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隠し剣 鬼の爪

2004-11-05 00:18:04 | 映評 2003~2005
作品の質としては「たそがれ清兵衛」と大差ない。スタートからドラマにたっぷり3/4、残り1/4でクライマックスの殺陣に至るまでを描く。
開館から3/4のドラマはクライマックスと物語上直接の関係はないが、主人公片桐(永瀬正敏)の心情をたっぷり描くためにある。
つまり「たそがれ清兵衛」と同じシナリオ構造ということである。
ドラマ部分で「たそがれ清兵衛」より弱いと感じるのは、「たそがれ清兵衛」が下級武士の日常生活をたっぷり描いていたのに対し、今作では下級武士と奉公人の身分違いのロマンスに焦点を当てたことによる。生活そのものではなく、恋愛という人生の中の一イベントでしかなく、ドラマにリアリティが欠ける。
ただし、「たそがれ清兵衛」より強いと感じるところもあり、それは今作のドラマが時代の移り変わりに伴い古い考えが新しい考えに凌駕され駆逐されていく、その古い人達の滅びの様を描いている点にあろう。
だが、それよりも今作で重要なのは、「清兵衛」よりずっとサスペンスフルな展開となり、活劇とまではいかないが、剣を振るって戦うことそのものがストーリーの背骨となっていることだろう。
タイトルの「隠し剣 鬼の爪」がそもそもサスペンス。一体どんな技なのか、クライマックス過ぎてもまだ明かされない。
そして来たぁぁぁ!!…って、これかよ!!?という地味な技ながら一撃必殺の恐るべし暗殺剣。戦や斬り合いで華麗に敵を倒す剣を陽とするなら、正義のため人知れず振るわれる隠し剣、鬼の爪はまさに陰の剣だ。
そんな超一流の刺客だからこそ抱く、殺すことの虚しさ。これはそのまま武士階級や身分制社会への嫌悪にもつながり(時代の移り変わりも思想的バックグラウンドとなっている)、主人公の結論に説得力を与える。
また、殺陣シーンも、「たそがれ清兵衛」に比べて漫画っぽくはなったが、敵のミスに乗じて勝ちを拾った清兵衛と異なり、師匠から伝授された必殺技を決めて勝利する片桐の方がかっこよく、チャンバラ描写はパワーアップしている。
そんなわけで、いまいち好きになれなかった「たそがれ清兵衛」より、今作の方が私はずっと好きである。
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