茨城県は全国でも有数のイチゴの産地で、全国7位の生産地です(令和3年出荷量)。鉾田市、
行方市、筑西市などを中心に、県内全域で栽培されており、各地域では市場への出荷から、
直売、摘み取りも積極的に実施しています。茨城県内におけるイチゴの栽培施設は、複数の
パイプハウスを組み合わせた「パイプハウス群」として構成されている場合が大半を占めて
います。パイプハウス群を利用するイチゴ経営は、作業効率は低いものの棟ごとに作型別の
管理が可能であることや、作業やリスクの分散に対応しやすいといったメリットがあるとと
もに、生産性も大規模ハウスに劣らず高い収益性が得られている事例が多数あります。さら
に、イチゴは嗜好性の高い品目であるため、直売経営体も多いことが特長です。過去に茨城
県のブランドイチゴ「いばらキッス」に特化したイチゴの紹介をしていますが、茨城県では
その他にも多くの品種を栽培しています。今回は県内で栽培されているイチゴの品種とその
特徴、そして、イチゴの摘み取りができるスポットなどを紹介します。
<世界のイチゴ生産量ランキングと品種>
日本のイチゴは「世界一おいしい」と評判で、輸出も始まっていますが、まだまだほとんど
が国内消費されているのが現状です。生産量1位は中国で約338万トン。2位はアメリカ、3位
はトルコです。日本は11位です。世界的に有名なイチゴの品種を紹介します。
(1)ラナイ: 食味が日本のイチゴに似ていると言われています。
(2)デルレイ:世界的に知名度が高い品種です。
(3)M-284: 他の品種とは異なる特徴を持っています。
(4)アデレード: 日本のイチゴと似た食味を持つ品種です。
(5)カマリロ: 世界的に有名な品種の一つです。
(6)パサディナ: 食味が良いとされています。
この中にご存知の品種はありましたか。
日本では夏~秋の時期に輸入イチゴが店頭に並ぶ時期がありますが、そのほとんどがアメリカ
産と韓国産です。中でもアメリカ大手企業のDriscoll’s(ドリスコル)社 のカリフォルニア産
イチゴが一番多いと言われています。品種についてはあまりこだわっていないとのこと、それ
は生食よりジャムなどの加工品に使う方が圧倒的に多いからでしょうね。
<国内イチゴ生産量ランキングと品種>
一方、日本のイチゴ生産は各都道府県で熾烈な競争が繰り広げられています。2021年産のイチ
ゴの生産量ランキングでは、1位が栃木県で2万4,400トン(14.8%)主要品種は「とちおとめ」
や「スカイベリー」、「とちあいか」。2位は福岡県で1万6,600トン(10.1%)で「あまおう」。
3位は熊本県で1万2,100トン(7.3%)で、「ゆうべに」や「ひのしずく」、「恋みのり」。4位
は愛知県で1万1,000トン(6.7%)で「とちおとめ」、「章姫」、「紅ほっぺ」、「ゆめのか」。
これらの上位県が全体の7割弱の収穫量を占めており、収穫量が1万トン以上の6県で全体の52%
を占めています。茨城県は7位で、1万トンに届かず9,220tトン(5.6%)。主要品種は「いばら
キッス」、「とちおとめ」、「ひたち姫」、「パインベリー」です。日本のイチゴは、新品種
の開発が盛んで、各県で主要品種が異なっていますね。それだけ多くのオリジナル品種が育成
されているのです。日本のイチゴが世界で一番おいしいと言われるゆえんですね。国内産地の
特色ある品種を食べ比べるのも興味深いですね! 国内のイチゴ品種に関してはくわしい方も多
いでしょうね。
<イチゴの豆知識>
1.日本で食べられるようになったのはいつから?
江戸時代末期の1830年代と言われています。当時はオランダ船によって持ち込まれたいちご
が、オランダイチゴと呼ばれていました。その後、明治時代に農業が近代化され、外国品種
を使った営利栽培が始まりました。
2.いちごは野菜なの?果物なの?
園芸学では、木の実(木本性)は果物(果樹)、草の実(草本性)は野菜と分類されます。
草本性であるいちごは野菜とされていますが、実際は果物と同じように食べられているため、
「果実的野菜」とも呼ばれています。メロン、スイカ、バナナも同じです。
3.いちごの表面のツブツブは果実?
