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動物村が一面の銀世界になりました。広場では仲良し3人組が大きな雪だるま作りに
奮闘しています。とても真剣です。遊びには見えません。どうやら訳がありそうです。
ミミ :やっと大雪が降ってくれた。レイニーに会えないのかと心配したわよ。早く
レイニーを呼べる大きな雪だるまを作りましょう。
コン太:しっかりと固い雪だるまにしよう。柔らかいとレイニーは来てくれないぞ。
ポン吉:レイニーは水の精だから、どんなものにでも姿を変えられるのに、僕たちと
会うには雪だるまの姿でしか会えないなんてよくわからないね。
ミミ :雪だるまが私たちとレイニーを繋ぐ扉だと言っていたじゃないの。頑張るわよ。
3人組は水の精・レイニーに早く気づいてもらおうと、秋に貯めておいた葉っぱを使
った帽子とマフラーで着飾った雪だるまを作りました。そして、声を揃えてレイニー
を呼びました。暫くすると、雪だるまがモソモソと動き始め、一年ぶりにレイニーの
声が聞こえてきました。
レイニー:や~、随分とおしゃれな雪だるまを作ってくれたんだね。よく目立ったぞ。
こうして今年もみんなに会えて嬉しい。
ミミ :レイニーさん、来てくれたのね!会えて嬉しいわ。
コン太:僕も嬉しいよ。僕たちレイニーに相談したいことがあって、大雪が降るのを
待っていたんだ。
ポン吉:動物村の一大事なんだ。力を貸してください。
レイニー:久し振りの出会いを喜ぶことは後回しだね。まずは話を聞かせてもらおうか。
3人組は数日前に夜空に浮かぶ白い月が突然欠け始め、暗くなると今度は赤色の月にな
り、そして少しずつ元の月に戻った月の変化のことを話しました。長老は何か災いが
この動物村に起きるのではないかと、断食をして村のために祈っていること。長老の
体が痩せてきて村の住民たちが心配していることを伝えました。仲良し3人組は空のこ
とはレイニーに相談するのが一番だと思って、大雪が降ることを待ち望んでいたのです。
レイニー:まん丸い月が突然欠け始めて、やがて赤黒くなり、そして再び月は丸い姿に
戻っていく現象は「皆既月食」と言うのだよ。雨や雪が降るような自然現象の
一つだから、動物村に災いを起こす前兆ではないんだよ。早く長老と住民たち
に知らせて安心させてあげなさい。でも、月が欠けて消えていくのって驚くよ
ね。
ミミ :あ~、良かった。悪いことは起きないのね。お父さんも、お母さんも心配して
いたの。
コン太:どうして、月が欠けたり元に戻ったりするの?
ポン吉:分かるように教えてください。それじゃないと長老に説明できないよ。
レイニー:この地球の明るさは太陽から届く光で照らされているんだ。でもこの光の
明るさは私や君たちの体があると遮断されてしまうので、その後ろは影とな
るんだ。ミミ、私の影の中にゆっくり入ってごらん。ほら、欠けていくよう
に見えるね。それと同じことが月の夜空でも起きているんだ。あの日に起き
たことは、太陽と地球と月が一直線に並んだので、地球の影が月に映った現
象だ。言い換えると、地球の長い影の中に月が入ったということだ。だから、
月が地球の影から出れば元のように明るくなるのさ。稀にしか見られない珍
しい現象だよ。
ミミ :空のことはよくわからないけれど、安心していいのね。やっぱりレイニーに
相談してよかった。
レイニー:長老も心配したように、人間たちも大昔はこの皆既月食が災いをもたらす
前兆だと考えていたことがあったんだよ。でも人間たちの科学の進歩のお陰
で、皆既月食が起きる理由が分かったから、今では楽しい天体ショーとして
歓迎されているよ。だから、動物村のみんなも心配しないで、皆既月食を楽
しんでいいのだよ。
コン太:長老に今のレイニーの話を伝えてくる。僕たちの話は長老に信用されている
んだ。きっと安心してくれると思う。ありがとう。
3人組はレイニーの話を伝えるため、大急ぎで長老のところへ走っていきました。そし
て、再びレイニーのいる広場に戻ってきました。
ポン吉:長老が「安心したぞ、お腹が空いた~」と言って、もりもり食べ始めたんだ。
これで一安心だ。
ミミ :私、まだ理解できないけれど、動物村に災いが起きないことが分かってよか
った。
コン太:僕たち、長老が「見るな!」と言ったから皆既月食を見てないんだ。
見たいな~。
レイニー:それでは私のお腹に扉を付けておいたから、開けて中に入ってごらん。
ポン吉:これは僕たちが作った雪だるまだよ。こんな小さな扉に僕らの体は入らないよ。
レイニー:いいから、いいから、騙されたと思って、扉を開いて中を覗いてごらん。
3人組が入れる広さは十分にあるからね。
コン太:レイニーが言うなら、そうする。まず、僕が扉を開けてみるよ。アレ?近く
に来たら急に扉が大きくなった。扉が開いたよ。中は明るい。さあ、入って
みるぞ。
続いて、ミミとポン吉が入りました。どうしてだかわかりませんが、雪だるまのお腹
の中に3人共、簡単に入れてしまったのです。お腹の中は空洞になっていました。
レイニー:どうだい、僕のお腹の中は?これから暗くして皆既月食があった日の様子
を再現するからしっかり見るんだよ。暗くなったら私の解説で天体ショーの
始まりだ。
ミミ :レイニーの声だわ。姿が見えないけど、レイニーからは私たちが見えている
のね。あら、暗くなった。大きなお月様が出てきた。星もいっぱい。きれい
だわ。
ポン吉:これから、あの日に起きた皆既月食が見られるんだね。しっかり見ようぜ。
コン太:月なんてこれまで関心がなかったけど、なんだかワクワクしてきたぞ。
レイニー:君たちが住んでいるこの地球と言うところは、君たちが知らない不思議な
ことで満ち溢れているんだよ。地球から見える皆既月食もその一つだね。
雪だるまのお腹から出てきた3人組は、いつも見ている月の大きな変化に大興奮です。
水の精・レイニーに助けられた3人組は、さらにレイニーとの友情が深まりました。