ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

富士山に嫌われたiPad(アイパッド)

2013-07-29 08:24:04 | 日記



 深夜の中央自動車道を経由して朝霧高原に向かい、ひた走る。まずは、早朝の高原

で富士山を撮影することが目的。その後、いくつかの場所で富士山を眺め、そして撮

影する予定。


私 :「道の駅 朝霧高原」が近づいて来たよ。予定通り3時には駐車場に入れるぞ。

妻 :どんな富士山に出会えるのかな?早朝の富士山なんて初めてだから、全く想像が

    つかないけど、朝霧高原っていうくらいだから、このあたりは朝霧に包まれる

    んでしょうね。富士山はどっちの方向かしら。期待で胸がドキドキしてきちゃった。

私 :さあ!到着だ。まだ真っ暗だから1時間程度、車内で休もうよ。

妻 :ちょっと待った!星空も見ずに寝るわけにはいかないわ。

    私は星を眺めて来るわよ。

私 :それはそうだね。僕もちょっとだけ見てこよう。

妻 :ほ~ら、やっぱり満天の星だ。もう満足よ。少しだけ車中で仮眠しましょうね。


 2人は4時少し前には車から出て、撮影ポイントを探し始めた。薄暗い中、手前が草原

で、その向こうに富士山がそそり立つ絶景のポイントを見つけ、撮影の準備に入る。

その頃には1人、2人とカメラを手にした人たちが集まってきた。


妻 :ほら、私の読み通り、草原に朝霧が立ち込めてきたわ。富士山の稜線がイマイチ

    はっきりしないけど、もう少し明るくなればキレイに見えるんじゃないかしら。

私 :そうだね。おや、あちらから男の人が来たよ。お早うございます。朝霧が出てき

    て、かなり良い雰囲気になってきましたね。

旅人:お早うございます。なかなか幻想的な霧が出ていますね。つい先日、iPadを購入

    したので、今日はこれで初めての撮影に挑戦するんですよ。画面が大きいから

    迫力のある写真が撮れると思って期待しているのです。もう70歳を過ぎました

    が、ここの撮影を終えたら、四国の八十八ヶ所巡りに向かいます。さ~、写すぞ。

私 :これがiPadなんですね。失礼ながら、その年齢で新規購入とは恐れ入りました。

    私は使いこなせそうにないので、購入を検討したこともありません。ですから実

    物を見るのは初めてなんですよ。画面の大きさはノートパソコン並ですね。写し

    た写真もさぞかし迫力があることでしょう。撮影したらぜひ見せてください。

旅人:そう言われると嬉しいですね。大きいから手ぶれしやすいと聞いているので、足を

    ふんばって、脇も締める。こうしてレンズを富士山に向けて、ここをタッチすれ

    ば迫力のある画面が写せるのだ。 ソレ!ム、ムッ・・・・ヤヤヤ・・・

私 :どうしました?

旅人:このボタンにタッチすれば写るはずなのですが、シャッターが切れません。

    どうしたんだろう?これで写真を撮るのは初めてなので使い方がよくわからな

    いな~。横にしても、縦にしてもダメだ。どうなっているんだ?

私 :説明書で確認するのが、いいのではありませんか?

旅人:説明書は持っていないんだ。字は小さいし、読んでも分からないからね。あとで、

    近くにある販売店に立ち寄って教えてもらうよ。携帯電話のように被写体に向

    けてカメラマークを押すだけで写るはずなんだけどな~。もう少し触ってみよう。

私 :せっかく早朝に来て、絶景ポイントに立っているのに撮影できないのは残念です

    ね。

旅人:どうやら、富士山はiPadが嫌いらしい。どのボタンをタッチしても全く応答がない。

    携帯とどこが違うのだろう?新品だし、被写体は眼前にそびえているのに、

    どうしてダメなんだ。ア~、焦ってきたぞ。もうダメだ!今日は撮影を諦めた。

    お二人は頑張って撮影してください。では、さようなら。

私 :道中のご無事を祈っていますよ。お気を付けて!

