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ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

「ナニコレ珍百景」投稿のてん末

2014-05-26 08:31:50 | 日記



「水が張られた田んぼ風景を見たい!」と思い立ち、田舎道に向かった街なか育ちの

夫婦。途中で偶然に散策ルート案内の立て看板を見つけたので、そのルートを歩くこと

にしました。二人の希望通りの田園風景が広がる中、元気よく出発です。


夫:水が張られただけで、まだ苗が植えられていない田んぼは鏡のようだね。青空と雲

   がきれいに映り込んでいるよ。あ~、気持ちがいいな~。

妻:こういう景色を見ると、何故か懐かしく感じるのよね。おっと、ここからはあぜ道だか

   ら、足元もしっかり見ながら歩かなきゃいけないわよ。

夫:もうルートの3分の2ほど歩いたのかな。ここらあたりの水田は、そばを流れている

   川の水を引いているんだね。さっきの橋の名前は住民たちの豊作への願いが込

   められているようで、このあたりにピッタリだ。

妻:あら、あれは何かしら?高い所に、あぜ道を横断するパイプが通ってるわ。田んぼに

   何かを供給するみたいだけど、何なのかしら。分かる?

夫:水なら、あんな高いところから落とさないよね。あれでは滝つぼができて田んぼを痛

   めるよ。あの場所から肥料を落とすとなると、風がある日には周りに飛散するから、

   肥料でもないな。でも、パイプは鉄の支柱でしっかりと支えられているから、恒久的

   なものであることは間違いないよ。何だろう?アッ、そうだ!これ「ナニコレ珍百景」

   に投稿してみようか。おそらく、既に投稿されているとは思うけど、僕も投稿なるもの

   に初挑戦してみるよ。


帰宅した夫は早速パソコンに向かい、ナニコレ珍百景のホームページに現場の写真を

投稿しました。そして約一週間後、一本の電話が掛かってきたのです。


テレビ局:ナニコレ珍百景へのご投稿、ありがとうございました。早速ですが、現地でお

       会いしてお話を伺いたいのですが、よろしいでしょうか。

夫:取り上げていただいてありがとうございます。それでは現地でお待ちしています。


こうして翌日、テレビ局の方と現地で会うことになりました。あの景色を投稿した人は他

にいなかったようです。当日、やって来たテレビ局の人は運転手さんを含めて3名でし

た。現地を見た担当者は「なるほど、なるほど」と頷きながら、撮影カメラを車から取り出

しました。そして、アシスタントが対象物の持ち主に会い、撮影と放映の許可をもらって

来る間、私たちと撮影の打ち合わせが始まりました。


担当者:私が「お早うございます」と言ったら「お早うございます」と答えてください。

      そして、対象物を発見した時のことをお話ください。

夫:はい、わかりました。即、撮影とは思わなかったからビックリですよ。

妻:私が口を出しても大丈夫ですか?

