ズッキーニはイタリア語で「小さなカボチャ」。使い勝手の良さから需要が伸びてきた野菜
のひとつです。ほのかに甘く、クセがない独特の歯ごたえ、そして姿はキュウリのようです
が、かぼちゃの一種で、花が咲いてから3~4日後の未成熟の実を食べます。近年では若年
層を中心に徐々に周知されはじめていますが、高齢者層にはズッキーニがどんな野菜である
のか、どう料理したらいいのか分からないとの理由で消費の伸びは悪いそうです。調理法と
してはナスに近い扱いで、加熱して食べるのが一般的で、油との相性が良く、フライや天ぷ
ら、肉野菜炒めに向いています。皮をむかなくてもおいしく食べられ、生のまま酢漬けにし
てピクルスにしても秀品です。
茨城県南西部、関東平野のほぼ中央に位置するJA常総ひかりは、温暖な気候と適度な降水
量に恵まれ、年間を通じて多種多様な青果物が生産・出荷されていますが、ここで、平成19
年に設立されたJA常総ひかりズッキーニ生産部会は、平成25年に茨城県青果物銘柄推進産
地の指定を受けました。最初は現在、部会長を務める片倉さん一人で栽培をスタート。肥料
や農薬の使用法、水の管理など、2年もの間、試行錯誤を繰り返し、現在の栽培方法を確立
しました。そして今では県内生産量の9割を占める一大産地となっています。常総市の収穫
時期は促成栽培が4月上旬 ~ 6月下旬、抑制栽培が9月中旬 ~ 12月上旬と年2回あります。
これは夏の露地栽培主産地の長野県と冬のハウス栽培主産地の宮崎県と出荷が重ならないよ
うにしている工夫と思われます。ですから、3県を合わせると、ズキーニは通年で市場に出
回っています。先週、常総市のズッキーニ農家を訪問している様子がテレビで放映されてい
ました。今回は見た目も美しく、他産地よりも大きめで、厳しい規格を設定している、常総
市のズッキーニを紹介します。
※促成栽培:冬の時期にハウスを加温や保温して、自然環境よりも早い時期に作物を収穫し
ます。
抑制栽培:反対のアプローチで、生育を抑制することで、自然環境よりも遅い時期に作物を
収穫します.
<ズッキーニとは>
ズッキーニは、ウリ科・カボチャ属に分類される野菜です。諸説ありますが、メキシコが原
産で、ヨーロッパ経由で日本へは、第二次大戦後に伝わってきたとされています。店頭でよ
く見かける20cmほどの緑色のものは、開花後5~7日の未成熟の果実で、成熟すると黄色く
なり、大きいものでは1mにまで成長します。ナスとウリを足して割ったような味わいで、
油をよく吸うので炒めものにおすすめ。フランス南部の煮込み料理ラタトゥイユには欠か
せない食材となっています。また、ズッキーニは、夏になると黄色い小さな花を咲かせま
す。この花は、「花ズッキーニ」として料理に使われます。日本ではズッキーニで呼ばれ
ることが多いですが、和名はウリカボチャで、カボチャの仲間でありながらつる(蔓)が
長く伸びないため「蔓なしカボチャ」の異名もあります。品種には緑色・黄色の細長いタ
イプ、コロンと丸いタイプそして花ズッキーニなどがあります。
<ズッキーニの生産事情>
国内での普及は1980年頃からですから、新しい野菜と言えるでしょう。今では10年前と
比較して2倍以上に生産量を増やしています。最近は家庭菜園でも人気の野菜のひとつに
なりました。
- 国内の生産量ランキング(2018年):1位は長野県(3,110トン・31.6%)、2位宮崎
県(25.6%)、3位群馬県(9.4%)、4位が茨城県で (8.2%) です。ハウス栽培の
普及で地域的な偏りがないのが特徴です。 - 上位4県で約75%を生産しています。長野県は夏出荷で露地物主体、宮崎県は春出荷
でハウス物主体。そしてその間を埋めるように群馬県や茨城県が抑制栽培や促
成栽培で生産しているため、ズッキーニは通年で市場に出回っています。
<ズッキーニの栽培>
ズッキーニはカボチャのようにツルを伸ばしませんが、大型の葉を広げるので、栽培には
広い面積が必要です。そして、次々と実がなるので、肥料切れにならないよう定期的に追
肥して草勢を維持するよう管理します。栽培のポイントは「一株が大きく育つので、十分
な株間と畝間をとって植え付ける」「葉柄が中空になっていて折れやすいので、支柱で固
