首都圏に住んでいる高校の同級生3人が古稀を迎えたことを契機に始めた歴史と文学の街歩き。
今回は徳川御三家の城下町であり、水戸黄門で有名な茨城県水戸市の歴史散歩です。でも予約
したアンコウ鍋の時間を気にしながらの慌ただしい街歩きだったようです。
ノブ:「今年の忘年会は本場でアンコウ鍋」だと言ったら、本当に水戸に来ちゃったよ。
ヤス: 良い専門店を知っているから紹介するよ。二人は水戸に来る機会は少ないだろうから、
水戸駅周辺の史跡を歩いてからアンコウ鍋を囲もうと思う。
ヒデ:水戸には10年以上来ていない。歴史探訪とアンコウ鍋の組み合わせは良い考えだ。
水戸駅を出た一行が最初に向かったのは「水戸東照宮」です。御三家の城下町だから当然なの
でしょうが、水戸にも東照宮があったのですね。知りませんでした。
ヤス:水戸藩初代藩主徳川頼房(家康の11男で光圀の父)により、徳川家康を祀る神社として
創建されている。戦前まで社殿は旧国宝に指定されていたけど、戦災で焼失して今ある
のは昭和に造営された社殿だ。現在は徳川頼房も祀られている。境内には頼房奉納の銅
灯籠,徳川光圀が造らせた常葉山時鐘,徳川斉昭の考案による、安神車(戦車)などが
見られる。
ノブ:社殿は日光の陽明門を模したものだね。壁に天井に扉にと、どこを見ても綺麗だ。葵の
紋が素晴らしい、それと虎やウグイスの絵が豪華絢爛さを強調している。
ヒデ:家康を祀る東照宮は全国にあるよね。その理由だけど、家光の時代に当時の大名が競っ
て造営したように思われるけど、実は幕末から明治初期にかけて、先祖崇拝の象徴とし
て造営されたものが多く、500社~700社ぐらいあったそうだ。廃仏毀釈などで淘汰さ
れたけど、今でも全国には日光東照宮を筆頭に50社近くあるそうだよ。
次に向かうのは「常盤神社」。真っ赤に紅葉した大モミジが三人を迎えてくれました。
ヤス:ここには水戸黄門こと徳川光圀と徳川斉昭が祀られている。境内にある義烈館には光圀
や斉昭の遺品そして水戸学関係資料が展示されており、小規模ながらも迫力のある博物
館だから見ておこう。
ノブ:なるほど、義烈館では「大日本史」「大きな陣太鼓」そして「大砲」が印象に残ったね。
ヒデ:その「大砲」だけど、斉昭が政権から追放された要因の一つと言われているね。お台場
に設置して外国船に対抗する迎撃砲として、幕府に献上されたのだけど、奉納品以外に
も裏で何砲造られているか分かったものではないと、幕閣に謀反の心を抱かれたらしい。
一行は茨城県立歴史館へやってきました。ここは、昭和49年の開館で、茨城県の歴史に関する
資料の展示や江戸時代の農家、明治時代の洋風の校舎などが移築され保存されています。茨城
の歴史を知るのには最適なスポット。常設展は茨城の歴史(原始・古代から現代まで)を13の
テーマに分けて展示してあるのでとても見やすいです。
ヤス:歴史博物館と文書館の機能を合わせ持つ施設で、広い敷地を歩いてきて分かったと思う
けど、旧水戸農業高校本館や旧水海道小学校校舎などが保存され、規模の大きさ、展示
物の豊富さから一度は立ち寄る価値がある施設だね。
ノブ:館内は学芸員さんに案内してもらったのでよく理解できたな。特に一橋徳川家から寄贈
を受けた資料や美術品が印象的だった。歴史館の価値がよくわかったよ。
ヒデ:広い敷地は無料開放でいいな。ここのイチョウ並木の黄葉は素晴らしかっただろうね。
もう少し早く来たかったな。
ヤス:「アンコウ鍋」の予約時間があるから、急がしたけど今度ゆっくり来てください。
最後の訪問地は水戸黄門生誕の地です。光圀は家臣三木家の屋敷で4歳まで三木家の子として身
分を隠し養育されました。現在、この地には水戸黄門神社が建てられています。
ヤス:大きな道路に挟まれた中洲のような場所にある小さい神社だけど、ここが生誕の地と言
われている。
ヒデ:新しいね。石碑に昭和55年と書かれているから、付近の道路整備の時に作られたものだ
ろうね。
ノブ:今回は4か所しか周っていないからいつもの半分だね。水戸の歴史と言えば、城跡や偕楽
園の好文亭そして水戸の弘道館など、他にも名所旧跡があるけど、時間の制約もあるし、
歴史館で展示品を見ながら概要を把握したからそれで良しとしよう。
今日の歴史探訪は終了、元祖アンコウ鍋店「山翠」に到着です。自然豊かな茨城県の四季の素
材をふんだんに取り入れた郷土料理を提供してくれる水戸の名店です。一行はアンコウ鍋を囲
みながら至福の時間を過ごしました。
ヤス:アンコウ鍋は、「東のアンコウ 西のフグ」と並び称される茨城県を代表する冬の味覚だ
ね。つぶれたような平たい魚体、大きな頭、巨大な口には鋭い歯が並ぶグロテスクな魚
だが、姿に合わずその味は淡白でコラーゲンたっぷり、肉は脂肪が少なく、低カロリー
なため女性にも人気だ。特に肝が肥大する12月~2月が美味しい時期と言われているんだ。
ヒデ:茨城県内に130店以上もあるそうだね。お店や宿、それぞれに独自のこだわりや趣向を
凝らしたお店が多いと聞いている。
ノブ:アンコウ鍋は「あん肝」をどのくらい使用しているかによって、コクや旨味、風味が大
きく変わるんだ。そこが店のこだわりになっているんだよ。
三人はアンコウ鍋談義そして来年の計画などを話しながら、至福のひと時を過ごしました。個
室でしっかり腰が落ち着いてしまったら、もうこれ以上は歩けませんからね。
来年も頑張って歩いてください。