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ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

六人の僧 お江戸でござるか? その1

2014-08-25 08:20:09 | 日記




昔、布教と修行のため、托鉢をしながら全国を行脚している六人の僧がおりました。
ある日のこと、急に周囲が暗くなり、叩きつけるような雨が降り出しました。
雨宿りをする場所を探しながら歩を速めようとした途端、ピカッ!ドカ~ン!
あまりの衝撃に、耳を塞いで地面にしゃがみました。
ところが、その後はカミナリの光も音もせず、深い霧が立ち込めているではありませ
んか。

一の僧:いつの間に、こんな霧の中に迷い込んでしまったのだろう?
二の僧:全く何も見えないな。それに頭の中がボヤ~ンとしているぞ。
三の僧:おや?少しずつ霧が晴れてきた。目の前にあるのは橋のようじゃな。
四の僧:それも立派な橋だ。なんとなく見覚えのある景色だが、勘違いかな?
五の僧:ワシにも見覚えがある。もしかしたら江戸ではござらぬか?
六の僧:江戸じゃと!人っこ一人おらぬではないか。お江戸であるはずがない。
五の僧:シッ、向こうの辻で人の気配がする。取り敢えず身を隠したほうが良さそうだ。

六人の僧が橋から一番近いところにある家の軒下に滑り込んだ時、タッタッタと駆け足
で数人の子供たちがやってきて、橋の上でおしゃべりを始めました。

子供A:この橋は日本橋っていう名前なんだってね。
子供B:そうだよ。ドラマの「水戸黄門」や「仁」で見たことがあるだろ?
子供A:うん、あるよ。♪ お江戸日本橋 七ツ立ち~ ♪ の日本橋だよね。
子供C:岸辺につないである、あのお舟に乗ってみたいな。
子供B:ダメだよ。撮影用なんだから。ここは見て楽しむだけの場所だよ。
子供C:ああ、そうだったね。

四の僧:あの子たち、日本橋と言わなかったか?
五の僧:確かにそう言った。やはり、ここはお江戸でござるぞ。
二の僧:しかし、あの子たちの着物は変だな。履物も背中の袋も見たことがない形の
      ものだ。
六の僧:話の内容も理解しがたいし、どうも様子がおかしいぞ。

その時です。三の僧が被っていた笠が風に煽られて、橋の方へ飛ばされてしまったの
です。

子供D:アレッ!何か、飛んできたよ。これって、時代劇で見たことがあるよね。
子供B:ウン。ネェ、あそこを見てごらん。あの家の陰で黒いモノがヒラヒラしているよ。
子供A:ホントだ。何だろう?

子供たちは興味津々な面持ちで、僧たちが隠れている場所にやって来ました。

子供A:なんだ、お坊さんじゃないですか。コンニチワ!
一の僧:コ、コ、コンニチワで、ござる。
子供C:今日は撮影?なんていうドラマなの?
二の僧:サツエイ・・・ドラマ・・・???
子供B:リハーサルは終わったの?衣装がすっかり板についてるね。
三の僧:リハーサル・・・どうも、言っていることが理解できぬな。
子供D:時間があるなら、僕たちと一緒にお城に行こうよ。皆で写真を撮りたいな。
四の僧:シャシン?よくわからないけど、行ってみるとするか。
五の僧:オ~、城だ!しかし、お堀がいささか狭いようじゃな。
子供B:ゼイタクを言っちゃあイケナイね。ここは「ワープステーション江戸」だよ。
    ロケ用に作った建物なんだから。
六の僧:ロケヨウ???ワシ等の知らない言葉がどんどん出てきて、意味がわからん。