いちごの表面にあるツブツブは種ではなく、ひとつひとつが果実なのです。一粒のイチゴは
200個から300個の果実が集まった「集合果」です。私たちが食べている甘い部分は、実際は
茎の先端の花床が膨らんだ偽果(ぎか)です.
4.いちごの栄養成分は?
いちごはビタミンCが豊富で、みかんやグレープフルーツの約2倍。葉酸も多く含まれていま
す。また、アントシアニンというポリフェノールも豊富で、目の働きを高めたり、眼精疲労
を予防したりする効果が期待できます.
5.いちごの保存方法は?
「生で食べるとき」:パックから出し、重ならないようにポリエチレン袋などに入れて、冷蔵
庫で保存。水洗いした場合は、カビが生える可能性があるので水分を取
ってから保冷。
「ジャムにするとき」:いったん冷凍するのがおすすめ。生のいちごを使用するよりも、なめ
らかにできあがる。冷凍するときは、いちごを水洗いしてヘタをとり、
水分も取り除いてフリーザーバッグに入れて冷凍室へ。
6.毎月22日はショートケーキの日
カレンダーを見ると22日の1週間前が15日。15(イチ・ゴ)が上にのっている22日が、ショート
ケーキを連想させることからショートケーキの日とされています.
7.イチゴは「一季なり」と「四季なり」がある。
(1)一季なりイチゴ:春に実が成ります。その後、来季のためにランナーがたくさん伸びて新しい苗
を作ることに力を注ぎます。一季なりイチゴは、約2ヶ月間(5月~6月の品種が多い)
収穫できます。寒さに当てないと花が咲きにくい特性があります。全国で栽培されて
いる商用のイチゴ栽培は、ほとんどがこの一季なりです。
(2)四季なりイチゴ:夏から秋にかけて実が成ります。地域や品種によって異なりますが、一季なり
よりもランナーの数は少ないです。温度や日照条件にあまり左右されずに花芽分化が
行われ、次々に開花・結実して収穫できます。真夏でも花芽分化が続く特徴がありま
す。四季なりイチゴは、長期間にわたって美味しい実を楽しめるため、家庭菜園で育
てるのにおすすめです。
8.いちばん甘いのは先端部分
イチゴは部位によって甘さが違います。最も甘いのは先端部分。先端のほうから熟していくため、
甘さが蓄積されるのだとか。確かに、ヘタに近い部分は少し酸味が強いですね。一口でパクっと食
べたくなるいちごですが、ぜひ少しずつ口に含んで味の違いを確かめてみてくださいね。
9.あまり知られていませんが、イチゴはバラ科の植物です。
バラ科の植物の特徴は、花びらとガクが5枚であること。実だけでなく花もぜひ観察してみてくだ
さいね。ちなみに、イチゴだけでなくリンゴやナシ、ビワなどもバラ科に分類されます。
10.日本一収穫量が多い品種は「とちおとめ」
関東から東北で栽培される「とちおとめ」は収穫量日本一。鮮やかな赤と甘みが特徴で、子ども
からお年寄りまで食べやすいいちごです。とちおとめは主に関東で消費されていますが、関西で
は「あまおう」が主流です。いちごにはたくさんの品種があるので、味や見た目にどんな違いが
あるのか食べ比べてみたいですね。
11.収穫や輸送でも進む技術革新
①手間のかかるいちごの収穫作業の自動化に取り組んだのが農研機構(国立研究開発法人 農業・
食品産業技術総合研究機構)です。2013年に開発した「イチゴ収穫ロボット」は、高設栽培す
るいちごを自動的に収穫できる装置です。
②選別やパック詰めの作業も労力がかかるうえ、経験を要する作業ですが、農研機構はこれにつ
いても2014年に、収穫箱に入れたいちごを自動的に取り出し、大きさを判別して、出荷容器に
向きを揃えて並べられる「イチゴパック詰めロボット」を開発しています。
③輸送でも新たな技術が登場しています。硬い果皮を持たないいちごは傷つきやすいため、果実
同士や果実と包装が触れることで表面が損傷してしまいます。とくに傷みやすいのが完熟した
いちごです。また近年、大きな粒のいちごも人気となっていますが、通常のパックに収めるこ
とができません。こうした課題を解決できるのが、宇都宮大学発のスタートアップ企業アイ・
イート(株)が開発した「フレシェル」です。完熟したものや大粒のものを保護しながら輸送
できる専用の容器で、収穫からパック詰めを経て消費者の手元に届くまで、いちごの可食部を
保護するため、傷みを抑えることができます。イチゴ栽培の風景も将来は様変わりしそうです。
<茨城県で生産量の多いイチゴの品種>
1.いばらキッス: 茨城県で8年の歳月をかけて開発し、平成24年(2012年)に品種登録されたいちごで
す。果肉がしっかりとした「とちおとめ」を母親に、甘くて大きい「レッドパール」と、酸味
が少なく甘みが強いやわらかな「章姫(あきひめ)」の掛け合わせを父親に交配して誕生しま
した。一番の特長は糖度と酸味のバランスが良く、濃厚でジューシーな味わいです。生産者に
よる毎日の細やかな水や肥料、温度の管理により美しい三角形の果実を出荷しています!生産
者の工夫と努力が詰まったイチゴは絶品です!主な産地は鉾田市、行方市、小美玉市などで、
旬は12月~4月(ピークは2月~4月)です.
