農林水産省が次世代に継承したい「うちの郷土料理~次世代に伝えたい大切な味~」として
各都道府県から約30品目が選抜され、全国計1,365品目がデータベース化されて紹介されま
した。茨城県からは30品目が選抜されています。この30品目をこれまでに県内5地域(県北、
県央、県南、県西、鹿行)に分類して紹介してきましたが、茨城県の郷土料理がこの30品目
で収まるはずもなく、選抜漏れした郷土料理が各地区にまだまだ多くあります。
今回は「番外編」として、この選抜漏れした中から、私見で選りすぐりの郷土料理を紹介し
ます。
1.古河の鮒甘露煮
古河市の名産品・鮒甘露煮は文化庁主催「2023年度「100年フード」に認定された逸品
です。県内食品の認定は4件目で「伝統部門~江戸時代から続く郷土の料理」の部門から
は初です。100年フードは、世代を超えて地域で受け継がれてきた食文化の継承を目的に、
文化庁が2021年度から公募で認定しています。県内では「ほしいも」「牛久ワイン」
「栗菓子文化」が認定されています。「ほしいも」は農林水産省の選抜30品目にも入っ
ていますが、この「鮒甘露煮」は選抜から漏れました。なぜなのでしょうね!
古河は江戸時代日光街道の宿場町で、現在の渡良瀬遊水地で捕れた鮒を煮付けにしてい
ましたが、そこから加工して旅人をもてなすように工夫したのが甘露煮の起源とされて
います。一度素焼きしてから煮詰める伝統的な製法で骨まで柔らかいのが特徴です。加
盟店文化庁認定のロゴマーク包装紙や100歳を超えた市民に贈呈するなどのPR活動をし
ています。是非、ご賞味あれ!
2.アンコウ鍋
あんこう料理として「あんこうの共酢和え」が選抜されました。でもあんこう料理には
他に、「あんこう鍋」「あんこうどぶ汁」「あん肝」など多様な料理があります。共酢
和えは共酢(あんこうの肝を合わせた酢味噌。肝のことを「とも」ともいうことが由来)
につけて食べる料理ですが、どぶ汁はあんこうと野菜から出る水分だけで煮込む、野趣
溢れる濃厚な風味の料理です。そして、あん肝は蒸した肝を、さっぱりとしたポン酢で
食べます。ここで紹介したいのはアンコウ鍋です。どぶ汁がベースになっているため、
北茨城市のあんこう鍋は味噌仕立てです。どぶ汁同様のあん肝が溶け込んだ濃厚なスー
プ、あんこうの七つ道具、そして季節の野菜や豆腐などもふんだんに入った鍋で、各地
の鍋グランプリで金賞を受賞するなど、全国に認められている逸品です。他の地方では
塩や醤油ベースのあんこう鍋もあります。「東のあんこう、西のふぐ」と並び称される
美味食材「あんこう」。茨城県内各地で底びき網漁船によって漁獲されており、特に平
潟、大津、久慈、那珂湊漁港で多く水揚げされています。常磐沖で獲れるあんこうは
「常磐もの」として市場で高い評価を受けています。7月から8月の禁漁期を除いて一年
中水揚げされ、一番の旬は水温が下がって肝が肥大化する冬場の11月から3月頃。肥大
化した肝には脂がのって、味わいも深まります。今では「大洗のあんこう鍋」は多くの
人が知る郷土料理として定着しており、これも選んで頂きたかったな。
3.奥久慈の「しゃも料理」
奥久慈しゃもには「育ちのよさは味に出る」という言葉がしっくりきます。奥久慈大子
町の大自然の中、穀物や青菜などを与えられ、充分な運動をしつつ、悠々と育つのです。
ブロイラーは飼育期間約50日前後で3キログラムまで成長。一方、奥久慈しゃもは、オ
スの場合、120日で2.6キログラム、メスにいたっては150日で2.1キログラム程度なので
す。 地鶏と呼ばれるものは、全国に百種類以上いますが、ブロイラーとのかけ合わせが
ほとんど。しかも飼育期間も大抵80日以内で100日を超えるものは奥久慈しゃもや比内
鶏など数えるほどしかいません。 もともと、しゃもは、気性が荒く、群れで飼うのは難
しい種ですが、肉、卵ともに味が優れていることから、茨城県養鶏試験場が改良して、
奥久慈しゃもが誕生しました。肉質は低脂肪で歯ごたえ抜群。ブロイラーの水っぽい弾
力のない肉と違い、締りがあり、深い味わいが特徴です。奥久慈しゃもは、名古屋コー
チンやロードアイランドレッドとの交配によって生まれた品種で、肉質が緻密でしっか
