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深夜の中央自動車道を経由して朝霧高原に向かい、ひた走る。まずは、早朝の高原
で富士山を撮影することが目的。その後、いくつかの場所で富士山を眺め、そして撮
影する予定。
私 :「道の駅 朝霧高原」が近づいて来たよ。予定通り3時には駐車場に入れるぞ。
妻 :どんな富士山に出会えるのかな?早朝の富士山なんて初めてだから、全く想像が
つかないけど、朝霧高原っていうくらいだから、このあたりは朝霧に包まれる
んでしょうね。富士山はどっちの方向かしら。期待で胸がドキドキしてきちゃった。
私 :さあ!到着だ。まだ真っ暗だから1時間程度、車内で休もうよ。
妻 :ちょっと待った!星空も見ずに寝るわけにはいかないわ。
私は星を眺めて来るわよ。
私 :それはそうだね。僕もちょっとだけ見てこよう。
妻 :ほ~ら、やっぱり満天の星だ。もう満足よ。少しだけ車中で仮眠しましょうね。
2人は4時少し前には車から出て、撮影ポイントを探し始めた。薄暗い中、手前が草原
で、その向こうに富士山がそそり立つ絶景のポイントを見つけ、撮影の準備に入る。
その頃には1人、2人とカメラを手にした人たちが集まってきた。
妻 :ほら、私の読み通り、草原に朝霧が立ち込めてきたわ。富士山の稜線がイマイチ
はっきりしないけど、もう少し明るくなればキレイに見えるんじゃないかしら。
私 :そうだね。おや、あちらから男の人が来たよ。お早うございます。朝霧が出てき
て、かなり良い雰囲気になってきましたね。
旅人:お早うございます。なかなか幻想的な霧が出ていますね。つい先日、iPadを購入
したので、今日はこれで初めての撮影に挑戦するんですよ。画面が大きいから
迫力のある写真が撮れると思って期待しているのです。もう70歳を過ぎました
が、ここの撮影を終えたら、四国の八十八ヶ所巡りに向かいます。さ~、写すぞ。
私 :これがiPadなんですね。失礼ながら、その年齢で新規購入とは恐れ入りました。
私は使いこなせそうにないので、購入を検討したこともありません。ですから実
物を見るのは初めてなんですよ。画面の大きさはノートパソコン並ですね。写し
た写真もさぞかし迫力があることでしょう。撮影したらぜひ見せてください。
旅人:そう言われると嬉しいですね。大きいから手ぶれしやすいと聞いているので、足を
ふんばって、脇も締める。こうしてレンズを富士山に向けて、ここをタッチすれ
ば迫力のある画面が写せるのだ。 ソレ!ム、ムッ・・・・ヤヤヤ・・・
私 :どうしました?
旅人:このボタンにタッチすれば写るはずなのですが、シャッターが切れません。
どうしたんだろう?これで写真を撮るのは初めてなので使い方がよくわからな
いな~。横にしても、縦にしてもダメだ。どうなっているんだ?
私 :説明書で確認するのが、いいのではありませんか?
旅人:説明書は持っていないんだ。字は小さいし、読んでも分からないからね。あとで、
近くにある販売店に立ち寄って教えてもらうよ。携帯電話のように被写体に向
けてカメラマークを押すだけで写るはずなんだけどな~。もう少し触ってみよう。
私 :せっかく早朝に来て、絶景ポイントに立っているのに撮影できないのは残念です
ね。
旅人:どうやら、富士山はiPadが嫌いらしい。どのボタンをタッチしても全く応答がない。
携帯とどこが違うのだろう?新品だし、被写体は眼前にそびえているのに、
どうしてダメなんだ。ア~、焦ってきたぞ。もうダメだ!今日は撮影を諦めた。
お二人は頑張って撮影してください。では、さようなら。
私 :道中のご無事を祈っていますよ。お気を付けて!
妻 :あの方は一度も試し撮りをしないで、ここに来られたようね。これから四国へ行く
ようだけど、運転は大丈夫でも、写真撮影のほうは、あの調子で大丈夫なのかし
ら。
私 :後ろ姿にガッカリ度が現れているよ。富士山撮影をかなり期待していたみたいだか
ら、気の毒だったね。でも、お店でちゃんと教えてもらえば、すぐに撮影できる
ようになるさ。それより僕たちは撮影に集中しようよ。
妻 :私は、あなたたちの話を聞きながら、眼は富士山から離さずに、次々とシャッター
を切ってるわよ。今の紳士はあなたとほぼ同年齢らしいけど、iPadを持って旅
をするなんて素敵ね。きっと知的好奇心に満ちあふれた人なんでしょうね。
四国八十八ヶ所巡りか~。私もいつか挑戦してみたいな。だけど、今は富士山の
撮影に集中、集中。
私 :僕はおしゃべりに夢中で、ビデオの電源を入れたままだったぞ。さあ、撮影再開。
ア~ッ、日の出だ!富士山が薄紅色のヴェールを纏ったように見えるね。
さあ、荘厳な日の出を拝んでから、また撮影を続けることにしようよ。
なぜiPadのシャッターが切れなかったのか?今でも不思議。もし私に多少の知識があ
れば、あのタブレットに朝霧の向こうで朝日に照らされる富士山の神々しい姿を映像
として残すことができたのにと思うと、返すがえすも残念でならない。