転生の宴

アヴァロンの鍵対戦会「一番槍選手権」を主催するNishiのブログ。最近はDIVAとDBACのプレイが多めです。

COJショートショート:メリー・クリスマス・フロム・アルカナ(その2)

2014-12-18 01:08:52 | 創作物(M・o・Aちゃん他)
昨日は夜から新宿入り。
DIVAのコンテストを進めつつ1.3のパックを剥いていたのですが、
30クレほど使って出てきたマネキーニャが引いてきたのが通算2度めのフォイルVRだったので取りやめ。
恐らくもう二度と新宿では剥かないことでしょう。

――

さておき一部では既に予告していましたが、
先日公開したSSの続きです。
「もしもエージェント達がクリスマスパーティをやったら」というテーマで書いてみたもので、
今回で完結となります。
ともあれお楽しみ下さい。

・過去作品
クエスト・フォー・ザ・ムーン その1
クエスト・フォー・ザ・ムーン その2
クエスト・フォー・ザ・ムーン その3
クエスト・フォー・ザ・ムーン その4
クエスト・フォー・ザ・ムーン その5
クエスト・フォー・ザ・ムーン その6
クエスト・フォー・ザ・ムーン その7(エピローグ)

ロボトミー・ソルジャー その1
ロボトミー・ソルジャー その2
ロボトミー・ソルジャー その3
ロボトミー・ソルジャー その4(完結編)

切札戦士 ジョーカー13(ワン・スリー) 第14話

バトルトーナメント:あなたが決める禁止カード その1
バトルトーナメント:あなたが決める禁止カード その2

エージェント・イン・スイムスーツ(1話完結)


<<<メリー・クリスマス・フロム・アルカナ その2>>>

作:Nissa(;-;)IKU

(前回までのあらすじ:クリスマスを間近に控えたある日、とある喫茶店でASTエージェントによるクリスマスパーティが開催されることとなった。料理も少しずつ出来上がり、準備も整いつつあるというところで、新たに2人の「少女」が店内に現れたのだった。)

天使ドレスの「少女」は何とか立ち上がり、店内を見回した。カメラを構える着ぐるみの大男の奥では、丁度緑色のドレスの女がピザや寿司などを持ってカウンターから出てくるところであった。

「おお、丁度来たか」クリスマスツリーを思わせるドレスの少女、沙夜は2人の「少女」に気づいて手を止めた。「綾花に、時矢だな。また『着せられた』か」

「全く、だから反対していたんだ」天使ドレスの「少女」の声はまさに少年のそれであった。彼こそがASTの少年エージェント、時矢である。「俺は着せ替え人形じゃないんだぞ」

「また『あいつ』か…すっかり『弟』扱いされてるな」軍司は綾花の横に落ち着きなく並ばされている時矢に向けて、追加で3回ほどフラッシュを焚いた。「でも意外と似合ってるぜ、思った以上にメイクも載ってる」「変なお世辞は要らないんだよ」時矢はやや俯いた様子でぼやいた。

時矢が不機嫌なのも無理は無い。緊急連絡を受けて秘密基地に向かったのに、案件がただのクリスマスパーティで、しかも「ドレスコード」を理由に無理矢理女児用のドレスに着せ替えさせられたのだ。「全く、何が『ドレスコード』だ…」時矢は「かご」を横目で見ながら呟いた。

「その写真、わしにも送ってくれぬか?」ひと通り料理を並べ終えた沙夜が、軍司の後ろからカメラを覗きこんだ。「うむ、こうして見ると、結構似合っているのう」「ほう、お前もそう思うか」軍司は軽く頷くと、「少女」達のツーショットのホログラムを浮かばせた。「今から送るぜ」

「恩に着る」ホログラムが小さな立方体の形まで縮まると、吸い込まれる様に沙夜や時矢のドレスのポケットに収まった。これで彼女らの持つ端末に保存されたことになる。「さて、あとはまりねじゃな、一体どんな扮装なのか…」

「今連れ出すわ」綾花は小さく頷くと「かご」の中に入り込んだ。「…さあ、次はあなたよ!駄目よ!自分で撒いた種じゃない…!」悲鳴とかごの内壁を叩く音が続いた後、投げ出される様に店内に転がり込んだのは、余りにも奇妙な白い「物体」であった。