六人の僧たちはひとかたまりになって相談しました。
そして、この子たちと行動を共にしながら、状況を把握することにしたのです。

子供B:ネェ、お坊さんたちは俳優さんではないんじゃないの?
六の僧:ハイユウ?またしても意味がわからないけど、ワシ等は本物の僧じゃよ。
子供A:エ~ッ、本物のお坊さんなの?だったら何をするために、ここへ来たの?見学?
五の僧:それがな、ものすごいカミナリの光と音がしたことは覚えておるのじゃが、その
      あとの記憶が無くて、気付いたら、さっきの橋のたもとに立っておったのじゃ。
子供C:ヘ~、ちょっとしたミステリーだね。
子供B:お坊さんたちは大人なのにロケとか、リハーサルとかドラマっていうのが理解で
     きないようだね。もしかしたら、現代人ではないのと違う?
四の僧:現代人?どういうことじゃ?
子供B:今は平成26年、2014年だよ。
一の僧:ヘイセイって何だ?
子供C:平成を知らないの?やっぱり変だ。もしかしたら、時空間を飛び越えちゃった
      の?
子供B:まるで「仁」の世界みたいだな。そうだとしたら、急がなくっちゃ。
三の僧:何を急ぐのかな?
子供D:早く元の時代に戻る方法を考えなきゃいけないんだよ。
四の僧:一体、どうすれば良いのかな?
子供B:困ったな。僕にもどうすればいいのか、わかんないよ~。

さあ、困りましたね。六人の僧は無事に元の時空間に戻ることができるのでしょうか。
この続きは、また後日。

夏、といえば・・・

2014-08-18 08:26:55 | 日記



暦上では10日も前に立秋になったとはいえ、まだまだ暑さは衰えることを知らないよ
うです。台風による強風でリンゴの実が全て地面に落ちてしまった庭を眺めながら、
ティータイムを過ごす老夫婦。今日の話題は何でしょうか?

妻:お盆にお墓参りを済ませると、「あ~、もうすぐ夏が終わるんだな」って感じるわ。
夫:エッ、ホント!太陽は照りつけるし、昼寝をしないと体力が持たないほどなんだか
   ら、僕にとってはまだ真夏だよ。
妻:体感じゃなくて気分的にそう感じると、言っているのよ。
夫:あぁ、そういうことか。
妻:つい最近までジーィジーィと賑やかだったアブラゼミが、急に鳴りをひそめたのに気
   付いてる?
夫:そう言われれば、そうだね。ちょっと前からはミンミンゼミの声がしてるよ。次はツク
   ツクボウシの出番さ。
妻:そうね。昨日はシオカラトンボとムギワラトンボが庭で羽根を休めていたから、赤トン
   ボが現れるのはもう少し先かも。
夫:我が家の庭は、そこはかとなく季節を感じさせてくれているんだね。
妻:「夏」といえば、あなたは何を思い浮かべる?
夫:ひまわり、ギラギラ太陽、かき氷、汗、風鈴、流しそうめん。
妻:食べ物が入っているのがあなたらしいわ。私は金魚鉢の中で泳ぐ金魚と盆踊り。
夫:金魚といえば、8月初めに用事があって東京に出かけた時、ついでに立ち寄った日
   本橋のアートアクアリウムで見た金魚。あれには驚いたね。
妻:ウンウン、一種のカルチャーショックだったわ。アートというよりも、空間演出って感じ
   だったけど、詰めかけた人の数が半端じゃなかったね。展示方法を工夫して、うまく
   宣伝すれば、金魚も人気イベントになるんだな~って、驚いちゃった。
夫:本音を言えば、人が多すぎて、ちゃんと楽しむことはできなかったよ。印象に残って
   いるのは、久しぶりに見た「出目金」くらいだね。
妻:ハハハ、確かに鑑賞したとは言えなかった。人の流れに押されて、あっという間に出
   口に到着してたわ。プロジェクションマッピングもあったようだけど、居並ぶ人が多く
   て全く見えなかった。仕方なく水槽の中に沈められた「獺祭(だっさい)」の酒瓶とそ
   ばを泳ぐ金魚の姿を眺めて出てきたのよね。会場では様々なガラスの器とカラフル
   な照明が印象には残ったけど、「金魚さんたちは大丈夫?」って心配になったわ。
夫:そもそも、カップル達が浴衣でも着込んで、デートを楽しむ場所のような気がしたよ。
妻:私たちは場違いな所に行っちゃったってことかしら?盆踊りの話になるけど、タイミン
   グが合わなくて今年は郡上おどりに行ってないわね。ここ15年あまり、毎年通って
   いるから、9月初めの踊り納めの日までに何とか行くチャンスがあればいいのだけ
   ど。
夫:今年は無理かもしれないよ。近場で開催される盆踊りにでも行ってみようか。
妻:それで我慢しようかな?年に一度は浴衣を着て、下駄を履いて踊らないと、物足り
   ないから。あら!シジュウカラがリンゴの木にやって来たわ。久し振りよ。
夫:オー、たくさん来たな。小鳥の仕草って可愛いもんだね。
妻:あのりんごの木は小鳥たちに人気なのよ。根元のほうにムロが出来始めたから、
   そのうちに樹勢が衰えてくるかもしれないわ。何か、良い対策はないかしら?
夫:一度、調べてみよう。今年はいつもより、たくさんの実を付けたから、お礼肥をたっ
   ぷりと与えないといけないよ。来年も可憐な花を見たいし、小さくても新鮮なリンゴ
   を味わいたいからね。 そうだ、今、思い出したよ。「夏」といえば、尾瀬だよ。
   しばらく行ってないな。来年こそは夏の尾瀬を歩きたいものだ。
妻:♪夏が来~れば、思い出す~♪
夫:そうそう、それだよ、それ。絶対に行こうね。
妻:この歳になると、身体が言うことを聞いてくれるうちに行っておかなくちゃ。

