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原発を動かさないと日本の経済成長はムリ…"失われた30年"を取り戻す…日本経済復活”唯一の道”  

2024年10月09日 20時46分30秒 | 全般
以下は、9/26に発売された月刊誌WiLLに、p324から3段組で掲載されている小倉健一イトモス研究所所長の論文からである。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読である。

原発を動かさないと日本の経済成長はムリ
安定的かつクリーンで競争力のある電源はいつたい何なのか

"失われた30年"を取り戻す 

生成A1時代に必要不可欠なデータセンターや半導体事業は、安定的かつ大量の電力を必要とする。
例えば、千葉県印西市に三菱商事が50%出資して建設した「NRT12データセンター」などでは、一施設当たりの総受電容量がおよそ3万kWであるが、今後国内で建設予定の大型データセンターは数10万から最大100万kWが必要だと言われている。
これは山梨県全体で必要とする電力と同等である。 
今後こうした設備が建設され、電力需要が増加することが見込まれるなかで、原発の再稼働も進まず、政府による再エネ主力電源化の推進により安定的かつ低廉な電力供給が困難となれば、当然のことながら"失われた30年"を取り返すビジネスチャンスは他国に譲らなくてはならなくなる。 
思い返せば、日本を戦争へと急がせた理由は「石油不足」であった。
大戦前において、およそ8割の石油を米国から輸入していた日本は昔から資源小国であり、その反省から戦後は原発の活用が進んだ。
しかし、東日本大震災を経て、エネルギー自給率は約10%であり、ほぼ全ての化石燃料を海外からの輸入に依存している事実は変わっていない。 
東日本大震災から13年経過した現在でも、国内で再稼働している原発はこの9月時点で36基(廃炉が決定した24基を除く)のうち、わずか12基(すべてPWR型)であり、国内のほとんどの原発が稼働していない状況となっている。 世界はどうかー。 
福島第一原子力発電所の事故後、原発に対する忌避感が広がり、ドイツのように原発を全廃する国も現れた。
しかし、2015年のCOP21を機に、脱炭素化か国際的に注目され、温室効果ガスを排出しない原発が再び脚光を浴び始めた。
そして、2022年のロシアによるウクライナ侵攻で状況は一変した。
西欧諸国がロシアに対して経済制政を行った結果、ロシア産エネルギーへの依存が強かった世界のエネルギー市場は混乱し、地球温暖化のオピニオンリーダーであった欧州は、これまで言ってきたことが嘘だったかのように、世界中からLNGや石炭を急いで確保し、エネルギー価格が急騰した。 
独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、欧州のLNG輸入拡大で2025~2026年には世界のLNG供給余力が減少し、価格に影響が出る可能性が指摘されている。
こうした背景から、ドイツでは脱原子力に賛成する国民が約6割から約2割に減少し、エネルギー価格の高騰を免れた原発が再び注目されるようになった.昨年のCOP28では、エネルギー安全保障、脱炭素化、経済性を回時に実現するエネルギー源として原発が再評価され、日本を含む22か国が「2050年までに2020年比で原子力発電容量を3倍にする」との共回宣言を行った。
原発推進の機運が世界的に高まっている。
エネルギー供給に悩まされる日本経済はいよいよ危うくなっていく。

不安定な再生可能エネルギー 
今年5月に開催された第55回総合資源エネルギー調査会基本政策分科会で、齊藤健経産大臣は「今、日本はエネルギー政策における戦後最大の難所にある」と強い危機感を示した。
この発言の背景には、ウクライナや中東の情勢不安定化をはじめ、国際的なエネルギー情勢の変化があり、海外からのエネルギー安定調達が一層困難になっている現実がある。
また、カーボンニュートラル実現への具体的な道筋が描けず、脱炭素電源の安定供給が確保できなければ、国際競争力にも悪影響が及ぶ可能性が高い。
さらに、生成AIの普及に伴うデータセンターや半導体事業による電力需要の増加にも対応しなければならないという厳しい状況がある。 
第6次エネルギー基本計画では、2030年までに原子力の電源構成比率を20~22%にする目標が掲げられている。
この達成には、再稼働済みの12基に加え、設置許可済の5基、審査中の10基の稼働が前提とされているが、現状では再稼働が大幅に遅れている。
たとえば、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所7号機は再稼働準備が整っているにもかかわらず、地元同意を得られていないために再稼働が進んでいない。
島根や女川の原発も年内再稼働を目指しているが、まだ実現していない。
さらに、敦賀原発2号機は新規制基準に適合していないと判断され、再稼働が認められていないが、この審査には疑問が残る。
原発の比率を2割に引き上げるには、30基近くの発電所が稼働する必要だが、このままでは目標達成は極めて困難である。 
「核燃料サイクル」の問題も指摘されているが、再処理工場の高額な費用は長期的利益への投資と考えるべきだ。
再処理によって、使用済み燃料を廃棄物としてではなく、新たな燃籵として再利用することができる。 
今、再生可能エネルギーの発電コストが原子力よりも低いかのようなデータが示されていることがある。
しかし、再生可能エネルギーは自然任せであるため、石炭・化石燃料による火力発電所のバックアップなしでは安定供給が難しい。
その結果、総合的には競争力に欠ける電源となる。
欧州では、洋上風力の導入が進んでいるという宣伝ばかりがされる一方で、実質的な脱炭素化は遅々として進んでいないのが現状だ。
日本は、あたかもEUによる脱炭素化か推進しているかのようなプロパガンダに騙されてはいけない。

日本経済復活”唯一の道” 
福島第一原子力発電所の事故を受け、2012年に法改正で電力全面自由化が始まって以降、電力需要の今後の不透明性から電源の投資予見性が低下し、電力会社が新規電源開発投資をしづらい状況が続いている。
それを受け、昨年度から電源投資支援制度として、長期の脱炭素電源オークションが始まり、落札案件が出ている。
しかし、この制度では落札時に20年間収入が固定されるため、資材価格の高騰や金利の上昇などによる追加コストを回収できない問題が残る。
これにより、電力会社はリスクを避けられず、新しい電源の建設が進まない可能性が依然としてある。 
今後2050年に向けてカーボンニュートラルを実現するとしている日本は、齊藤経産大臣が述べた危機感のとおり、茨の道を進む可能性が高い。
脱炭素化電源の導入だけでも難題続きであるところ、さらにこれからの電力需要の増加を賄うためには、原子力を含む既存電源を最大限活用していく他ないからだ。
準国産エネルギーである原子力発電の利用は、現在抱える様々な問題のソリューションになり得る。
脱炭素電源であることから温室効果ガス排出量を削減しつつ化石燃料への依存を低減することが可能であり、併せて燃料価格のボラティリテイ(価格の変動)が抑制されることから電力の価格安定化も実現し、エネルギー自給率も向上することからエネルギー安全保障にも貢献できる。 
昨年五月にGX脱炭素電源法が成立し、「安全性が最優先」という原則の下で国、企業、各自治体がそれぞれ主体性を持って原発を推進していくこととなった。
原発を再び我が国のベース電源とするべく、下地が整えられつつある。
第7次エネルギー基本計岡と電力システム改革の見直しが同時になされる本年に、我が国の産業と人々の生活を支える、安定的かつクリーンで競争力のある電源は一体何なのか、改めて国を挙げた本音の議論をするべきである。
日本人に突き付けられた選択肢は決して多くなく、原子力以上に魅力的な選択肢があるのであればしっかりと検討するべきであるし、第7次エネルギー基本計画へ反映するべきだろう。
しかし、現状を見る限り、原子力以外に日本が取るべき道はない。


2024/10/6 in Umeda



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