ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

日本にも氷河がある!

2012-11-29 08:45:22 | 日記


永 :先日、カナダのコロンビア大氷原の映像がテレビで流れて、20数年もの昔、この場

   所で氷河の上を自分の足で歩いた時の感動を思い出しましたよ。

美井:私も行ったことがあります。良い思い出になっています。ところで、日本にも氷河

   が現存していることを知っていますか?

永 :えっ?そうなんですか?万年雪とか○○雪渓という言葉はありますが、○○氷河は
聞い

   たことがありません。地図にも載ってないと思いますよ。日本の氷河といえば、

   2万年前の氷河期の氷で削り取られた中央アルプス駒ヶ根の千畳敷カール等が有名で

   すね。この知識から日本では氷河は過去のものだと思っていました。

   どこにあるのですか?ついでになぜそれが氷河だといえるのか、その理由を知ってい

   たら教えてください。

美井:私は一年前の読売新聞の記事を思い出して、2011年11月15日に発表された富山県の

   立山カルデラ砂防博物館が出した報告資料を見直しました。そこには「立山連峰の

   主峰・雄山で1ヶ所と剱岳に2ヶ所の計3ヶ所で氷河と見られる氷の塊を確認した」

   と写真入りで詳細な調査結果が出ていました。これが今年4月になって日本初の氷河

   と認定されたんです。日本で初めて発見された氷河ですよ。各氷河の名称は「御前沢

   氷河」「小窓氷河」「三ノ窓氷河」と決ったそうです。

永 :そうですか。それまで氷河として認定されたものは無かったのですね。私が知らなく

   て当然だったな。それではその内容を教えてください。でもその前に氷河の定義から

   話していただけますか。

美井:通常、標高の高い山や極地で、川のように上流から下流へ移動している巨大な氷の塊

   のことを「氷河」と言いますが、学術的に氷河と認められるには、厚い氷体を持ち、

   常に動いていることが条件になります。動いていれば必ず亀裂が生まれます。それが

   クレパスですね。

永 :なるほど。氷河にクレパスがある理由は氷河が動いているからなのですね。納得です。

美井:氷河の根拠ですが、砂防博物館が平成21年から剱岳や立山周辺の3つの雪渓で調査

   を開始しました。そして、氷の厚さを測るアイスレーダー観測で約25メートルの雪

   の下に、厚さ30メートル以上の氷を確認しました。さらに、GPS(衛星利用測位

   システム)を使い1カ月に30センチほど動いていることを突き止めたんです。

   この結果をまとめた論文が日本雪氷学会に提出されて、氷河として認められたんです。

永 :分かりました。でもなぜ、今ごろ見つかったんですか?もっと早く分かってもいいと

   思うけど。

美井:氷河を確認した砂防博物館の福井幸太郎学芸員は、「小型の観測機器が開発されたお

   かげ」と言ってます。氷の厚さを測るアイスレーダーやGPS計測器が、雪渓に持ち

   込める大きさになったのは、最近のことなんだそうです。戦前に登山家としても有名

   な京都大学の今西錦司博士が立山に入り、雪渓が氷河である可能性を書き記している

   そうですが、当時は確認する方法がなかったんです。

   科学技術の進歩が氷河の発見を可能にしたのですね。また、雪渓は断崖絶壁の向こう

   側にありますから、容易に人を寄せ付けない。山岳ガイドがいなければ行けない。

   これも要因のひとつでしょうね。

永 :雪渓のある場所は厳しい環境だから、近づいて測定するには機器の小型化が不可欠だ

   ったということですね。納得です。

   そも、なぜ立山なんですか?なぜ北海道や富士山には氷河がないのですか?