巨大花が咲く森 

2014-08-11 08:20:01 | 日記


真夏の暑さにウンザリしていた動物村の仲良し3人組は涼しさを求めて、村の中で一番
高い山の頂上にやって来ました。周囲に広がる美しい景色に感動しながらも、やはり
そこは育ち盛り。座り心地の良さそうな岩に腰掛けて、なによりも気になるお弁当を食
べ始めました。足元から吹き上げてくる涼しい風が、山登りの疲れを癒してくれます。
その風に乗って、甘い香りが漂ってきました。

ポン吉:いい香りがしてきたぞ。これは花の匂いだよね。
コン太:うん、確かに花の匂いだ。あの森の方から漂ってくるようだけど、崖が多くて危
     険だと言われている場所じゃないのか?
ミミ :でも気になるわ。ポン吉さんの匂い付けをしながら、少しだけ行ってみましょうよ。

3人組は甘い香りの誘惑に負けて、森へ入って行きました。香りが段々強くなるのに、
花は見つかりません。3人組は危険だということをついつい忘れて、森の奥に進んで行
きました。するといつの間にか、あたり一面が霧に包まれて、3人組は立ち往生してし
まいました。

ミミ :何も見えなくなってしまったわ。匂い付けを頼りに戻ったほうがいいわね。
ポン吉:ところがさ、花の香りが強くて、僕の匂いがわからなくなっちゃったんだよ。
コン太:困ったな。なんとかしなくっちゃ。見て!あそこだけ明るいよ。霧の晴れ間じゃな
     いか?あそこに行けば周りの様子がわかるかもね。

3人組は明るい空間を目指して進み、やっと霧の外に出ました。周りを見回した3人組は
ビックリ仰天、その場に座り込んでしまいました。そこには自分たちよりも、はるかに背
丈の高い草が生え、驚くほど大きな花が咲いていたのです。

ミミ :ヒャー!こんなに大きい花は見たことないわ。あの香りの元はこの花たちね。
ポン吉:おい、みんな伏せろ!大きな影が横切ったぞ。襲われるかもしれないから隠れ
     ろ。
コン太:アッ!あれはトンボじゃないか?僕たちより何倍も大きいトンボだ。あの足で捕え
     られたら逃げられないよ。
ミミ :ずっと以前、裏山で巨大トンボを見たでしょう。あれと同じじゃないの?
コン太:いや、あれは人間が作った飾り物だったから動かなかった。でも、今のは空中を
     飛んでいたぞ。だから本物だ。
ポン吉:早く戻りたいのに、帰り道がわからなくなっちゃったよ。どうしよう。
ミミ :それにしても、ここの花はどうしてこんなに大きいのかしら?
コン太:静かに!今度は嫌な羽音が聞こえてきたぞ。ハチだ。巨大なハチだ。隠れろ!
ポン吉:羽音が少し静かになったよ。ハチが花の中に入ったのかな?
ミミ :ハチは蜜を吸ったらすぐに花から出てくるわ。早く逃げなきゃ。キャ~、また向こ
    うから別のハチがやってきた。こわいよ~。

3人組は巨大花の太い茎の根元に身を寄せ合って、震えています。すぐ近くを巨大な
ダンゴ虫やアリたちが通りましたが、どうやら見つからずにやり過ごせたようです。
3人組は自分たちが巨大な花の咲く森に迷い込んだことを悟りました。

