常陸太田市は、昭和34年から巨峰をメインとしたブドウの栽培を始めています。阿武隈
山地の南端に位置する水はけの良い丘陵地で、土質がミネラル分を多く含むことからぶ
どう栽培に適しており、現在では茨城県最大のぶどうの生産地です。そんな土地から誕
生したのが「常陸青龍」です。常陸青龍は、巨峰の突然変異種で、色が紫黒ではなく、
黄緑色でマスカットと見間違うほど似ています。「常陸青龍」の名前、知らない人が多
いと思いますが、じわじわと口コミで人気が広がっており、入手困難な注目のぶどう品
種なのです。
常陸青龍は昭和53年に市内のぶどう農家さんが巨峰の自然交雑実生から育成して誕生し
ました。巨峰に引けを取らないプリッとした大粒の黄緑色が美しい果実です。巨峰から
こんな美しい黄緑色のぶどうが生まれるなんて、何とも不思議です。平成16年に品種登
録されました。現在では、人気をうけて市内の生産者の9割が栽培しており、徐々に生
産量が増えています。それでもまだまだ生産量が少ないため、地元のスーパーでも購入
できません。
実はこの地区の各農園では巨峰が8割なのです。作付けの面積を広げてもまだ限界があ
るのが実情です。今のところ、購入するには生産者さんのぶどう農園の直売所又は「ブ
ドウ狩り」を楽しんで食べるのが確実な方法ですが、遠方の方は、銀座の茨城県アンテ
ナショップでしたら購入できますので覗いてみてください。
今回はぶどうの一押し「常陸青龍」の紹介です。
<ぶどうの生産量事情>
地球上で一番多く収穫されている果実は、1位スイカ、2位バナナ、3位リンゴ、そして、
4位がブドウです。(2018年版)スイカは意外ですよね。最近、急に伸びてきました。
- 世界のブドウ生産量ランキング:世界一は中国でシェアは18.5%、2位のイタリア
(10.2%)、3位アメリカ(8.1%)の3ヶ国あわせて、世界の生産量の約37%を
生産しています。日本は42位(0.2%)にランクしています。(2019年) - 国内生産量ランキング:1位は山梨県(23.9%)、2位長野県(17.8%)、3位山形県
(9.2%)です。茨城県は17位(1.2%)でした。(2019年) - 日本産ぶどうの輸出が拡大中:日本のぶどうの品質は海外でも高く評価されるよう
になりました。輸出先の1位は香港(52%)、2位台湾(43%)、3位シンガポー
ルです。(2020年)これらの地域では果物を贈答品に用いる風習があり、ピオー
ネやシャインマスカットなどが人気です。 - 消費量の多いブドウは輸入もされています。1位はアメリカ(40%)、2位チリ
(28%)、3位オーストラリア(26%)です。(2020年)種が無く、皮ごと食べ
られる輸入ブドウはとても手軽な上、おいしく安いため売り上げを伸ばしています。
<ぶどうの種類>
世界のブドウは分類学上、欧州種(V. ヴィニフェラ)と米国種(V. ラブラスカ)に大別されま
す。欧州種は乾燥して降雨の少ない小アジア地域が原産地であり、米国種は降雨が多く
冬は寒冷な北米の東北部が原産地です。欧州種と米国種を交雑させたものを欧米雑種と
言います。現在、日本の主要な品種群は、国内で交配された欧米雑種であり、降雨の多
い日本の気候でも安定栽培が可能になっています。また、栽培はほとんどされていませ
んが、ブドウの野生種などが世界各地に分布しており、これらを含めると世界に60種の
原生種があります。現在ぶどうの種類は世界に一万種以上あり、日本では50~60品種が
栽培されています。日本においての種類分類は、黒、赤、緑の3色の色分けです。その
どれにも人気の品種が存在しています。
(1)黒系:アントシアニンが豊富に含まれている。大粒サイズの実をつける品種が多
いのも特徴です。実の色は緑色をしています。
①巨峰:粒のサイズが大きく、皮の色づきも濃い。そして味の濃さが特徴。
②ピオーネ:巨峰とマスカットの交配種。香りが強く、日持ちがする。
③ナガノパープル:巨峰とリザマートの交配種。皮が薄く、種がない。
④オリエンタルスター:糖度が高く、酸味がほとんどない。
(2)赤系:大粒サイズから小粒サイズまで品種は多い。糖度の高いぶどうが多いため
人気です。
①デラウェア:甘みが強くその甘みを支える酸味も相まって美味しさを演出。
②安芸クイーン:皮の色が薄いため渋みが少なく、全体的に甘さのある味。大実。
③ゴルビー:程よい固さがあるので、食べやすく甘みが強い。これも大実です。
(3)緑系:基本的にはワイン用に使用されることが多く、別名では青ぶどうや白ぶど
うと呼ばれます。芳醇な香りが特徴的で爽やかな甘さも感じられます。
①シャインマスカット:皮ごと食べることができ、糖度も高いので好まれている。
②ゴールドフィンガー:、縦長の形が特徴的。皮ごと食べられます。
③マスカット・オブ・アレキサンドリア:ワインの原料になっている。大実です。
<ぶどうの豆知識>
1.ブドウは5,000年以上前にカスピ海の南側で栽培が始まったといわれます。世界最古
のくだもので、世界でもっとも多く栽培されている果実です。その8割はワインに加
工、2割が生食用です。日本では生産量の9割が生食用です。
2.種なしブドウができる秘密:ブドウを種なしにするためには、自然界に存在する「ジ
ベレリン」という植物成長調節剤を使って、ブドウの花の満開前と満開後の2度にわた
って浸していきます。ジベレリンの入ったコップに、ぶどうの花をひとつひとつ手で
浸していくことで、「1度目は種なし」にするため、そして「2度目は果粒を大きくす
る」ことができるのです!