美井:氷河ができる条件は、「気温が低いこと」と「夏に解けてなくならないほどたっぷり

   雪が降ること」だそうです。日本で最も気温が低い場所は富士山頂ですが、降雪量が

   足りません。一方、北海道は、2,500メートルを超えるような高い山がなく、降雪量

   も多くないので、氷河はありません。両方の条件を満たすのが、豪雪地帯にある立山

   だったわけです。調査地点のひとつである剱岳の三ノ窓雪渓では、厚さ30メートル

   の氷河が年に4メートルのスピードで下流に向かって動いていると推定されています。

永 :ということは、立山が氷河の南限になるのかな。

美井: 極東アジアでは、氷河形成地の南限がカムチャツカ半島とされており、「立山の氷

    河」が発見されたことで、富山が南限となりました。

永 : 面白いお話を聞かせていただきました。日本にも氷河があるとは思いもよりません

   でした。

   氷河の氷をボーリングして、閉じ込められている数百年分の大気を分析すれば、立山

   連峰の氷河分布の全貌や環境変化の解明につながるでしょうね。

   調査の進展が楽しみです。
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焼き芋をつくろう!

2012-11-26 08:09:10 | 日記


山奥の一軒家で自給自足に近い生活をしている私の所へ、東京のマンションに住む弟

家族が久し振りにやって来た。裏の雑木林から風で飛んで来る、たくさんの落ち葉を

集めて燃やしている時のことだった。



甥:おじさん、こんにちは。焚き火なんて珍しいな。もっと、もっと燃やしてもいい?

私:ああ、そこらあたりにある落ち葉をどんどん集めて燃やしてくれ。

甥:わ~い、落ち葉焚きだ。ヨシッ、いっぱい集めるぞ!

 ♪ かきねの かきねの まがりかど  たきびだ たきびだ おちばたき 

   あたろうか あたろうよ      きたかぜ ぴぃぷぅふいている ♪

弟:こんな煙を見ると、焼き芋でも作りたくなるな。

私:芋なら、とっくに入れてある。しかも、俺の畑で掘ってきたばかりのさつま芋だぞ。

甥:わぁ、うれしい!

私:焼き芋を作るのは簡単だ。アルミホイルに包んで焚き火につっこむだけでいい。

弟:そういえば昔、モミ殻で芋を焼いたよなぁ。

私:うん、そんなこともあったな。この季節の焼き芋は落ち葉焚きで作るのが最高だよ。

  なにしろ、ご覧のとおり、落ち葉は捨てるほどあるからね。

  焼き芋のコツは火加減にあるんだ。焼くことによって、さつま芋に含まれるでんぷん

  が分解され、甘い麦芽糖に変わるんだけど、最適温度は65~75度。温度を一気に

  上げずに、15分ほどかけてゆっくりと上げていくことが重要なのだ。

  ほら、できたよ。

甥:うまい!こんなにおいしくできるのなら、僕、毎日でも焚き火をしたいな。

弟:でも、残念なことに、僕たちが住む街では焚き火が禁止されているんだよ。

私:だったら、ベランダでもできる焼き芋の作り方を教えてあげよう。

  それも、本格的な石焼き芋だ!ちょっと時間がかかるけどね。

甥:やったぁ、  ♪石や~きいも、やきいも♪   だね。

私:早速、始めるぞ。用意するのは七輪と鉄鍋。鍋の底に石を敷き、芋を置いて焼く

  だけだ。コツといえば、15分ごとにひっくり返すことくらいだな。

甥:なんで石を敷くの?

私:石を使うから石焼き芋。石の遠赤外線効果で、じっくり加熱できるうえ、皮のこげ

  過ぎを防ぐんだよ。焼き芋用の石はね、関東では湘南の大磯産、関西では那智黒石

  が有名だよ。どちらも粘りのある黒い石だ。僕の好みの芋は鳴門金時。

―――――蓋をして待つこと一時間、石焼き芋が完成した―――――

甥:う、うま~っ!これ、さっきと同じ芋?全然、味が違うよ。甘いな~。

弟:こりゃ、驚いた。

  うちでも七輪を買って、来週の日曜日にやってみようか。

甥:うわ~、嬉しいな。パパ、約束だよ、忘れないでね。




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着いた・拝んだ・写した・帰った

2012-11-22 07:48:21 | 日記



夫:お~い!これから紅葉を見に行くぞ。早く支度してくれ。

妻:何よ。お昼ご飯を食べたばかりで、もう1時近くなのよ。どこまで行くつもりなの?