「そっ、それ着せたのかよ!」何とか笑いを堪えようとしていた軍司だったが、遂に堪えきれなくなった。店内に彼の爆笑が鳴り響き、ホログラムが十数枚程浮かび上がった。

「な、何よもう!いきなり笑わなくたっていいじゃない…!」漸く体勢を取り戻した「物体」は、床に座り込んだまま軍司を見上げた。白い全身タイツにリボン付きの箱型の被り物。顔の部分は丸く穴が開けられていて、まるで観光地の「顔ハメ」である。

そう、この「プレゼント」こそが今回の「ドレスコード」の首謀者である少女エージェント、まりねなのである。「確かに『折角のパーティだし皆で仮装して出ましょう』って言ったのは私よ?だからって『これ』は無いでしょ!」タイツの腰部分を伸ばしながら文句をいうまりねの顔は真赤である。

「それ本当は時矢君用だったのよ?」綾花が帽子をかぶり直しながら「かご」から戻ってきた。「なのにまりねちゃんが面白がってあのドレスを着せるから…」「それを先に言いなさいよ!」まりねは両手を振り上げながら、顔を更に赤らめていった。

「胸に巻いたリボンがお洒落じゃのう」話に割り込んできたのは沙夜である。「つまり、おぬし自身をプレゼントとして売り込むと?」「そうそう沙夜ちゃん、『プレゼントは、ア・タ・』」シ、と言うと同時に両手で横ピースを決めたまりねの顔に向けて、更にフラッシュが焚かれた。

「って、何やらせるのよ沙夜ちゃん!それに軍司さんも勝手に写真撮ったりして!」「ナイス横ピース!」サムズアップで応える軍司のカメラからは、まさにその横ピースのホログラムが浮かび上がっていた。「勿論お前にも送るぜ、そらよっ」ホログラムはまりねの腰のポーチに収まった。

「もー!そのもじゃもじゃ頭、バリカンでツルッツルになるまで刈っちゃおうか!」まりねは軍司の着ぐるみのフードを開き、髪の毛をぐしゃぐしゃに揉み回した。「うはは、こいつは参ったぜ!」両手を上げながらも軍司はまんざらでもない表情である。

「おっ、着替えも済んだみたいだな!」そこにカウンターから「雪だるま」を模したコック服姿の青年が現れた。「うおっ、皆可愛いじゃないの!」「ありがとよ光平!」「ど、どういたしまして…」軍司の応えに、「光平」と呼ばれた青年は後ろ頭を掻きながら頭を下げた。

「光平さん!もう料理出来上がっているじゃないですか!」綾花が光平のもとに駆け寄った。「本当ありがとうございます!こんな豪華な料理で…!」「沙夜ちゃんが手伝ってくれたお陰さ!」光平は笑顔で応えつつ、掌で沙夜の方を指した。「沙夜ちゃんにも礼を言ってあげてくれよ!」

「うわぁ~!思ったよりも本格派だ!」料理に気づいたまりねはテーブルの側に歩み寄り、軍司の斜向かいの席に腰を下ろした。「ところでこの被り物外していいかな?」「俺はそのままの方がいいな!そっちの方が可愛いし!」「もうっ、光平さんったら!」まりねは再び顔を赤らめた。

「そうそう、トッキーもおいで!」「トッキー言うなよ…」手招きする光平に対し、時矢は渋々従った。「これで6人揃ったな!あと1人で全員揃うんだが…」

「ミッションが入って遅れるって言ってたわ」綾花はポケットから端末を取り出しながら応えた。「ミッション?俺達も行かなくちゃいけないかな?」「一人でできるから大丈夫って言ってたわ、問題はいつ戻って来るかだけど…」

「綾花、今からエレベータは動かせるか?」光平の横に立つ沙夜がふいに割り込んだ。彼女は何かを探すかの様に天井を見上げている。「そ、それは勿論出来るけど…」「…どうやらちょうど今戻ってきた様じゃ」

――

ビルの屋上には一人の男が立っている。白銀色の髪に赤い毛糸の帽子、ファー付きの上着も赤一色で、足元には大きな白い袋包みが置かれている。その姿はまさに伝統的な「サンタクロース」そのものである。

「…はい、ただ今到着しました…」男は携帯端末を通して音声通信を行っていた。「ええ、特にトラブルもなく…はい、はい、ありがとうございます、楽しんできます――」

通信を終え、端末をポケットに戻した彼の眼下では、クリスマスシーズンで賑わう街並みが光り輝いている。30階建てという高さはこの時代にはありふれたものだが、西東京一帯の建築規制の影響もあり、この屋上を見下ろせる建物は周囲には存在しない。

彼は丁度今「戻ってきた」ところであった。異次元空間「アルカナ」での臨時ミッションの後、現実世界に繋がる「ゲート」の一つがある、このビルの屋上に降り立ったのである。