3栄養価と効果:ぶどうに含まれるブドウ糖は、脳を動かすために大切な栄養素脳のはた
らきを活発にして集中力を高める効果が期待できます。又、アントシアニンなどのポ
リフェノールが豊富に含まれていますので、目の疲れを改善したり、視力を回復させ
る効果が期待できます。尚、ポリフェノールは、ぶどうの皮に多く含まれていること
が多いので、皮ごと食べられるぶどうを選ぶのが良いです。ことをおすすめします。
しかし、ぶどうには三大栄養素やビタミンがあまり含まれていないため、デザートや
間食として取り入れるようにしましょう。
4.ぶどうの見分け方:①色の濃いものを選ぶ。色が濃いものが熟している。②実の表
面に白い粉がついている。これは美味しさを逃がさない保護膜です。③実と実の間
隔。少し実の感覚が空いている方が美味しい。④軸の色。軸の色が茶色になってい
るものは、鮮度が落ちているので緑色の軸のぶどうを選ぼう。
5.冷蔵庫で保存する場合:①房のままの場合は新聞紙などに包み、野菜室での保存②房
からはずして保存する場合は、フリーザーバッグや密閉容器に入れて他の食材から
の匂い移りがないように保存。ぶどうは冷凍保存も可能です。冷凍することで1ヵ月
ほど長持ちするのでおすすめです。その際は房から実を取り、水気をしっかり拭き
取ってフリーザーバッグや密閉容器に入れて保存します。
6. 小粒のデラウェアの食べ方;2〜3房がひとつのパックに入って売られているため、食べ
きれるかどうか心配になる人もいるのではないでしょうか。全農広報部は「房のまま
冷凍するだけで皮ごと食べられるアイスになるのでおすすめ」。さらに、「皮が気に
なる場合は、流水に数秒さらすとつるんと剥けます〜」と紹介しています。そして、
ぶどうは「皮ごと冷凍保存も可能で、そのままシャーベットのように食べられます」
と紹介しており、他の品種でも可能なようです。
<常陸青龍の栽培>
常陸青龍は生産地と品種を守るため、JA常陸・常陸太田ぶどう部会の会員だけが栽培して
いますので、部会員の生産農家直売所での購入がおすすめです。この直売所だけでほぼ売
り切れてしまうのです。直売所は"のぼり"が目印です。
農家さんも「ほとんどが直売で売れてしまいます。市場に出回るのはほんの0.1%ぐらい
です。都内のホテルオークラや百貨店の三越ぐらいには出していますが、ここに来なくて
は買えないのです。お客さまに来ていただいて、買ってもらうことですべて売り尽くして
しまいます。」といっています。
現在、部会員は50名となり、栽培法もさらに研究を重ねて、よりおいしい粒を生産する方
法を確立中です。特に力を入れているのが「雨よけハウスの導入」で、高品質安定生産の
ために、雨よけ栽培の導入を急速に進めており、全体の約9割を施設化しています。農家
さんは「常陸青龍を生産拡大し、今後はブランド化と認知度アップを図り、全国的な認知
度の高い品種にしていきたい」と意気込んでいます。
<常陸青龍・・・そのお味は>
巨峰の突然変異種、常陸青龍の果実の色は黄緑色。巨峰と比べて糖度が高く、酸味・渋み
が少ない。果房重450〜500g前後の、巨峰に引けを取らないプリッとした大粒の果実が美
しいです。実際に食べてみると、口の中に溢れる果汁、爽やかな香り、そして広がる甘さ!
さっぱりとしていて食べ応えがあるので、夢中で食べてしまいました。巨峰と食べ比べて
みると、その味の差がわかりやすいのですが、巨峰由来のぶどうであっても、酸味や渋み
が少なく感じません。ちなみに常陸青龍の糖度は「巨峰と同等・やや高い」そうです。
そのままフレッシュな果汁感を楽しむのはもちろんですが、実の皮離れが良いので、凍ら
せてシャーベット状にしていただくのも、暑い日のおやつとしておすすめです。糖度が高
い割にはしつこくなく、さっぱりとした甘味が特徴で、特に女性の人気が高く、口コミで
評判が広がり、常陸太田市で人気の高いぶどうの一つになりました。
味覚狩りのシーズンは、8月下旬から10月上旬。この季節、市内にあるおよそ70軒の観光
ぶどう園は、さわやかな巨峰の香りに包まれるとともに、たくさんの人で大いに賑わいま
す。近年はハウス施設の導入が進み、「常陸青龍」の生産も拡大しています。
常陸太田のブドウの旬はわずか2ヶ月弱。決して長くはありません。見かけたら「また今
度」では遅いかもしれません。ぶどうとの出会いも一期一会、「見かけたときが食べ時」
なのです。
是非、常陸太田に来て「常陸青龍」をご賞味あれ!