妻 :あの方は一度も試し撮りをしないで、ここに来られたようね。これから四国へ行く

    ようだけど、運転は大丈夫でも、写真撮影のほうは、あの調子で大丈夫なのかし

    ら。

私 :後ろ姿にガッカリ度が現れているよ。富士山撮影をかなり期待していたみたいだか

    ら、気の毒だったね。でも、お店でちゃんと教えてもらえば、すぐに撮影できる

    ようになるさ。それより僕たちは撮影に集中しようよ。

妻 :私は、あなたたちの話を聞きながら、眼は富士山から離さずに、次々とシャッター

    を切ってるわよ。今の紳士はあなたとほぼ同年齢らしいけど、iPadを持って旅

    をするなんて素敵ね。きっと知的好奇心に満ちあふれた人なんでしょうね。

    四国八十八ヶ所巡りか~。私もいつか挑戦してみたいな。だけど、今は富士山の

    撮影に集中、集中。

私 :僕はおしゃべりに夢中で、ビデオの電源を入れたままだったぞ。さあ、撮影再開。

   ア~ッ、日の出だ!富士山が薄紅色のヴェールを纏ったように見えるね。

   さあ、荘厳な日の出を拝んでから、また撮影を続けることにしようよ。

   
なぜiPadのシャッターが切れなかったのか?今でも不思議。もし私に多少の知識があ

れば、あのタブレットに朝霧の向こうで朝日に照らされる富士山の神々しい姿を映像

として残すことができたのにと思うと、返すがえすも残念でならない。
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足裏が熱くて寝つけない夜

2013-07-22 08:24:49 | 日記



和子:良子さん、お久しぶり!お元気?

良子:お陰さまで元気・・と言いたいところだけど、足の裏が火照って困っているの。

    夜、お布団に入るでしょ。すると、足の裏が熱くて、なかなか寝つけないのよ。

和子:あら!あなたも?実は私も同じ症状でしばらくの間、悩んでいたのよ。

    でも、原因が解ったので、ストレッチやいくつかのことを実行したら症状が改善

    したわ。

良子:私もやってみたいな。でも、なぜ、足の裏側が火照るのかしら?

和子:私の場合は体の冷えが原因だったの。

良子:体の冷え?それは変ね、冷え性になると手足の先端が冷たくなるんでしょ。

    それなのに、どうして足の裏が熱くなっちゃうの?

和子:「戻り冷え症」とか、「冷えのぼせ」といって、血流の停滞が原因らしいわ。

    体の冷えによって血液の流れが悪くなった結果、手足に熱が溜まってしまう

    場合があるんですって。血液の流れが悪いことを脳が察知すると、「血行を

    よくしなさい!」と命令を出して、血液が滞っている場所にもっともっと熱を

    集めようとするの。だから、足の裏の熱を取り去るために冷たい湿布を貼った

    り、氷水で冷やすのは血管を収縮させてしまうので、一番やってはいけないこ

    となのよ。

良子:へ~ェ、そうなんだ。ついつい足を冷やそうとばかりしてたわ。足の裏が熱くな

    ったら「冷えのぼせ」を疑う必要があるということね。今、あなたが実行して

    いる方法を教えてよ。私も試してみたいわ。

和子:寝る前に足伸ばしや、かかとの上げ下げを繰り返して血の巡りをよくするストレ

    ッチをしているの。座布団を二つ折にして足を高くするのも、足に滞った血液

    を心臓に戻す効果がありそうだから実行してるわ。マッサージや就寝前の足湯

    もいいわよ。

良子:血行を促すことは大切だと思うけど、もっと根本的な解消法はないのかしら?