夫:家から約2時間くらいかかる場所。

妻:え~っ、だったら着くのは3時じゃないの。今は日没が早くなってきたから、4時半には

  暗くなり始めるのよ。そんなに慌ただしいのはいやだな。

夫:それは十分承知だよ。でも、今年はまだ紅葉の名所に行っていないし、今日は快晴で

  風もないから絶好のチャンスだと思うよ。

  卓上のフォトスタンドの写真を入れ替えようとして、今年の紅葉の写真が無いことに気

  付いたんだ。付き合ってくれないかな。

妻:私もカメラ女子の一人だし、最新のコンパクトデジカメを買ったばかりだから、写しに

  行きたい気持ちはあるけど、この時間からではね~。

夫:(カメラ女子って若い女性を指すのだと思うけど・・・、まあ、聞き流しておこう。)

  そうだよ、カメラ女子としてはシャッターチャンスには貪欲でなければいけないんじゃ

  ないかい。お気に入りの1枚は撮影場所にいる時間の長さではなく、ピーンと閃く構図

  を見つけることが大切だものね。きっと、いいシャッターチャンスが待っているよ。

妻:それじゃあ、気分転換をするつもりで付き合うわ。運転は私がするね。
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慌ただしく出かける準備をした二人は紅葉の名所として有名なお寺に向かいました。

交通事情に恵まれて3時前には目的のお寺に到着。趣きがある門のそばのイチョウと

モミジが素晴らしい色付きで、青空に映えています。階段にはイチョウの黄色い葉がじゅ

うたんのように散り落ちて、いい風情です。
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妻:今年の紅葉は少し遅いのかな?最高の色付きになるにはもう少し時間がかかるよう

  ね。さてと、どのアングルで写そうかな?

夫:私は一眼レフで写すよ。カメラ女子とカメラおやじの腕比べだ。この近所には紅葉で

  有名なお寺がいくつかある。だから一ヶ所のお寺にいる時間は20分ぐらいにしよう。

  陽が落ちる前に何ヶ所巡ることができるかな。

妻:わかった。集中して写真を撮るから声をかけないでよ。お寺に来たんだから、まずは

  お賽銭を入れて拝まなければいけないし、慌ただしい撮影会になるわね。

夫:おい、このポイントはいいぞ!モミジの葉に当たる光線の具合が最高だし、後ろにあ

  る寺の屋根とのバランスも絶妙だ。この時間帯だから見られる色彩じゃないのかな。

  午後に出てきてよかった。

妻:思いつきで出かけてきた言い訳にしか聞こえないけど、う~ん、いい感じね。
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二人はそれぞれがお気に入りの構図を見つけてシャッターを切りました。そしてさらに

2ヶ所のお寺を廻って、最後のお寺に到着しました。
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夫:暗くなってきたから、今日の撮影会は終わりにしよう。いい写真が撮れたかい?

妻:もう、こんな慌ただしい撮影は嫌よ。帰る前に今日の印象をひとこと言わせて。

  着いた、拝んだ、写した、そして帰った。

  まさにこんな感じで、お寺の風情を楽しむ余裕が全然なかったわね。

夫:朝から来ればもっとゆっくりできて、撮影のポイントをじっくりと探せたのにね。

  これから、また仕事が忙しくなるので、今年の紅葉狩りはこれが最初で最後だと思

  って許してくれ。

妻:はい、はい。帰ってからこの写真を整理しながら、もう一度紅葉狩りを楽しむことに

  するわ。
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お姉さま事件です! <Part‐1>

2012-11-19 08:17:01 | 日記


第1話 → 大量の抜け毛?

 妹:お姉さま事件です!

 姉:お風呂場で大きな声がしたから、何事かと思って飛んで来たけど、どうしたの?

 妹:頭を洗っていたら、髪の毛がバサッと抜け落ちてしまったの。どうしよう。

 姉:びっくりさせないでよ!かつらが落ちただけじゃないの。かつらを着けたまま

   頭を洗うなんて、全く困った子ね。

 妹:そっか!文化祭用のかつらを着けていたことをすっかり忘れてた。

   だってこのかつら、とても軽いんだもん。まずい、まずい。


第2話 → お化け

 妹:お姉さま事件です!この写真を見てよ。私の後ろにお化けが写ってる。

   幽霊かしら?恐い!