ポン吉:ねえ~、聞き覚えのある音楽が聞こえてこないか?
ミミ :うん、聞こえる。だんだん音が大きくなっているから、近づいて来ているのよ。
コン太:以前、出会った花の精の音楽隊に間違いないようだな。助けてもらおうよ。
     でも、僕たちがここにいることを、どうやって知らせたらいいのかな~。
ポン吉:花の精がもっと近くに来るのを待って、飛び出そうか。
ミミ :ダメよ。先にトンボやハチに見つかったらどうするのよ。
コン太:だけど何とかしなきゃ。こうなったらイチかバチかだ。3人一緒に大声を上げて
     呼んでみようよ。花の精なら僕たちの言葉がわかるはずだから、気付いてくれ
     るさ。だって友達だもの。

まもなく、花の精の音楽隊が3人組にとっては懐かしい音楽を奏でながら姿を現した時、
思い切って大声で助けを求めると、花の精はすぐに気付いてくれました。
ところが、間近に来た花の精たちを見て、またしてもビックリ仰天。ナント、花の精たちは
ミミたちと同じ大きさになっているではありませんか。

花の精A:3人組さん、あなたたち、ずいぶん小さくなっちゃったのね。一体どうしたの?
ミミ  :私の方が聞きたいわ。前に会った時は、私の手のひらに乗るぐらいだったあなた
      たちが、どうしてそんなに大きくなっちゃったの?
花の精B:僕たちは以前と変わっちゃいないよ。もしかしたら、君たちは不思議の森の霧
      に囲まれなかったかい?
ポン吉 :確かに霧には包まれたよ。だけど、それがどうしたっていうの?
花の精C:やっぱりそうだ。僕たちが大きくなったのではなくて、君たちが小さくなったん
       だよ。あの霧は何でも小さくしてしまうんだ。
       そこを通ったから、君たちの身体が小さくなってしまったんだよ。
コン太 :僕たちの方が小さくなったって?ウ~ン、よく理解できないけど、元に戻る方法
      はあるのかな?知っていたら、教えてよ。
花の精A:ちょっと待っててね。ミツバチさんに頼んで巨大花の花粉を少し分けてもらうか
       ら、それを舐めたあと目をつぶってごらん。目が開いた時には、きっと元の大
       きさ戻っているはずだよ。僕たちに任せて!

花粉を舐めた仲良し3人組は花の精たちの言ったとおり、目をつぶりました。そして、目
が開いた時には、お弁当を食べたあの岩の上に座っていたのです。

ミミ :あれっ!どうしてここにいるの?私たち、元の大きさに戻っているのかな~?
コン太:岩の大きさがお弁当を食べた時と同じだから、元の身体に戻ったんだと思うよ。
     でも、どうやってここまで帰って来たんだろう。
ポン吉:よくわからないけど、花の精さんたちに助けてもらったことだけは確かだね。

3人組は周囲の景色や、時折飛んでくるトンボがいつもの大きさかどうかを確認しながら
下山しました。村の入口で長老の姿を見て、ようやく元の大きさに戻っていること実感し
たのです。それまでは、自分たちが小さくなったままではないかと、内心ビクビクしてい
たものですから、ヤレヤレと胸をなでおろしました。

土用の丑の日

2014-08-04 10:07:36 | 日記



照りつける太陽の熱に負けてしまいそうな夏。日本人の楽しみのひとつは「土用・丑の
日」にウナギの蒲焼を食べること。2014年は7月29日がその日に当たる。ウナギの蒲
焼を買いにスーパーマーケットへ出かけた夫婦が目にしたものは・・・

夫:さすがに今日はウナギの蒲焼がたくさん並んでいるぞ。
妻:どれにする?中国産それとも国産。長焼き?串焼き?
夫:やっぱり、国産で一本丸ごとの長焼きだろ。
妻:値段次第よ。アラ、500円程度の長焼きが置いてあるわ!中国産にしても安すぎ
   るわね。
夫:どれどれ。最近、老眼が進んで小さい字が読めないんだよ。読んでくれるかな?
妻:ちょっと待って。「お豆腐でできたヘルシー蒲焼・豆腐ちゃん蒲焼」って書いてある
   わ。お寺の精進料理で名高い「ウナギの蒲焼もどき」を商品にしたってことかしら。
夫:ウンウン、聞いたことがあるよ。海苔を皮に見立てるアレだろ?
妻:ついに「蒲焼もどき」が商品化されたのね。ウナギの稚魚が激減して、うなぎその
   ものの値段が高騰しているところに、消費税の8%が追い討ちをかけて、庶民に
   とっては高嶺の花になってしまったことを象徴しているような商品だわ。
夫:味はどうなんだろうね。
妻:ネエ、2,000円位の鹿児島産・長焼きウナギと、この「豆腐ちゃん蒲焼」を買って、
   食べ比べてみる?
夫:そうだね。それがいい。