定する」ことです。関東の家庭菜園では4月初旬にポットに種を蒔いて育苗し、5月上旬に
畑に定植、7月〜8月頃の収穫が目安です。開花後、5〜7日ほどで収穫適期です。実の長さ
が20cmほどになったら、果梗からハサミで切り取って収穫します。収穫が遅れるとヘチマ
のように大きくなって食味が落ち、株にも負担が掛かるため、早めに収穫するようにしま
す。ズッキーニは比較的種からでも育てやすい品種ですので、種からの栽培をおすすめし
ます。とはいえ発芽適温は25℃くらいなので、長く収穫するためには、2月下旬にはポット
に種まきをしてビニール等で保温するとよいです。直接畑にまく場合は、4月中旬以降にな
ります。4月播種(はしゅ)でも充分収穫に至るのですが、収穫できる期間は少し短くなり
ます。収穫が始まると一株10本くらいはとることができます。
<ズッキーニ豆知識>
1.ズッキーニの選び方(見分け方)
皮にツヤがあり太さが均一で、大きすぎないもの。大きすぎると果肉がスカスカ
していることがあります。また、切り口がしなびていたり、変色しているものは
鮮度が落ちています。そして、同じ大きさなら持ったときに重みのあるほうが新
鮮です。
2.ズッキーニの保存方法
基本的に冷蔵庫の野菜室で保存しますが、冷やしすぎたり、乾燥させると食味が落
ちるので、新聞紙などで包んでからポリ袋に入れて保存します。20度以下の涼しい
環境であれば室温でも可能です。3~4日が食べ時の目安です。スライスしたものを
かたゆでして冷凍保存することもできますが、食感がやわらかくなります。
3.ズッキーニの食べ方
代表的なのは煮物、炒め物、揚げ物、スープ、パスタなど。日本で売られているズ
ッキーニは生食できないことはありませんが、加熱して食べるのが一般的。皮はむ
かなくても大丈夫です。油との相性がよく、オリーブオイルで炒めたり揚げたりす
ると風味が増します。トマトやパプリカなどの夏野菜を使った煮込み料理「ラタト
ゥイユ」にも欠かせない素材のひとつです。
4. サイズ別!おすすめ調理法:ズキーニは極めて成長が早いですから、収穫が遅れると
どんどん成長します。ですから、大きさにより調理方法を合わせると美味しく頂
けます。Sサイズ…半分に切って蒸す、丸焼き。Mサイズ…輪切りにして炒める。
Lサイズ…刻んで煮込む、輪切りにしてバーベキュー。こんな工夫がおすすめです。
5.ズッキーニの栄養と効能
一番多く含まれている成分はカリウムです。カリウムは利尿作用があるためむくみ防
止になったり、高血圧にも効果があります。また、体の中の余分な塩分を排出してく
れる効能がカリウムにはあるので、塩分を摂取しすぎている方にもおすすめの食材で
す。さらにβカロテンもカリウムと同じぐらい含まれており、体の中でビタミンAに変
化するβカロテンは、免疫力の強化と抗酸化作用に期待できます。また、細胞の老化を
防いでくれるビタミンCも豊富に含まれています。むくみや抗酸化作用に老化防止効果
ときたら、嬉しい効能だと言えるのではないでしょうか。さらに低カロリーで栄養豊
富なズッキーニは、ダイエット中にもおすすめの食材です。
6.ズッキーニの種類(品種)
(1)ズッキーニ(グリーン):キュウリをずんぐりとさせたような形で、色は黒っぽい緑か
ら鮮やかな緑色まで品種によってさまざまです。食べ頃なのは未熟なうちに収穫した
もので、大きすぎると食味が落ちるといわれています。おもに西洋料理に使われるこ
とが多く、炒め物や煮物に最適。品種は「ラベン」や「ダイナー」「ブラックトスカ」
などあります。
(2)ズッキーニ(イエロー):皮が黄色いズッキーニ。緑色のものに比べて皮が薄めでやわ
らかく、淡泊でクセのない味わいです。煮物や炒め物などのほか、サラダなど生食も
可能。色が鮮やかなので食卓の彩りとしても活躍します。品種は「オーラム」「ゴー
ルゴトスカ」「イエローボート」などがあります。
(3)丸ズッキーニ:丸い形のズッキーニで、皮の色は黄色や緑色、薄い緑色などさまざま。
直径は5〜15cmくらいで、普通のズッキーニのように調理できます。中をくりぬいて
中身を挽肉などとまぜて詰め物にしても美味です。品種は「ゴールディ」「ブラック