 姉:何を言ってるの!それって、髪を洗ってお風呂から出てきた私でしょ!怒るわよ!

 妹:そっか!どうりで、なんとなく見たことがある顔をしたお化けだと思った。

   まずい、まずい。


第3話 → 傷害事件

 妹 :お姉さま事件です!包丁で指先を切って、いっぱい血が出た~。

    これは傷害事件だから、警察に届けなければいけないのよね。

 姉:何を言ってるの、自分で傷を付けた場合は事件にならないの。単なる怪我よ。

 妹:そっか!警察の事情聴取に備えて、話す順序を考えておこうと思ったのにな。

   ちょっと、サスペンスドラマの見過ぎだったか。まずい、まずい。


第4話 → ホームに穴?

 妹:お姉さま事件です!電車と駅のホームの間に大きな穴が空いています。

   怖くて降りられないよ~。もしかして、ホームが移動したのかな?

 姉:何を言ってるの!今、車内アナウンスで「電車とホームとの間に大きな隙間が

   空いているから注意して下さい」と言ってたでしょ。

 妹:私、ウツラウツラとしてたから聞こえなかった。

 姉:この駅はホームが大きくカーブしているから仕方ないのよ

 妹:そっか!それなら、電車がホームに合わせて曲がれば、ホームとの間にこんな

   隙間ができないのにね。誰か、そんな電車を作ってくれないかな。

 姉:くだらないことを言っていないで、サッサと降りるわよ。

 妹:うん、わかった。でも、お願いだから、手をつないで降りてちょうだい。

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老人と少女

2012-11-15 08:04:05 | 日記


月に2度ほど山奥のダム事務所に通っている私は、いつものバス停でバスを待っていま

した。やがて時刻通りにやって来たのは、なんと懐かしのボンネットバス。

いつものノンステップバスではなく、今どき珍しい古い型のバスが走って来たことに

驚きつつ乗り込み、一番奥の席に座りました。

博物館に収まっていそうなバスに遭遇した不思議さに戸惑いながら、車内を見まわすと、

私以外の乗客は3本立てのきれいな胡蝶蘭を大切そうに抱えたやせ気味の老人と、その

向かい側に座っている学校帰りと思われる少女の二人だけでした。

少女は老人が持っている胡蝶蘭にすっかり心を奪われている様子で、わき目も振らず、

じっと見つめています。

やがて、あるバス停に着いた時、老人は立ち上がり、持っていた胡蝶蘭を少女の膝の上

にそっと置いたのです。


老人:お嬢さん、この花をずいぶん気に入って下さったようですね。よろしかったら差

   し上げますので、お持ち帰りください。私の家内がここにいたら、やはり同じこ

   とをしたと思いますよ。家内には私から話しておきましょう。

   きっと喜んでくれると思います。


少女は驚いて、大きな目を見開いたまま老人を見つめて言いました。


少女:おじいさん、ありがとうございます。3日前に大好きなおばあちゃんが死んでしま

   いました。おばあちゃんは胡蝶蘭が大好きで、とても大切に育てていたのですが、

   今朝起きて見るとその胡蝶蘭が枯れていたのです。

   こんな田舎では胡蝶蘭はなかなか手に入りません。おじいさんが持っているような

   胡蝶蘭はどこで手に入るのかを聞きたくて、じっと見ながら、いつ声をかけようか

   と考えていたところでした。おばあちゃんの写真が飾ってある仏壇の横に置いて、

   大切に育てます。


 胡蝶蘭を胸元にしっかりと抱えた少女は立ちあがって、おじぎをしながらバスを降りて

行く老人を見送っています。私は何気なく、老人の進む方向を目で追っていました。

彼はコスモスとワレモコウが風にユラユラと揺れる小道の間をゆっくりと歩き、やがて消

え去ってしまいました。

バス停の表示に眼を移すと、そこには「たまゆら霊園前」と書かれていました。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<胡蝶蘭の花言葉>

 花言葉は「幸福が飛んでくる」です。値段は様々ですが、何となく高級品のイメージが

ありますね。贈られた人は花言葉よりも、この花の持つ高級感と優雅な美しさに魅了され

てしまうようです。


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