食卓に並んだ2種類の蒲焼。タレはどちらも同じ蒲焼のタレをかけてあります。気になる
のは「豆腐ちゃん蒲焼」の味ですね。

夫:見た目はあんまり変わらないよ。
妻:そりゃそうよ、似せて作ってあるんだもの。問題は味。
夫:モグモグ。まあまあの食感だ。さっぱりしすぎだけど、タレが効いてるね。
  でも、海苔はやっぱりウナギの皮には化けられなかったよ。
  似ているのは色だけだ。
妻:まだまだ改良の余地アリという感じ。それにしても、蒲焼のタレはスグレモノだわ。
  このタレが「今、あなたはウナギを食べている。」と私に呪文をかけているみたい。
  「ウナギもどき」でも、このタレをかければウナギ風味になっちゃう。
夫:では、いよいよ本物のウナギをいただくことにするぞ。
   ウ~ン、やっぱり旨みに格段の差があるね。本物のウナギを食べることができた
   から、今年の夏も元気に乗り切れそうな気がするよ。
妻:年々、ウナギの値段が高くなるから、私たち庶民の口には入らなくなる日が近いか
   も。
夫:ウナギの稚魚・シラスウナギはマリアナ諸島あたりで誕生することが解って以来、
   乱獲が続いて一気に生息数が減ってしまったらしいね。
   稚魚がいないと養殖もできないから、少ない稚魚の値段はどんどんつり上がって、
   まさにウナギのぼりの状況だよ。
妻:ハハハ、ウマイうまい。座布団一枚ね。
夫:だけど、ニホンウナギが国際保護連盟(IUCN)のレッドリストに登録されたことで、
   天然のシラスウナギは益々捕獲しづらくなるんじゃないかな。
妻:何か良い手立ては見つからないものかしら。
夫:うん、希望はあるみたいだよ。これまでのように天然稚魚を飼育池で成魚までに育
   てる養殖とは異なる「完全養殖」だ。人工的に産卵・孵化させた稚魚を成魚まで育
   て、再び産卵・孵化させる方法だよ。これが軌道に乗れば、安定的にウナギを生産
   できるんだ。
   更に量産化することに成功すれば、日本人の夏の食文化に欠かせない蒲焼の未
   来は明るくなるはずだ。
妻:その研究は順調に進んでいるのかしら?
夫:そう簡単には行かないようだよ。天然シラスウナギを使っての養殖に比べて、かなり
   費用がかさむらしいし、人工的に生まれたシラスウナギの生存率も低いようだから
   ね。
妻:「完全養殖」に取り組んでいる人たちに「ガンバレ~!」って言いたいわ。
   話が「豆腐ちゃん蒲焼」に戻るんだけど、カロリーを気にしている人にとっては、うれ
   しい製品だと思ったの。正真正銘のうなぎの蒲焼はカロリー過多になるので、我慢
   しなくちゃならないけど「ウナギもどき」なら、日常の献立にだって安心して出せるで
   しょ。豆腐に加える材料を更に工夫して、もっとウナギの食感に近づけることができ
   たら、満足度も高くなるわ。タレと粉山椒である程度は蒲焼風になるんだから。
夫:カロリーか。
妻:一年に一度くらい、カロリーを気にしないでウナギを食べたっていいじゃない・・・
   とでも言いたそうね。
夫:ウン、その通り。僕の一番の心配は、来年の夏に「もどき」ではなく、本物のウナギ
   の蒲焼を食べさせてもらえるかどうかってことだね。

世界のウナギの7割が日本人の胃袋に収まっているそうですが、ウナギ資源の未来や
「ウナギの蒲焼もどき」についての会話が弾んだ、真夏の「土用・丑の日」でした。