エッグ」「グリーンエッグ」などがあります。
(4)花ズッキーニ:果実が成長する前に収穫した花付きの幼果、または花のこと。雄花は花
だけで、雌花は小さな実の先に黄色い花がついています。花の部分にチーズや挽肉な
どを詰めて揚げ物にするのが人気の食べ方。店頭ではほとんど見かけませんが、5下
旬〜7月頃がシーズンです。
<常総市でのズッキーニ生産>
失敗を繰り返しながらもあきらめずに研究を続けた片倉さんは、栽培開始からおよそ2年後に、
ご自身が納得できる品質のズッキーニの栽培方法に辿り着きます。「ズッキーニは、肥料を多
く必要としますが、やりすぎると曲がるし、実がボコボコ変形してしまうんです。だからとい
って少なすぎると実が固くなったり、実が生らなかったり。肥料の量の調整が非常に難しいで
すね。あとは水の管理。これも多すぎてもダメだし、少なすぎてもダメ。この加減が難しいで
す。」片倉さんの尽力のお陰で、茨城県は全国4位のズッキーニ生産県となりました。片倉さん
指導の常総市のズッキーニは、真っ直ぐで、色ツヤが美しい外観と品質の高さが自慢です。そ
して他産地よりも大きめで、厳しい規格を設定し、生産者一人ひとりが厳しい目で選別してい
ます。
(ズッキーニの栽培)
栽培は、春の4月から、霜が降りる10月中旬まで。ズッキーニ農家の樋口さんは、開口一番
「とにかく一番大変で、重労働なのが土作り」と切り出しました。樋口さんが1回に栽培する
畑は10アール。畝(うね)の長さは700mにも及び、長さとしては50mの奥行きがあります。
歩くだけでもかなりのしんどさです。この広い畑にマルチを敷き、ハウスの中で種から大切に
育てられた700本の苗を植えつけます。そして受粉を施し、自然の時間の流れにまかせて、収
穫を迎えるのです。
(1)目を見張るのはその成長の早さ
ひとつの株に15本程度の実をつけるその収穫作業は、朝と夕方の1日2回。最盛期となる
6月中旬〜7月は、多いときで1回に700本以上を収穫するそうです。なによりも驚くのは
その生長の速さ。時期にもよりますが、この夏場の時期ですと、だいたい種を植えてから収穫
までが35日。実は開花して4〜5日後にはすでに収穫に適する20センチ程の大きさに生長
するのです。だからそのまま放っておくとおそろしく太く巨大に成長します。だから時期を失
わずに収穫しなくてはなりません。そして収穫を終えた畑は、樹を引き抜いて土を耕す中に混
ぜ込むという、そんな1連の作業を年4回、畑を替えて繰り返し行うのです。しかし作業以上
に大変なのは、「今年は肥料の値段にはじまり、種、農薬などが倍近くに跳ねあがっているけ
ど、取引価格は上がらないこと」と言います。
樋口さんの1日は、朝の5時からせっせと受粉付けを行う作業からはじまります。雄花の雄し
べの花粉を、雌花の雌しべに付けるという作業です。これはひとつひとつすべて手で行います。
これをしないと実の中に筋が入ったり、出来が良くないということなので、これもまた大切な
作業です。しかも「じょうご型」をして上向きに咲く黄色い大きな花は、雨が降ると内側に水
を溜め込んで花粉を流してしまうので、そのときにはもう一度受粉づけをするというなんとも
はや手間のかかる作業なのです。そしてこのズッキーニ、最大の敵は「風」ということで、
「いよいよこれから収穫というときに茎が折れて実が飛んでいってしまうこともあるんです」
と樋口さん。
(2)想像以上にデリケートな作物
ズッキーニは、実は想像以上にとてもデリケートな野菜で、皮が軟らかいためにちょっとした
ことで傷つきやすく、収穫、箱詰め共にとても丁寧におこなわれ、その後も気を使った取り扱
いが要求されます。またヨーロッパなどではとくに花のついたズッキーニが、より新鮮なもの
として好まれるとか。味に癖が無く、蒸しても、茹でても、焼いても、揚げても、煮込んでも、
さっと火を通しても、美味しい食べ方はあなたのアイデア次第。夏が終わるまでに、ズッキー
ニの新しい世界を発見してみてください。そしてズッキーニの食べ方を知って、食べてもらっ
て、いつか日本全国で毎日普通に食べるような野菜にしたいと語っていました。
是非、常総市のズッキーニをご賞味あれ!