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ノブさんは前回投稿した「異国情緒を感じて歩く、横浜・山手西洋館めぐり」を終え
た後、仲間と別れて山下公園に向かいました。目的は係留されている「日本郵船・
氷川丸」の見学です。戦前にシアトル航路の豪華貨客船として活躍した氷川丸は、山
手地区での西洋館時代の華やかな舞踏会外交と重なり、海の氷川丸・陸の西洋館と比
較されるものと思えたのです。
<氷川丸について>
「氷川丸は、1930年に建造された日本を代表する豪華客船です。戦前にシアトル航路
の貨客船として活躍した後、病院船、引揚船、そして戦後再びシアトル航路に復帰。
1961(昭和36)年5月、この地に係留されました。氷川丸が竣工した当時は、豪華客船
の建造が続き、客船文化が花開いた時代でした。船内では、そんな客船黄金期を彷彿
させるアール・デコの美しい装飾や、当時の最新鋭ディーゼル機関を間近に見ること
ができます。また、展示室では戦前の華やかな船旅の様子、時代とともに変わってい
った氷川丸の役割を解説しています。」・・・案内書より
ノブさんは船に乗り込み受付を済ませると、エントランスロビーに設置されたスクリー
ンで氷川丸の解説を聞いた後、1等児童室・1等食堂をゆっくりと見学し、階段を上っ
て1等客室・1等特別室・1等読書室・1等社交室のエリアに向かいました。さすがに1等
客船の内部は優雅なアール・デコの装飾に目が行きます。当時の国力を考えると、国の
威信をかけて建造された貨客船なのだと想像できます。1等社交室を出ると「シアトル
航路の旅」の展示室を通って屋外デッキに出られます。船主と船尾のオープンデッキは、
ロープが張られて出ることはできません。ノブさんは屋外デッキに備え付けられたデッ
キチェアーに座って、山下公園と港内を見渡しながら、持参のお茶を飲み始めました。
そこへ同世代と思われるF氏という方が声を掛けてきました。
F氏:シャッターを押していただけませんか?
ノブ:いいですよ。その立ち位置では逆光になりますから場所を少し移動しましょう。
F氏:ありがとうございます。私はこの船の運航に関わる仕事をずっとしておりました。
今日はチャンスがありましたので、この懐かしい氷川丸に会いたくて来ました。
山口県から来たのですが、ご存知ですか?下関とか・・・。
ノブ:この船でお仕事をされていた方に声を掛けていただき嬉しいです。それに山口県
とは浅からぬ縁があります。実は家内がK市の出なのです。下関にも行ったこと
がありますよ。
F氏:エッ、驚きました。実は私の家内もK市です。そこのK高校出なのですよ。
ノブ:それは奇遇ですね。家内もK高校です。家が近いのかもしれません。それに年齢
も近そうだから、同じ時期に通学していたかもしれませんね。
F氏:帰ったら、この話をしますよ。きっと驚きます。
ノブ:私は茨城県から来ました。山口県の方と茨城県の人間が、横浜の氷川丸の甲板上
で偶然にお会いし、連れ合い同士が同じ県、同じ市、同じ学校そして同じ時期に
通学していたというのは不思議なご縁ですね。ビックリです。世間は狭いという
けど、本当ですね。
F氏:家内は太極拳をやっていまして、東京で会議があるために上京したので、私は氷川
丸を見たさに家内についてきたのです。今日は懐かしい氷川丸に会えたし、驚きの
土産話もでき、良い1日になりました。お話しができて嬉しいです。
ノブ:私は趣味で歴史旅をしている仲間と一緒に「横浜の西洋館めぐり」を楽しんだ後に、
メンバーと別れてここへ来ました。旅をしているとこんな偶然な出会いが時にはあ
りますね。私もこの話を帰宅したら話しますよ。きっと喜びます。旅って、時にこ
んなすごいお土産をプレゼントしてくれるので楽しいです。
ノブさんはF氏と別れると、更に最上階への階段を上り、船長室・操舵室を見学しました。
最後に向かったのは船底近くの3等客室のエリアです。そこには機関室も見えます。そして
「氷川丸の航跡」の展示室を通って見学は終了です。ノブさんは展示品や掲示板にゆっく
り目を通しながら、この横浜・山手地区の西洋館で行われていたのであろう、夜ごとの舞
踏会と1等社交室での舞踏会を重ね合わせながら、昭和初期の時代がどんなものだったのか
に想いを馳せました。
偶然な出会いがあるのも旅の楽しみです。私もこれまでに多くの方との一期一会の出会い
で、助けられ学んできました。これからも無理をしない程度に歴史旅を続けてほしいです
ね。尚、後日談になりますが、同窓会名簿で奥さんたちは2学年違いであり、1年生と3年
生で同時期に通学していたことが分かったそうです。