和子:根本的に治療するには「冷えのぼせ」の原因を知ることが大切ね。考えられるの

    は3つ。ひとつ目は、自律神経が乱れて体温調節ができないため。ふたつ目は、

    手足の末端が冷えすぎて危険だと感知した脳が指令を出して、熱をその場所に

    集めるため。そしてみっつ目は、女性ホルモンのバランスが乱れて血の巡りが

    悪いため。これは更年期症状の代表格よね。だから、この症状で苦しんでいる

    のは女性が多いみたいだわ。

良子:そう言われれば、身の回りにいる男性からは足裏が熱いなんて聞かないわね。

和子:一般的に女性は、ふくらはぎの筋力が弱くて、血を押し戻すポンプの役割がうま

    く作動しないんですって。だからどうしても下半身、特にふくらはぎから足首、

    足の裏や足の指などがむくみがちになるわ。むくんでいる状態での血液はとて

    も汚れていたり、血管は詰まりがちだから、血の巡りが悪くなることで冷えが

    生じているのよ。冷たいものをがぶがぶ飲んだり、イライラすることもむくみ

    を起こす引き金になるから、気を付けるべきだわ。体へのストレスを与えない

    ようにすることも大切なの。

    原因をひとことで言えば「血行不良」だから、温めて血の流れを促進させ、血液

    をきれいにして末端の血管を広げてあげれば足の熱さは解消されるってことよ。

良子:ホルモンバランスを正常に保つ、冷え性体質を改善する、そして、ストレッチが解

    消法のキーワードなのね。体質改善の為にはどんなことに気を付ければいい

    の?

和子:まずは、食事。体温を上昇させる食べ物を意識して食べることよ。夏野菜は体を冷

    やすので、キュウリ、トマトなどは生でたくさん食べないでね。根菜類は体温を

    上げてくれるからお勧めよ。体温を上げる効果があるショウガを加熱して取り入

    れるのも有効だし、トウガラシの成分であるカプサイシンも血管をひろげてくれ

    るわ。

    ドロドロ血液をサラサラにするサポニン、血管を強くするフラボノイド、血行を

    促進するビタミンやミネラルを摂取することが大切なのよ。特にビタミンEを含む

    食物を積極的に取り入れるのが良いんだって。

    血糖値やコレステロール値、中性脂肪値を正常にすると、肝臓や腎臓などの働き

    もよくなるので「冷えのぼせ」の改善にはとても有効らしいわよ。

良子:とてもよくわかったわ。足の裏が熱いのは私の体が冷え症になっている可能性が

    あるということね。教えていただいた食事法やふくらはぎ強化の運動などを心が

    けるわ。

    足裏の熱さがなくなれば、寝つきが良くなるわね。ここのところの寝不足でお肌

    の状態が最悪なのよ。あなたのお蔭で、いつものハリとツヤが取り戻せそう

    だわ。

    どうもありがとう。
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♪ ぼくら B級人生 ♪

2013-07-15 08:00:40 | 日記



家庭菜園で収穫された3本のキュウリたち。お店で売られている真っ直ぐなA級スタイ

ルのキュウリに比べ、不揃いで不格好な規格外れのB級です。


Q次:♪ ビッ、ビッ、ぼくらB級人生、ビッ、ビッ、ビッ、A級になりたいな ♪

Q三:その歌、よく聴かされていたね。何の歌なの?

Q長:「ドリームハイ-2」という韓流テレビドラマの挿入歌だよ。だけど歌詞もメロ

   ディも少し違うぞ。

   ♪ ぼくら、B・B・B級人生、A級になりたくて~ ♪  

Q次:さすが、Q長は僕より早く生まれただけのことはあって、物知りだし歌もうまいね。

Q長:僕がまだ花の頃から、僕らの育ての親が口ずさみながら水まきをしていたので、

   いつの間にか覚えてしまったんだ。

Q三:「B級の僕たちはA級を夢見ちゃいけないの?」とかいう歌詞もあったようだけど、

   いかにも僕たちのことを歌っているようで、何だか身につまされて嫌だな。

Q長:花の頃から僕らを見ながら「B・B・B級人生」なんて歌うから、こんなB級のスタ

   イルになったと思うんだよ。「A・A・A級人生」と歌ってくれたら、A級のスタイル

   になれたんじゃないのかな。

Q次:仕方ないネ。僕らの育ての親は家庭菜園の初心者だから、お店に出せるような

   A級スタイルのキュウリを作るなんて、まだまだ無理だよ。

Q三:それにしても僕らは不揃いで不格好だねえ。どうして真っ直ぐに成長できないん

   だろう。味は良いはずなんだけどな。

Q長:特にQ三は極端に曲がっちゃったね。どうして「つ」の字みたいになったんだい。

Q三:よく言うよ。君が丸太ん棒のような大きな体で太陽の光を遮ったからじゃないか。

   僕はこうして曲がらなければ、太陽の光を受けることができなかったんだよ。

Q次:それだけじゃないだろう。僕は見ていたぞ。Q三は地面近くで実をつけたから、

   地面から離れようと慌てふためいて体を曲げていたじゃないか。そちらのほうが

   影響は大きいと思うぞ。

Q三:確かにそれは認めるよ。ただ、B級と言われようと、それなりの工夫をしながら成

   長していることを理解して欲しいな。

   でも、どうして僕たちの畑ではB級スタイルばかりなのかな?