担当者:もちろん歓迎です。ご協力よろしくお願いします。


こうして、投稿者夫婦の立ち位置が決まり、まさに撮影が始まろうとした時でした。

アシスタントが戻ってきて、「写すのは良いが、放映はダメだ」と言われたことを私たち

に伝えたのです。こうして、「ナニコレ珍百景」への挑戦は撮影準備の段階で、あえな

く撃沈してしまいました。


担当者:こういうことは、よくあるのです。今回は残念でしたが、またの投稿を期待してい

      ます。こうして私たちが撮影に来るのは、投稿数の80分の1ぐらいですよ。

      そして放映するに至るまでには、さらに候補は減っていくのです。

夫:放映されている珍百景は、かなり高いハードルを超えているのですね。今回のこと

   で、投稿するには、投稿者自身があらかじめ配慮すべき点がいくつかあることが

   わかりました。また挑戦したいと思います。

アシス:ちょっと耳にしたのですが、あのパイプは脱穀時に出るもみ殻を田んぼに送り

     込んで、土作りの肥料としているらしいですよ。正解かどうかはわかりません

     がね。

妻:ああ、そういうことかもしれませんね。私たちは農業の事を知らないので、これが何

   なのか解らず、ここ数日、おおいに盛り上がりましたから、十分満足ですよ。

   でも、テレビ局の皆さまには無駄足を踏ませてしまい、申し訳ありませんでした。

担当者:そのお心遣いは無用です。これが私たちの仕事ですから。これは番組の記念

      ボールペンです。どうぞ、お受け取り下さい。今回は投稿を、ありがとうござい

      ました。


こうして夫の手の平に数本の「ナニコレ珍百景」記念ボールペンを残して、テレビ局の車

は立ち去ったのです。思いがけない出来事で、再びこの場所に来ることができた夫婦

は、あのウォーキングルートをゆっくりと辿り始めました。

なぜゆっくり?ですか。だって、次なる投稿ネタを探すには、当然、あちらキョロキョロ、

こちらキョロキョロ・・・でしょ。

白鳥ファミリーに出会って

2014-05-19 08:36:02 | 日記




5月中旬、近隣の三日月湖でアサザが咲き始めたという情報を得た。三日月湖とは、

蛇行した河川を治水目的で改修を重ねた結果、もともとの河道から切り離されてでき

た河跡湖のことだ。公園の駐車場に車を停めた私達夫婦は、暫くの間、周辺を散策し

た。


夫:今日は風も無く、散歩には最適の日和だな。

妻:空気もカラッとしていて、気持ちがいいわ。アラ!あそこにいるのは白鳥じゃない?

夫:エッ、どこ?

妻:ほら、その川の向こう岸。2羽いるわよ。つがいかしら?

夫:ホントだ。よく気が付いたね。相変わらず、君は動くものを見つけるのが得意だな。

妻:ちょっと待って、ヒナも一緒にいるみたいよ。エ~ッと、1,2,3,4、ヒナは4羽ね。

   だけど、すぐそばで釣りをしている人が居るわ。釣り針が白鳥に引っかかったりし

   ないのかしら。心配ね。私、向こう岸の「ふるさとふれあい公園」側に戻ってみる。


と、言うが早いか、妻は背中のリュックを揺らしながら、一目散に駆け出した。私は少し

遅れながらも、あとを追いかける。向こう岸に渡る橋の上から、白鳥ファミリーがこちらに

向かって移動してくるのが目に入った。橋の上で待とうか、それとも向こう岸まで行くべ

きかと迷う私を尻目に、妻は迷うことなく橋を渡ってしまった。ヤレヤレと思いながら、あ

とを追うと、岸辺のフェンスの手前で妻はカメラを構えて、すでに撮影中。そっと近づいて

見ると、白鳥ファミリーは安全な場所に移動して、悠々と毛繕いを始めていた。


妻:あれ以上、釣り人の近くにいるのは危険だと思って、こっちに移動したのかしら。今

   は随分、ゆったりと寛いでいる様子ね。無事で、よかったわ。

夫:ほのぼのとして、何だか素敵な風景だね。ホラ、親子揃って同じ動作をしているよ。

妻:ネェ、4羽のヒナのうち1羽だけ、真っ白ね。白鳥のヒナってグレーじゃなかったっ

   け?

夫:グレーだと思うよ。もしかして、「醜いアヒルの子」の逆バージョンかな?

妻:ってことは、あの白いヒナはアヒルの子?そうだとしたら、面白い話ができそうね。


そんな話をしている所に、自転車に乗った中年女性が登場。自転車の前カゴにドッサリ

と積んだ草を「ドッコイショ」と抱えて、私たちが立っているフェンスの向こう側に行ったか

と思うと、腕の中の草を「はい、どうぞ」と言いながら、白鳥たちの近くに置いた。


夫:摘んだばかりの草のようですね。

女性:そうそう。白鳥たちが喜んで食べてくれるから、毎日、こうして運んでるのよ。


白鳥ファミリーに再び目を向けた後、女性は満足気な顔でサッと自転車に乗り、走り

去った。


妻:優しい人ね。そろそろ別の場所に移動しましょうか。

夫:そうだね。さっき、釣り人がいた場所のことが気になるから、行ってみない?

夫婦はすぐに、その場所を見つけた。

夫:ここは白鳥のエサ場だよ?ちゃんと板の台があって、草が置いてあるじゃないか。

   白鳥ファミリーはいつも通りに、ここでエサを食べようとしていたんだよ。

妻:だったらどうして、さっきの人は、ここで釣りをしていたの?ヒドイじゃないの。

夫:ほんとにヒドイな。誰が見たって、ここはエサ場だよ。

男性:そうなんですよ。時々、非常識なことをする人がいて、困るんです。


後方から声を掛けて来たのは、まだ若い男性だった。


男性:僕はこの公園の管理を任されている者です。今年、あの白鳥が産んだ卵は

     8個で、孵化したのは6羽。それが、いつの間にか4羽になってしまいました

     が、先日の新聞で、この白鳥たちのことが報道されたので、この公園のアイ

     ドルになるかもしれないと期待しているところです。近隣の住民の皆さんは

     温かく見守ってくださっています。

私の撮った写真をご覧になりますか?

