょいと風の変わり目に扇子あおいでみっか・・・とか思っていたんでしょうね
三国無双みたいにビーム撃ちながら戦ってくれても全然よかったんですが