Q長:プロの農家でもB級スタイルはいると思うぞ。たくさん栽培しているようだから、

   A級スタイルだけを集めて出荷しているんじゃないかな。栽培面積や栽培数の問題

   だと思うよ。ここは3苗しか植えていない家庭菜園だから、B級スタイルが目につ

   くんだよ。でも、ちゃんと食べてくれるから、それでいいじゃないか。

Q次:そうだね。「瑞々しくておいしいね」と、喜んでもらえればいいのであって、スタ

   イルなんて気にする必要はないよ。

Q三:おや、育ての親がやって来たよ。あっ、僕たちの写真を撮った!

Q長:B級スタイルの僕たちを見て、ブログのネタにするつもりじゃないのかな。

   僕らがA級スタイルだったら大したネタにはならないだろうけどね。

Q次:ということは、僕らが記事になって残るということだね。A級スタイルだったら、

   ただ食べられるだけだから、僕たちは特別のキュウリになったってことかな?

Q三:A級を超えたB級だ。「B級人生、最高!」。皆で歌おうよ。


♪ ぼくら、B・B・B級人生、A級じゃなくていい ♪

♪ ぼくら、価値ある個性派さ ♪

♪ 不格好でも構わない ぼくら、陽気なB級だい ♪
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おさわがせ天狗

2013-07-08 08:09:24 | 日記


 ここは動物村。古い祠(ほこら)の後ろ側にある洞窟に、天狗らしきものが住み着い

ているから、近づいてはいけないとの知らせがありました。住民たちは不測の事態に備

えて自警団を結成し、祠に通じる道の立ち番をしています。


ミミ :あの祠にはレイニーからもらった帽子とマフラー、それに光る石が隠してある

     んだけど、取りに行けなくなっちゃったね。

ポン吉:僕たちの遊び場だったのに残念だな。だけど、天狗って何なの?

コン太:長老の話によると、体が大きくて恐い顔をしているらしいよ。姿をはっきりと

     見た住民はいないんだって。何をしでかすかわからないから、近づくなって

     ことだよ。

ポン吉:見に行こうか。僕らは他の人には見えないものまで見えるんだぜ。怖くないよ。

コン太:確かにカッパの川太郎や水の精のレイニーは僕たちにしか見えないんだから

     ね。

ミミ :ちょっと怖いけど、正体が判れば村の皆も安心するよね。行ってみましょう。

     正面の道は自警団がいてダメだから、3人で作った笹トンネルの隠れ道を使っ

     て近づくのがいいと思うわ。


 こうして仲良し3人組は自警団の目が届かない隠れ道を通って前進しました。祠の見

える場所に近づいたとき、祠の前に大きな体の天狗らしき者の後ろ姿が見えました。

すると3人組に気付いたのか、その者が突然振り向いたではありませんか。その顔は真

っ赤で口は大きく、鼻も異常に長く、大きな眼が金色に光っているのです。あまりの恐

ろしさに、三人組は思わず「ギャ~」と叫んでしまいました。


天狗 :そこにおるのは何者だ。出てこないとひねり潰すぞ!おとなしく出てこい。

ポン吉:お願いです。どうか僕たちを食べないでください。

コン太:あなたが誰なのかを知りたくて来ただけですから。

ミミ :村の皆が怖がっています。何のためにこの動物村に来たのか、教えてください。

天狗 :おや?お前たちとは言葉が通じるんじゃな。ワシの耳は遠くの声も聞こえるが、

     ここに住む者たちの言葉が理解できずに困っておったところじゃ。

     言葉が通じるものがいて助かったぞ。

ポン吉:あなたは誰ですか?ここで何をするつもりですか?いつまでいるのですか?