夫:ええ、拝見しますとも。あ~、ヒナたちの表情が可愛いな。

妻:とてもいい写真だわ。先程、地元の人が草を運んで白鳥に与えているのを見まし

   たが、皆さんの協力も得て、ここが白鳥の名所になるといいですね。

男性:そうなって欲しいな~。そうすれば、この公園の利用者がもっと増えるかも。

夫:今日も、グラウンドゴルフを楽しんでいる人が何人かいますね。

妻:あそこの建物の中で、私は陶芸体験をしたことがあるわ。

男性:そうでしたか。これからも、どんどん利用してくださいね。それでは失礼します。


この公園からほど近い場所でも、先ほどとは違う白鳥ファミリーを目撃した。自宅から車

で10分足らずの所に、こんなに自然豊かな地域があることが無性に嬉しかった。それと

同時に、一度失ってしまえば、二度と取り戻せない大切なものを守ろうとする人がいる一

方で、自分の楽しみの方を優先してしまう人も、一部には存在する現実を突きつけられ

てしまった。

その日の夜は「自分自身も、気付かないうちに自然を壊すようなことをしてはいないだろ

うか?」と自問自答しながら眠りについたのである。

アカネズミのチュー太郎と雑木林の花たち

2014-05-12 08:27:31 | 日記




ゴールデンウィーク前後は、カタクリなど早春の妖精たちに代わって、やわらかな新しい

葉をまとった樹木の下が大好きな花たちの出番。それぞれ独特な姿で咲き誇り、林を彩

っています。私の好きなこの雑木林には様々な生き物たちが住んでいますが、今日は

アカネズミのチュー太郎君に、旬の花たちを紹介してもらうことにしました。


チュー太郎:ここは僕のホームグラウンドだ。知りたいことを何でも聞いてくれ。

       エッ、花の紹介?じゃあ、案内してやるから、僕についておいで。

       今、いろんな花が咲いているから全部を紹介するのは手間がかかるし、

       面倒くさいな。そうだ!個性的な名前のものから紹介するよ。

       お~い、ドンスさんとギラく~ん。

キンラン:また、ドンスと呼んだわね。私の名前は「キンラン」よ。ドンスなんて呼ぶ

      のはあなただけだわ。私を紹介するのにネズミギャグはやめてちょうだい!

