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5月末頃まで開催される富士芝桜まつりのポスターを見て、急に富士山を撮影したくなった老夫婦
は早速、身支度を整えて出かけました。富士山麓へは高速道路を乗り継いで約4時間のドライブで
す。夜中に出発したので、渋滞に煩わされることもなく順調に朝霧高原に到着しました。
夫: 道の駅からの撮影は、すでに経験済みだから、今回は国道沿いの草原から撮影しようよ。
オッ、すでに先客がいるぞ。
妻: 空が少し明るくなってきたわよ。早く撮影するポジションを決めなくちゃ。
夫: 今回は残念ながら朝霧は出ていないね。
妻: どんどん空が白んできたわ。三脚のセッティングも終了。さてさて、どんな富士山の表情が
撮れるのかな?お楽しみ、お楽しみ。
夫: 太陽との勝負だ。集中しよう。
妻: これから写すのは私だけの富士山よね。My Fujisan !
二人はそれぞれが選択した場所で撮影を始めました。しかし、今朝は気温が高いせいか、富士山の
姿は薄ぼんやりとしています。こればかりは、どうしようもありません。カメラの設定を少しずつ
変えながら、シャッターを押し続けました。
映り具合をカメラの液晶画面で確認してみると納得できる写真があるような、ないような。
日の出直後にはここでの撮影を終えたのですが、芝桜まつり会場の入場開始時間までには、まだ十
分な時間があるので、田貫湖に行くことに決定。田貫湖畔の駐車場に車を置くと、逆さ富士の撮影
スポットである休暇村富士の展望デッキに向かって遊歩道を進みました。
夫: 太陽が昇ってくると田貫湖では逆さ富士が見られる。湖面が穏やかだから期待できるぞ。
妻: まだ朝の6時過ぎよ。逆さ富士が湖面に映るのはこれからね。遊歩道脇のお花を写しながら歩
くのも楽しいわ。空気もきれいだし。
夫: 着く頃には湖面に逆さ富士が鮮明に映っているといいね。
妻: 逆さ富士の写真は画面が中央で二つに割れるような構図はダメだと書かれていたわ。主役を
富士山にするのか、田貫湖にするのかを決めないといけないんだって。そう言われてもコン
テストに出す訳じゃないんだから、あまり気にしないで写すことにするわ。
夫: 展望デッキが見えてきたよ。今日は人がほとんどいないね。撮影に適した日ではないってこ
とかな?あそこから見る富士山はとても高く見えるから、僕は、それを強調する構図で狙う
よ。できれば、湖面に逆さ富士が鮮明に映っているといいんだけど。
到着した展望デッキから見ると、湖面の富士山の影は薄く、期待したような写真が撮れそうにあり
ません。そこへ地元の方が「今日の天気なら、正午ごろにはもっと逆さ富士がきれいに見えるよ」
とアドバイスしてくれましたが、芝桜まつり会場の撮影も気にかかります。
芝桜まつりの開場は朝8時です。後ろ髪をひかれつつ、駐車場に戻り始めました。そして、しばら
く進み、湖岸が広々と見渡せる場所に来た時。なんと、目の前に逆さ富士が突然、現れたではあり
ませんか!ほんの少し前に諦めた逆さ富士に、こんな形で遭遇するなんて。感激しながら、ひとし
きり撮影した後で二人は心置きなく芝桜まつり会場に向かいました。
夫: まだ8時前なのに、すでに入口の前にはたくさんの人が並んでいるよ。ここに来たのは初めて
だね。どんな雰囲気なのか楽しみだな。ポスターのような写真を狙うのが王道だろうね。
妻: エッ、ポスターと同じような写真を撮るの?でも、結局はそんな写真を撮ることになりそう
ね。主役を芝桜にするか、富士山にするか・・・アレッ?さっきも同じことを言ったような
気がするわ。来る前に読んでいた本の内容が頭に刷り込まれちゃったみたい。
夫: 開門だ。芝桜のある所までは結構歩かされるみたいだよ。オ~、芝桜が見えてきた。なかな
か広くてきれいじゃないか。
妻: まつり期間中なのに芝桜はすでに盛りを過ぎているわよ。今年は開花が早かったのね。もっ
と早い時期に来ればよかったわ。ちょっと残念。
夫: まだ元気な芝桜を見つけて写すしかないね。それにしても、外国からの、特にアジア系の観
光客が多いのにビックリだよ。
妻: 耳慣れない言葉が行き交っているわね。皆さん、とても楽しそうよ。ここは芝桜でできた富
士山と竜神池周辺が撮影スポットのようね。絞りをいろいろと換えて写してみるわ。
二人は広い会場を歩き回り、お気に入りの構図を見つける度に写真を撮りました。
夫: 富士山が少し霞んできたね。そろそろ切り上げ時かな?だけど、このまま帰るのはもったい
ないから、富士五湖のどこか一箇所くらいは立ち寄ろうよ。
妻: 子抱き富士で有名な精進湖はどうかしら?
夫: よし決まりだ。これから精進湖へ向かうぞ。急ごう。
二人は精進湖の湖畔に来ました。ラッキーです。無風とはいきませんが、湖面には曲がりなりにも
逆さ富士が映っています。しかし、更に気温は高くなり、風も出てきました。
夫: 今日の富士山撮影会はこれで終わりにしよう。
妻: そうね。十分に堪能したし、これ以上あちこち行くと、撮影枚数が増えるばかりで家に帰って
からの作業で苦しむことになりそうよ。いろいろカメラの設定を変えて撮ってみたけど、う
まくいかないわ。1枚だけでも満足できる写真が撮れているといいな~。
季節はもちろんのこと、天候や時間帯によって様々な表情を見せてくれる富士山。その日・その場
所・その瞬間にしか撮れない自分だけの富士山を写真に収める喜びは格別。たとえ、その出来栄え
が満足いくものではなかったにしても、富士を仰ぎながら過ごした時間は極上のもの。
毎日が日曜日状態の老夫婦が「あの時はこうだった、ああだった」と記憶をたどる時に威力を発揮
するのは、撮り貯めた写真。今回のMy Fujisan写真の数々も二人の思い出話に繰り返し、繰り返
し登場することでしょう。