時々、自分は正しい日本語を使っているのだろうか?と不安になることがあります。
「どっちがホント?」と気になった言葉の確認作業をしてみることにしました。
1.一所懸命? 一生懸命?・・・誤用(?)から生まれた言葉
「一所懸命」は武士が拝領した土地を命がけで守り、それを生活のよりどころに
してきたことに由来する言葉。「命がけでやる」ことが強調され、いつしか「一生懸
命」とも表記されるようになりました。今では放送、新聞、雑誌などは「一生懸命」
を用いています。もともとの意味から考えると「一生懸命」は誤用とも言えますが、
必死で頑張るということを表すには「一生懸命」の方が現代人には馴染みやすく、
発音の語呂も良いですよね。ただ、読み方が「イッショケンメイ」と「イッショウケ
ンメイ」というように異なるので、どちらも残っていくような気がします。
2.他人事・・・間違った読み方が正しくなった
「他人事だと思わずに、真剣に相談に乗ってくださいよ。」のように使います。国語
に関する世論調査では「他人事」を本来の読み方である「ひとごと」と読む人は
30.4%,「たにんごと」は54.2%でした。単純に考えて、「ひとごと」を漢字にすれ
ば「人ごと」「人事」になりそうですが、「人事」は「ジンジ」と読めるので意味が違
ってしまいます。
一方、パソコンで「たにんごと」を変換すると「他人事」と表示されます。「たにんご
と」の方が広範囲に使われているわけですから、いずれ「ひとごと」と読まれること
はなくなる運命なのかもしれません。間違った読み方でも広く支持されて使われて
いくうちに,「正しく」なるとは。果たして、これでいいのでしょうか?
3.役不足・・・意味が真逆に取り違えられた言葉
「役不足」の本来の意味は「本人の力量に比べて与えられた役目が軽すぎること」
です。調査によると本来の意味を選んだ人が40.3%,「本人の力量に対して役目が
重すぎること」を選んだ人は50.3%でした。「役不足」は、本来とは真逆の意味が
かなり支持されているのです。「力量に比べて役目が不足している」と「役目に比
べて力量が不足している」の、どちらの意味にも受け取られることが混乱の原因な
のでしょう。
「役目に比べて自分の力量が不足している」場合には「力不足」、「力量不足」という
言葉を使うのが良いのではないでしょうか。「役不足」は本来の意味で使って欲しい
ものです。
「国語に関する世論調査」では「役不足」について、平成14年と18年に調査しています
が、誤用の「役目が重すぎる」は62.8%から50.3%に減り、正解の「力量に対し役目
が軽すぎる」が27.6%から40.3%に増えているのです。
これは、調査項目に取り上げられた結果、本来の意味が広く知れ渡ったのが大きな理
由だと記されていました。
参照資料:文化庁月報 「国語に関する世論調査」平成25年1月号(No.532)
文化庁が国語(日本語)施策の参考とするため、「現代の社会状況に伴う、日本人
の国語意識の現状」について、平成7年度から毎年実施している世論調査です。