天狗 :いっぱい質問がきたな。ワシは天狗じゃ。ワシは権現様の使いで人間界に行く

     ところじゃったが、長旅の疲れでついつい、うたた寝をしたらしい。

     気付いたら、ここにいたんじゃ。どうやら道に迷ってしまったようじゃな。

     この祠の近くに人間の住む街へつながる道があるはずじゃが、一緒に探して

     くれんかのう。

コン太:本当に天狗さんなんですね。驚いた!まさか天狗さんに会えるとは思わなかっ

     た。

ミミ :天狗さんは体が大きくて恐い顔をしているから、村の皆が怖がるのも無理ないわ。

     だけど、こうしてお話をしてると怖くなくなってきた。私、一緒に探してあげるわ。

天狗 :オヤオヤ、皆を怖がらせてしまったのか。それは悪いことをしたのう。

     さて、この祠の近くに人間の住む街へ通じる入口があるはずなのじゃがな。


 天狗と3人組は祠の周囲を探しましたが、入口らしきものは見つかりません。コン太は

祠の中に隠しておいた3人組の宝物を、この際、持って帰ろうと思い、祠の扉を開きまし

た。


コン太:僕たちの宝物はちゃんとあったね。この光る石はいつもきれいだな。

     あれれ!石の光が祠にあたった瞬間に、祠がガタガタと揺れたよ。

ミミ :ウン、揺れたね。もっと照らそうよ。そうだ、私のマフラーを銀色にすれば強

     く反射して祠に光がいっぱい届くわ。銀色にな~れ。ヨシッ!銀色だ。光を

     当ててみて。


 コン太の石に当たって反射した光は、次に銀色のマフラーにぶつかり、更に強く反射

して祠を明るく照らしました。すると、祠の扉に大きな鍵穴が浮き出てきたではありま

せんか。


ポン吉:鍵穴だよ。僕の帽子を鍵穴の形にしてはめてみよう。

     帽子よ、鍵穴の形にな~れ!ヤッタ~!鍵の形になった。鍵穴にはめてみる

     ぞ。ほら、ぴったりの大きさだ。


鍵の形になった帽子を穴にはめた途端に、祠全体がガタガタと横に動き始めました。

そして祠があった場所に、大きな穴が現れました。どうやら階段もついているようです。


天狗 :これがワシの進む道に違いない。君たちに会えてよかった。これで目的地へ行

     くことができる。君たちには心から感謝するぞ。この動物村が平和であるこ

     とを祈っておるからのう。村の皆に「天狗は立ち去った。怖がらせてすまな

     かった。」と伝えてくれ。それではさらばじゃ。元気で暮らせよ。


 天狗が姿を消すと祠は再びガタガタと動き、元の位置に戻りました。あっけにとられ

ていた3人組がふと気付くと、それぞれの手には元の姿に戻った宝物が握られていまし

た。


コン太:僕たちの宝物が天狗さんの役に立ったんだね。

     誰にも信じて貰えないだろうけど。

ポン吉:宝物をここに隠しておいたのが良かったんだよ。またここに隠しておこうね。

ミミ :早く村の皆に、天狗さんがいなくなったことを知らせましょうよ。


 3人組は天狗がいなくなったことを、村の皆にどうやって説明したらいいのかを話し合

いながら、自警団が立っている方向に意気揚々と歩いて行きました。

またしても不思議な体験をした3人組でした。
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「郡上おどり in 青山」は今年も盛況

2013-07-01 08:30:23 | 日記





 都会の真っ只中の一角に、すっかりお馴染みとなった三味線や太鼓と唄が流れ始め

る。2013年6月末、東京の青山・秩父宮ラグビー場の駐車場で「郡上おどり」が開催

された。手狭になった梅窓院の境内から会場をこちらに移しても、やはり人が溢れか

えっている。

20周年を迎えた「郡上おどりin青山」はますます知名度も上がり、大盛況だ。

超ベテランから初心者までが「主役は私!」とばかりに一心不乱に舞い踊り、下駄の音

が効果音となって鳴り響く。いつの間にか個々の人間が大きな渦の中に溶け込んでい

く。あまりの混雑に「勢いのついた下駄で足を踏まれては一大事!」と思い、渦の外へ

出た。


そばにいた見知らぬオジ様が感慨深げに語りかけてきた。

オジ様:いや~、ふるさとがある人は幸せだな~。まったく羨ましいね。僕は東京生ま

     れの東京育ち。<江戸っ子だ!>と粋がってきたんだけど、この光景を見て

     いると僕もふるさとが欲しくなってきた。

わたし:東京が<ふるさと>では?

オジ様:ふるさとっていう感じじゃないんだよね。あなたのふるさとは?