ギンラン:僕もギラじゃなくて、ギンランだ。♪金銀、キラギラ♪なんていつも歌っている

      から、間違えて覚えるんだよ

チュー太郎:へへへ、ゴメンな。最近、君たちは数が増えてきたようだね。いつも姿勢良

       く直立している君たちにとって、お好みの環境になっているということかな。

       おや、雨だ!アメドコロ君の所で雨宿りしよう。それじゃ~ね。バイバイ。

甘野老 :また、間違えたな。僕はアマドコロだよ。雨が降るたびに間違えるんだから

      困ったものだ。ヤブレガサ君じゃないけど、雨宿りに適した姿はしてないさ。

      でも、ナルコユリ君と間違えなかったから、許してやるとするか。

チュー太郎:サンキュ~。君は葉っぱと茎と花のバランスがとても素敵だよ。群生してい

       る姿もなかなかいいよね。あちこちで花さんたちの名前をふざけて言った

       ら、みんな、ちょっと怒り気味だな。そうだ、次はイカリソウにしよう。

イカリソウ:何という紹介の仕方をするんだ。僕は船の錨に似ているからイカリ草なんだ

       よ。けっして怒った顔をしているわけではないからね。

チュー太郎:ゴメンよ。ついつい冗談を続けてしまった。君は強壮・強精の薬草、薬酒と

       して利用されるようだね。人の役に立っているとは、お見逸れしました。

       おや、イチリンソウさんとエビネさんがあそこにいるよ。

一輪草 :変な紹介のされ方じゃなくてよかったわ。私は茎の先にひとつ花を咲かせるか

      らイチリンソウだけど、変わり者もたまにはいるのよ。これはニリンソウさ

      んやサンリンソウさんにも言えるんだけどね。なかなかの人気者なの。

      ど~お、私ってきれいでしょ。

チュー太郎:あぁ、きれいだよ。自己紹介してくれたから手間が省けたよ。次は優雅な

       名前のジュウニヒトエさんとオドリコソウさんで~す。

ジイニヒトエ:優雅と言っていただいて嬉しいわ。昔、宮廷女官が着ていた「十二単」

        に見立てた名前なの。日本固有種よ。外来種としてセイヨウジュウニ

        ヒトエさんがいるけど、あちらは濃い紫青色をしているから見分けら

        れると思うわ。

踊り子草:私は笠をかぶった踊り子達のような花を付けているでしょ。私も日本原産で、

      道端にたくさん咲いている小型のヒメオドリコソウは外来種よ。私は薄いピン

      ク色の花だけど、濃いピンクや白花もあるんですって。黄花のツルオドリコソ

      ウっていうのもあるみたいね。

チュー太郎:外来種が入ってくると、僕にも段々、見分けがつかなくなるかもしれないね。

       次は誰にしようかな。

ホウチャク草:オイ、僕を紹介してくれよ。二つ付いている花は地味だけど、白から緑

        へのグラデーションが美しいだろ。よく見てごらん。お寺の軒に吊り下げ

        られている宝鐸(ほうちゃく、ほうたく)に似ているんだってさ。

丁字草 :私のことも忘れないで。チョウジソウっていうの。淡い青紫の星型の花を咲か

      せる宿根草よ。絶滅危惧種に指定されている地域もあるから、大切にしてね。

チュー太郎:最後にマムシグサ君を紹介しておこう。よく似たウラシマソウ君より少し遅

       れて出てくるんだよね。

マムシグサ:物知りだな。僕はウラシマソウ君のような釣り竿は持っていないんだ。それ

       にしても、嫌われ者の名前を付けられて迷惑してるよ。成長期の茎の模様

       がマムシに似ているらしいけど、気に入らない名前だな。ひとつ教えておこ

       うかな?僕は雌雄異株なんだよ。


チュー太郎君、たくさんの花たちを紹介してくれてありがとう。最後に君のことを自己紹

介してくれないかな。


チュー太郎:僕は日本固有種のアカネズミ。ご覧のとおり、頭から胴体の長さは8~14

       cmと小さいけれど、行動範囲はとても広いんだ。食べ物は植物の種・茎・

       根、たまには昆虫も食べるよ。一番好きなのは木の実だね。トンネルを掘

       って巣を作っているんだけど、餌は巣の中だけじゃなくて、あちこちに分けて

       隠してあるんだよ。走り回っているから、この雑木林のことは誰よりも詳し

       いって訳なんだ。そうそう、夜行性だから人間たちにお目にかかることは

       ほとんどないね。今日は特別だ。それよりも、この雑木林にはフクロウが

       住んでいて、僕たちの天敵なんだよ。今年は3羽も子供が生まれたんだって

       さ。ついこの間、巣立ったらしいから、気を付けないといけないんだ。

       これ以上おしゃべりしていると見つかって食べられちゃうから、もう帰るね。

       さようなら。また、遊びにおいでよ。


チュー太郎君、今日はありがとう。生存競争の厳しい林の中で暮らすのは大変だろうけ

ど、元気に暮らすんだよ。また、いつか会いたいね。

春の林で出会ったものは

2014-05-05 08:04:52 | 日記





ホーホー ホケキョ ケキョ ケキョと
ウグイス唄う 高らかに

淡い緑の葉っぱを付けた
木々に やさしく吹く風が
私の前髪 揺らしたよ

足元 見れば 赤ちゃんモミジ
群れて 仲良く 並んでる

ドングリ 大地に根を降ろし
空へ空へと 背を伸ばす

そこへ ひょっこり アオガエル
ウグイスの歌に 誘われて
出番じゃないかと 顔を出す

だけど 光が眩しくて
思わず その場で 固まった

慌てることはないんだよ 
すぐに慣れるさ 大丈夫

春の林で 出会ったものは
命の鼓動 新たな息吹

私はそっと 立ち去ろう