りとしており、ジューシーで香りが良いのが特徴です。また、脂肪分が少なく、歯ごた
えがあるため、非常に高い評価を受けています。奥久慈地域は自然豊かで、寒暖の差が
大きい気候がしゃもの飼育に適しています。茨城県ではしゃも鍋やしゃも焼き、親子丼
など、さまざまなしゃも料理が楽しめます。特にしゃも鍋は、しゃもの旨味を最大限に
引き出す料理として人気があります。選抜してほしい逸品です。
4.常陸牛のステーキ
常陸牛の歴史は、天保3年(1832年)にまで遡ります。江戸時代末期の水戸藩主徳川斉昭
は、牛馬を放牧するために「桜野牧」を作りました。「桜野牧」で飼われていた黒牛が、
常陸牛のはじまりと言われているのです。そして、時代を重ねて、昭和51年7月に茨城
県産牛銘柄確立推進協議会が発足し、本県の優秀な黒毛和種を『常陸牛』と命名、昭和52
年には現在の茨城県常陸牛振興協会が設立されました。この協会は「常陸牛」に定義を定
めました。
定義:「常陸牛とは,指定生産者が茨城県内で最も長く飼育した黒毛和牛の内,(社)日本
食肉格付協会の枝肉取引規格が歩留A等級又はB等級かつ肉質等級が5等級と4等級
のもので,茨城県常陸牛振興協会が認定したものとする」
常陸牛は、厳選された飼料と飼育環境で約30ヶ月間丁寧に育てられた黒毛和種です。肉質等
級がA・Bの4と5等級にランク付けされており、脂肪と筋繊維がバランス良く混ざった極上の
霜降り肉が特徴です。そして食感としては柔らかさと風味が自慢です。特に雌牛の肉質が柔
らかく、口の中でとろけるような食感とジューシーで甘みのある味わいが評価されています。
これらの要素が組み合わさり、常陸牛のステーキは高い評価を受け、全国的に有名になって
います。選抜されなかった理由が分からない。
5.納豆餅
納豆餅は、茨城県以外でも岩手県、山形県、新潟県、京都府などで食べられている納豆を用い
た餅料理です。どの地域でも正月の祝い料理や地域の人々が集まる祝いの場でふるまわれるこ
とが多いです。納豆餅の作り方は地域によって異なりますが、茨城県では、「餅に納豆を絡め
て食べる」のが一般的です。納豆は、年末に作られ、正月に食べる風習が残っている地域もあ
ります。納豆餅が生まれた背景には、納豆の保存性と栄養価の高さが関係しています。納豆は
発酵食品であり、保存がきくため、冬の間の貴重なタンパク源として利用されてきました。
また、餅も保存がきくため、これらを組み合わせた納豆餅は、冬の間の栄養補給に適した料理
として発展してきました。納豆餅は、地域ごとに異なる風味や作り方があり、茨城県の食文化
を象徴する逸品です。茨城県だけの品目ではないのですが、選ばれてもいいと思うのです。
6.しらす丼
茨城県沖は、親潮と黒潮がぶつかる好漁場であり、プランクトンが豊富なため、しらすの漁獲
量が多いです。「しらす」は主に「カタクチイワシ」や「マイワシ」などイワシ類の稚魚です。
育つにしたがって、鱗ができて、イワシの形に変わっていきます。獲れた時は半透明なのに茹
でると白くなるから白子(しらす)と言われています。茨城県では好漁場から、新鮮なしらす
が手に入りやすく、地元の食材として親しまれています。茨城県では、漁師たちが自信を持っ
て一網で獲ったしらすを低温で維持管理し、新鮮な状態で水揚げしています。このような漁業
の伝統が、しらす丼の普及に寄与しています。特に、茨城県大洗町の名物「生シラス」は、す
ぐに鮮度が劣化し、漁当日に食べなければならない産地ならでは味わいです。大洗ではごはん
の上に生しらすをたっぷりと山のように乗せた「生しらす丼」の形で提供されていることが多
いです。茨城県の漁港や市場では、新鮮なしらすを使った料理が観光客に人気です。
これも選んでほしかったです。
今回は農林水産省が次世代に継承したい「うちの郷土料理~次世代に伝えたい大切な味~」で、選
抜漏れした郷土料理の中からその一部を紹介しました。まだまだオラが茨城県には隠れた郷土料理
がいっぱいあります。これからは私の知らない郷土料理を掘り起こして、6品目程度にまとまった
ら紹介します。
茨城県に遊びに来た時は是非ご賞味あれ!