昨日は雨の為遠出する気力がなかったのですが、
ひとまず夕方から吉祥寺へ。
COJは無料分を軽く消化という感じでやっていました。
そんな訳で久々のショートショートの投稿です。
先日から始まった新エピソード「リターン・フロム・ザ・ドラゴンズ・ヘッド」の続きです。
例によってオリジナル設定が盛り込まれているので、
公式のものではないことをご了承下さい。
◎過去作品
○連載もの
・クエスト・フォー・ザ・ムーン(全7話)
その1
その2
その3
その4
その5
その6
その7(エピローグ)
・ロボトミー・ソルジャー(全4話)
その1
その2
その3
その4
・メリー・クリスマス・フロム・アルカナ(全2話)
その1
その2
・リターン・フロム・ザ・ドラゴンズ・ヘッド(連載中)
その1
その2
○その他エピソード
・バトルトーナメント:あなたが決める禁止カード(連載再開未定)
その1
その2
・
切札戦士 ジョーカー13(ワン・スリー) 第14話
・
エージェント・イン・スイムスーツ
・
イーリスの物語
<<<リターン・フロム・ザ・ドラゴンズ・ヘッド その3>>>
作:Nissa(;-;)IKU
(前回までのあらすじ:世界征服を企む邪悪なるハッカー組織「リバースデビル」は、遂に行動を起こした。アルカナ全域にウィルスを散布し、逆探知によって突き止めたASTの秘密基地の1つを強襲したのである。
(これによりASTのメンバーの多くが犠牲となった。後にまとめられた死亡者リストの中には、少女エージェント「京極院 沙夜」の名前もあった。)
(3日後、行方不明となっていた若きエージェント「鈴森 まりね」と思われる女が、リバースデビルの尖兵として「星 光平」の前に立ちはだかった。血まみれの死闘となると思われた両者の戦いであったが、そこに謎の存在が割り込んできたのであった。)
「くっ――新手の敵かっ!」「まりね」に真に衝撃を与えた謎の攻撃――それは光平が「緊急回避」を繰り出す一瞬前に繰り出された、何者かによる精神攻撃である。これにより彼女は事前に準備していた「増援」を一挙に失うこととなったのである。
「まりね」は屈んだまま光平の方へ向き直った。彼の前に謎の人影が立ちはだかっている。セーラーの上着に濃紺色のタイツの少年――あるいは少女か。キャスケットとゴーグルのせいで、その表情は窺い知れない。「あれか――あれがパパが言っていた――」天鳥 烏兎。「まりね」は小さく呟いた。
突如「まりね」の頭上にホログラム画像が浮かび上がった。黒いスーツに緑色の一つ目の怪物の被り物を被った「怪人」で、三本の角を持つその姿はキリンの様でもあった。「パパ!」「まりね」は驚いた様に立ち上がった。
「ナイトシェード、潮時だ」「パパ」と呼ばれた「怪人」は初老の紳士の声で呼びかけた。「ここは引き上げなさい」「パパ!まだ私は――」「事情はログで知ったよ、『天鳥 烏兎』が現れた以上、これ以上の長居は危険だ――」
「おい、今『パパ』って言っていなかったか?」「まだよく分からないけれど、洗脳の副作用の可能性はあるわね――」本部の綾花と通信を取る光平を庇うように、烏兎は油断なくライフルを「まりね」――ナイトシェードに向けて構えている。
「怪人」のホログラムが消え、ナイトシェードの背後に青緑色の壁が現れる。彼女の表情は既に父親を慕う娘のから、リバースデビルの残忍なる女エージェンドに戻っていた。
「帰ったら『山城 軍司』に伝えろ――」ナイトシェードは光平に鎌を突き立てながら、吐き捨てるように宣言した。「奴は、このナイトシェードが殺す――!」
――
ナイトシェードが去り、アルカナ内に暫くの静寂が訪れた。烏兎はライフルを構えたまま左右の警戒を続けていた。「伏兵は無し、ひとまず危機は去ったか――」その声は声変わり前の少年の様にも、幼い少女の様にも思えた。