2.とちおとめ: 栃木県農業試験場で、紅ほっぺとオーリンズの交配によって誕生しました。生産量日本一
の栃木県でも80%以上のシェアを誇る、いちご界のスーパースターで、茨城県でも多く栽培さ
れており、生産されるイチゴの多くを占めます。糖度が高く、ほど良く酸味があるのが特長で、
果肉もしっかりしていて美味しいイチゴです。
3.ひたち姫:平成20年(2008年)に品種登録された茨城県のオリジナル品種です。糖度が高く、酸味が少
ないので、甘く感じられ、歯ざわりが良く、サクサクとした食感が特長。ひと粒でも大満足な
食べ応えがあるイチゴです。
4.バインベリー: 完熟での収穫にこだわった、JA常陸のブランドイチゴです。品種は「とちおとめ」で、
鮮度を保つためにつる(バイン)を付けたまま朝採りで収穫した後に、素早く冷却しているの
で、実がしまっていて果肉はしっかり丈夫です。豊かな甘みと香りが口いっぱいに広がります。
5.やよい姫:平成17年(2005年)に品種登録された群馬県生まれのイチゴ。果実はオレンジ色がかった
赤色。酸味が控えめで、甘みが強いいちごです。茨城県でも広く栽培されています。
<県内でイチゴ狩りが楽しめるスポット>
1.来場者10万人突破!日本最大級の「空中いちご園」グランベリー大地
常総市に2022年4月にオープンした日本最大級の「空中いちご園・グランベリー大地」は宙に浮かぶ
イチゴを立ったまま食べる新感覚のいちご狩りスポットです。約19万本のいちごが皆様をお待ちして
います。いちごの品種も豊富で、甘さと酸味のバランスが良い「とちおとめ」や「あまおとめ」、高
い糖度と優れたバランスを持つ「やよいひめ」などがあります。観光農園の営業時間は通常は9:30か
ら17:00までですが、夜のいちご狩り開園日は20:00まで受付が行われています。予約は不要ですが、
いちごが無くなり次第終了となります。今シーズンのいちご狩りは12月10日(日曜日)からスタート!
今年はペット同伴可のレーンのほか、茨城県オリジナル品種「いばらキッス」や「かおり野」など4品
種が登場し、全9種類のいちごを日替わりで楽しめます。建物正面の芝生エリアには全長約3メートルの
巨大いちごオブジェが登場!SNS映え間違いなしです!
2.ストロベリーランド筑西・・・道の駅でイチゴ狩り
道の駅グランテラス筑西のすぐ南側あるいちご農園。こだわりの土で育ったおいしいイチゴを貸切りで
イチゴ狩りが楽しめます。やよい姫+白イチゴのOKプラン「30分食べ放題」、やよい姫・いばらキッス
・ひたち姫・紅ほっぺ・女峰・おいしいCベリー・とちおとめ+白イチゴの食べ比べが出来るDXプラン
「30分食べ放題」が選べます。施設内には動物ふれあいハウスが!羊・ウサギ・モルモットに餌やり体
験やこどもネコカフェがありお子様にも大人気です。道の駅筑西に隣接しており、ファミリーに大人気!