この日は特にタフな一日であった。普段から懇意にしているクライアントからの依頼で、孤児院でのサンタクロース役を買って出たまでは良かったが、帰り際に緊急連絡を受け、着替えの暇も無くAST本部へと向かうことになったのだった。

彼に与えられた「臨時ミッション」――それは「アクティス」こと本部オペレータから手渡された荷物を、アルカナ経由で西東京の秘密基地――このビルのことだ――まで送り届けるというものであった。「新システムの試運転」という名目だったが、中身を覗いた瞬間、彼はその意味を察した。

「新システムの試運転、か…粋な計らいだな…」男はふいに呟いた。荷物のうち1つはクリスマスケーキであろう。他の小さな荷物にはそれぞれエージェント達の名前が書かれている。文字通りの「クリスマスプレゼント」である。

気配を感じ、男はふと振り向いた。銀髪に丈の短い緑色のコートの女である。男は袋包みを持ち上げ、女のもとへと向かった。

「仁、無事だったか」先に声をかけたのは女の方であった。まだ幼さを残しているが、どこか妖艶な雰囲気のある声――先程「7人目」の到着を感知した少女、沙夜である。「うむ、まさに『サンタクロース』じゃな」「沙夜か、来るのが早いな」仁は小さく右手を上げた。

――

読者の中には仁の到着に合わせて迎えに来た沙夜の勘の強さを感じ取った者もいるだろう。事実はもう少し複雑である。

アルカナ内での活動については、各人の「アルカナ適性」が影響を及ぼす。高いアルカナ適性を持つ者は、アルカナ内での能力が現実世界に比べて数倍に強化されるのだ。

逆にアルカナ適性が低すぎると「拒絶反応」を起こし、最悪脳を破壊され即死する場合すらあるのだ。一般人がアルカナに引きずり込まれ、肉片となって戻ってくる現象、通称「A案件」の犠牲者の半数程度は、この「拒絶反応」によるものである。

ASTのエージェントには高いアルカナ適性を持つことが必要とされることは言うまでもない。その中でも沙夜のアルカナ適性は非常に特殊なものである――現実世界にいながら、携帯端末などの専用の電子機器を使うことなく、アルカナ内の景色を「見る」ことが出来るのだ。

彼女の家系では先祖代々から高い霊能力が引き継がれているという。それとこの「霊視」能力との関連性については、未だに謎のままとなっている。

特筆すべきこととして、この「霊視」はアルカナ内から携帯端末などの「電子の目」によっては探知することが出来ない。そのことが後々の「戦争」において重大な意味を持つことになるのだが、それについて語るのはまた別の機会になるであろう。

――

沙夜が仁の到着にいち早く気づけたのも、この「霊視」があってのことである。そしてコートなどの着替えの理由で、彼女自身が仁を迎えに行くことになったのだった。

「それにしても、何故『サンタクロース』に?」「色々あったのさ」探偵業を営む仁にはクライアントについての守秘義務がある。勿論沙夜も理解しており、それ以上の追及はしなかった。「うむ…ともあれこれで7人揃った訳じゃな、皆待ちかねておるぞ」「そうか…ところで服はこれでいいのか?」

「『ドレスコード』のことじゃな、ふふ」沙夜は一同の服装を思い出し、小さく微笑んだ。「皆奇抜な衣装に着替えておる、あとはお主の演技力次第じゃ」「いきなり難題だな…ともあれ楽しむとするか」

「料理も沢山あるし、シャンパンも用意されておる。3人で楽しむと良かろう…んっ」ふと沙夜は空を見上げ、掌を胸のあたりまで掲げた。手袋の上に小さな白い六角形の「花」が降り立った。「初雪じゃ」

「雪か…」仁も少し遅れて、細かな雪がゆっくりと降り立ってくるのに気づいた。「少し早いが、『ホワイトクリスマス』って奴か」

「そういうことになるな」沙夜は少し目を細めながら応えた。「今日は冷え込みそうじゃ、そろそろ店に戻るとしよう」「そうだな、皆を待たせるのも悪いしな」仁は沙夜と並んでエレベータへと向かった。「何より『サンタクロース』としてもう一仕事する必要があるからな」

二人が「かご」に乗り込むと、屋上は再び無人の空間となった。航空障害灯とサーチライトで照らされる床の上に、1つ2つと雪の結晶が降り立っては消えていった。

<<<メリー・クリスマス・フロム・アルカナ 完>>>

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