「き、君は一体――」光平は屈んだまま、目の前の若き戦士に問いかけた。旧世紀にとある老作家が創造した若き冒険家、「天鳥 烏兎」のことは光平も勿論知っている。だが、目の前に烏兎そのままの外見を持つ存在が突然現れ、戦闘に割り込んだことが彼を困惑させたのである。
「其方らの争いを、空から眺めていた――」烏兎はライフルを腰に収めながら、光平の側に向き直った。深めに被ったキャスケットとオレンジ色に輝くゴーグルのせいで、その表情は謎めいている。「あと数秒遅ければ、あの勇猛果敢な女戦士は、其方を殺害していたであろう」
烏兎の芝居がかった口調に、光平は聞き覚えがった。彼の妹は烏兎の大ファンであり、それをイメージした服を揃えたり、台詞をよく真似たりしていたのである。そのお陰で、彼は目の前の烏兎がまるで原作から飛び出した本物のように思えたのだ。
「そうか――でも何故俺を助けたんだい?」「其方からは殺意が感じられなかった――何か迷いを感じたのだ」「俺はあの子を連れ戻す為にここに来たんだ、だけど知らない間にあんな風になって――」
「色々な場合が考えられよう」烏兎は腰に手を当てたまま小さく頷いた。「敵に寝返った、敵に操られている――いずれにせよ一筋縄ではいくまい、日を改めて事を起こすがよかろう」「――」烏兎の言葉に、光平は小さく頷くことしか出来なかった。
「最後に1つ訊こう、其方の名前は」「『星 光平』っていうんだ、バンドやってるんだけど、色々あってここに来ているんだ」「『星 光平』か――覚えておくぞ」烏兎はゴーグルを軽く向け直すと、光平に対して横向きに立って姿勢を整えた。
「人呼んで太陽の勇者、『天鳥 烏兎』」そう言うと同時に、烏兎の両腰に挿されたライフルからロケットの様に炎が吹き出し、その体を宙に浮かべた。「いずれまた会うであろう」そしてそのまま空高く飛び上がると、雲の合間に姿を消したのであった。
烏兎の特技は両腰に挿したライフル「飛び道具」を使っての飛行とされている。アルカナ内であるとはいえ原作通りの飛行を目の当たりにし、光平は呆然とならざるを得なかった。
「――さん、光平さん――!」綾花の声で、光平は我に返った。「あ、綾花さん!俺は無事です!今から帰還します」
「了解、今から『ゲート』を開くわ」綾花の声とともに、光平の背後の赤黄色の壁が現れる。光平はギター型の端末を構え直すと、「ゲート」へと向かった。「『天鳥 烏兎』か――一体何者なんだろう?」
「ログをざっと見たけれど、脳波は検知できなかったわ」「ということは『プログラム』の生き残り――にしても、何だろうね、この妙な感じは?」「もう少しデータを調べてみる必要があるわね――」
光平が「ゲート」をくぐると、一帯は再び無人の地となった。やがて西側を覆う雲が晴れ、夕焼けが荒廃した建屋をオレンジ色に輝かせた。
――
翌日、愛美は学校の図書室の一角で狼狽えていた。
「ない――ない――」いつもなら「天鳥 烏兎」のコーナーで次に読む本を物色しているところであった。だがその「烏兎」関連の本が、軒並み撤去されていたのである。
「愛美さん?」丁度通りかかった司書の女教師が、愛美に声をかけた。司書の押すワゴンには、「烏兎」の本が山積みにされている。「ごめんね、教えるのが遅くなって」
司書はワゴンを押す手を止め、愛美と目の高さを合わせるように腰を落とした。「実は昨日、PTAの役員の方からクレームが来てね、『烏兎』の本を当面片付けなければならなくなったの」
愛美の表情は更に暗くなった。それは単に大好きな「烏兎」が取り上げられただけではなかった。昨日見た不穏なデモ行為、「烏兎」への名指しの糾弾――それが少しずつ現実を浸食しつつあるのを目の当たりにして、得も言えぬ不安を感じたからであった。
<<<その3おわり その4へつづく>>>
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転生の宴は
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