のんびりいちご狩りができます。
3.星野リゾートBEB5土浦「BEBいちごパーク」
茨城県オリジナル品種「いばらキッス」を楽しみつくす!「開催期間」2024年1月15日(月曜日)~4月
15日(月曜日)「居酒屋以上旅未満」の体験を提供する「星野リゾートBEB5土浦」は、2024年1月15日
から4月15日までの期間、茨城県オリジナル品種「いばらキッス」を楽しみ尽くす「BEBいちごパーク」
をオープンします。茨城県が8年の歳月をかけて開発されたオリジナル品種「いばらキッス」を楽しみ尽
くすため、パブリックスペース「TAMARIBA(タマリバ)」が「BEBいちごパーク」に変身!今年は「い
ばらキッス」を使用したスイーツとして、自分で作る「いちごわたあめ」が新登場。スイーツを食べるも
よし!いちごに囲まれた空間で写真を撮るもよし!オリジナルのいちご自転車に乗るもよし!様々な方法
で「いばらキッス」を楽しめます。
4.茨城県アンテナショップは1月中旬からいちご尽くし!
茨城県アンテナショップ「IBARAKIsense(イバラキセンス)」では、1月より、「いばらキッス」のほか
県産いちごの生果販売を開始!また、店内のカフェコーナー「BARAcafe」では、県産いちごを贅沢に使用
したスイーツの提供をスタート!定番メニューのほか、毎年大人気のパフェがパワーアップして登場します!
<イチゴ栽培専門の村田農園>
茨城県鉾田市の村田農園はイチゴ専門農家です。村田農園で栽培されているイチゴは、その味や品質の高さから、
いつしか「村田さん家のいちご」と呼ばれ、果実専門店、超一流ホテルやパティシエと多数の取引があります。
農園は東京ドームの野球場の広さに、パイプハウス群47棟で栽培しています。
村田農園のすごいところは、茨城県の10a当たりのイチゴ栽培平均収穫量は3,510kgなのですが、これに対し、村
田農園の収穫量は平均値の2倍強で、イチゴの土耕栽培としては限界収量だとも言われています。こうした土、苗、
水、すべてにこだわり、品質向上に努める村田さんでも、一連の栽培管理は経験と勘によるところが大きく、技
術の伝承が大変難しい部分があるようで、新しい技術への挑戦にも積極的です。2015年には、品質の均一化や省
力化のため、IoT、AI(人工知能)を利用する「ゼロアグリ」というシステムを導入しました。このシステムはま
ず、土に棒状のセンサーを埋め込み、水分量、肥料の濃度、地温を測定します。そしてその情報を「ゼロアグリ」
に送ると、土壌の状態をAIが判断し、適量の水や栄養を畑に供給するシステムです。畝(うね)の間にはわせた
チューブの穴から点滴のように水と肥料が出ます。機械は考えるヒントをくれる、と表現する村田さんは、「示し
てくれる数値を参考にしつつ、日々苗と対話しています。若い世代に技術を継承するためにも、栽培データを蓄積
し、AIによるコントロールに取り組んでいくつもりです」と言います。
村田農園では海外からの研修生も受け入れていて、現在はインドネシアからの実習生が住み込みで働いています。
村田さんは「繁忙期には地元の高校生たちもアルバイトで来てくれるんです。うちで働いたことがきっかけになっ
て食品関係の仕事を目指すようになった子もいるんですよ」と目を細めます。さまざまな人たちがチーム一丸とな
っていちご作りに励んでいます。
農業を次世代の人が始めたくなる、かっこいい仕事にしたい、という思いを持つ村田さんは、経営の多角化にも熱
心です。農園の敷地内には、いちごを使ったドリンクを提供する「畑のラウンジ Hati-Hati」という直売所兼カフェ
を構え、オリジナル商品も開発。赤いちごと白いいちごのコンフィチュール(果実の形が残るジャム)は、贈答用
として人気の一品です。「農業はやり方次第、夢のある仕事です」と村田さんは力強く言います。
是非、おいしさ弾ける茨城のイチゴをご賞味あれ!