わたし:本州の西の端、山口県です。

オジ様:エッ、長州ですか。僕は日本中、ほとんど全ての都道府県に行ったけど、長州

     だけはまだ足を踏み入れたことがないんですよ。歴史好きな僕としては松下

     村塾などを訪れてみたいんですけどね。チャンスがなくて。

わたし:それは残念。是非、お出かけになってみてください。ところで、ふるさとは生

     まれ育った場所を指すのだと単純に思っていましたが、間違っていましたか

     しら?

オジ様:僕はふるさとという言葉に、出身地とは違うイメージを抱いているんですよ。

わたし:ハァ・・・そういえば<心のふるさと>っていうのがありますよね。

     今、思ったのですが、ここにいる人の中には郡上の住人や郡上出身者がいら

     っしゃるでしょうね。でも、ほとんどの人はそうじゃないはず。もしかした

     ら、郡上おどりがきっかけとなって郡上を<心のふるさと>だと感じている
   
     人もいらっしゃるのではないでしょうか。私は夫の転勤で岐阜県に住んだこ

     とがあります。その時から、郡上に何度も通っていますが、郡上の街には人

     を惹きつける魅力があるんです。特に郡上おどりは人を魅了する要素をたく

     さん持っているような気がしています。

オジ様:ホゥ、どんな要素ですか?

わたし:もともと単純な振り付けですが、ひとつの曲をかなり長く演奏することで輪を

     2~3周するうちに見よう見まねで踊りが身につき、そのうち自信がついて

     くる。約10曲ある踊りを、ひとつひとつマスターするのが楽しい。歌詞がお

     もしろい。曲のテンポにバラエティーがある。たったひとりでも飛び入りで

     きる。一旦、飛び入りしたら、いつの間にかグループの一員として溶け込ん

     でいる自分に気付く。浴衣に下駄というのが定番ですが、どんな格好でも文

     句を言われることはない。何よりも、郡上と郡上おどりを愛してやまない地

     元の人々が温かく受け入れてくださる。自由なのにいつの間にか輪の形成者

     の一人になっている喜び。こんなところですかしら。輪は日本人が大好きで

     尊い和ですものね。ちょっと飛躍し過ぎましたか?

     <心のふるさと>を持つのも素敵で幸せなことだと思うんですよ。

オジ様:イヤ~、皆さんが楽しそうに踊っている理由が判ったような気がします。


と、言いながら手を差し出されたので握手をしてお別れし、私は再び踊りの輪の中に。

最後の曲「まつさか」終了後、踊り惚けていた夫と<ふるさと談義>に花が咲いた。


私:さっき、初対面のオジ様とふるさとの話をしたのよ。あなたも東京生まれの東京

   育ちだけど、あなたのふるさとは東京なのかしら?

夫:イヤ、「東京出身です」と言うことがあっても、東京をふるさとだとは思ってい

   ないな。

私:やっぱりそうなんだ。どうしてなの?

夫:僕が小学生の時、通学路に長い黒塀があってね。毎朝、そこから三味線の音が聞こ

   えてきたんだよ。きっと見習いの芸妓さんが練習をしていたんだと思うけど、

   幼い頃の印象として残っているのがこれだけ。ところが実家に帰っても、昔の面

   影は全く無い。あの時の黒塀もとっくの昔にビルになった。そんな場所をふるさ

   ととは呼べないね。

私:フ~ン。私の実家周辺も一応、開発されて昔とは姿が変わったけど、やっぱりあそ

   こが私のふるさとだと確信を持って言えるわよ。この差は何なの?

夫:<ふるさと>という唱歌があるよね。「うさぎ追いし かの山 小鮒釣りし かの

   川」あれだよ。あれが頭の中に染み込んで、ふるさとというのはそういうもんだ

   と・・・

私:さっきのオジ様も同じなのかな?山や川がなくちゃダメ?

夫:山や川のある場所で遊んだ思い出が欲しいと、心の奥で望んでいるのかもね。

私:地方出身の私としてはあなたの気持ちを理解するのが難しいな。「ふるさとはどこ

   ですか?」と聞かれて、即座に生まれ育った場所の地名を挙げる人の割合が、ど

   のくらいなのかを知りたくなってきたわ。

   <ふるさと>って不思議な言葉に思えてきちゃった。
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