茨城県はタコの加工量が日本一!特に、ひたちなか市内にある那珂湊水産加工団地には、
多くのタコ加工会社が立ち並び、ここから全国各地、世界各国に「蒸したこ」や「酢た
こ」といったタコの製品が届けられています。加工原料のタコの入手はその生産量の多
さから国内外からやってきます。今回ご紹介するのは入手先の一つである、茨城県の鹿
島灘で漁獲されるマダコです。ブランド名は「鹿島たこ」。お正月には大変もてはやさ
れて珍重されています。何といっても、加工団地と漁獲地が一体のエリアにありますか
ら、鮮度バツグンの原料であることです。タコ加工品としては「蒸したこ」がお薦めで
す。たいへん肉厚で歯ごたえがあり、貝やエビを食べて育っているため、甘味が豊かな
のです。ですから、コクのある味が噛めば噛むほど染み出てきます。タコを好む日本人
の食を支えているのは、タコの加工団地を有するひたちなか市なのです。
<蒸したこの秘密>
ひたちなか市の観光協会推奨土産品にもなっているのが「蒸したこ」。タコといえば、
一般的には茹でて食べることが多いですが、直接水に浸ける「茹でる」という工程は、
実は、茹で汁の中にタコのうま味を逃がしてしまう面もあります。それに対して、ひ
たちなか市のタコ加工会社では、茹で汁に浸けず、タコのうま味をなるべく逃さない
よう、「蒸し」の工程を主とすることで美味しいタコを製造しているのです。ひたち
なか市で作られるタコ製品の秘密は、この「蒸す」ことへのこだわりにあるのです。
<タコ漁について>
11月下旬から2月という冬季の非常に限られた期間しか獲れない鹿島たこ。漁場までは
約20分。沖合8~10キロメートル、水深約20m~30mが鹿島たこの漁場で、伝統の「タ
コツボ漁」で行います。1つ4~5kgのタコツボを、漁場1箇所につき60個~70個仕掛け
て、一晩から数晩、タコが入るのを待ちます。タコツボの仕掛けの目印は、水面に立つ
竹とそこに付けた旗。タコツボの回収は風が穏やかであれば、1日10箇所以上で行われ
ます。タコツボ回収は、目印の竹をたぐり寄せてから、機械と手でタコツボを引き上げ
ていきます。回収は、リレー形式。まず一人目がツボを引き上げ二人目にパス。二人目
がタコが入っているかを確認し、三人目にパス。三人目は、この作業後に再びタコツボ
をスムーズに海に入れることができるよう、ツボと縄の位置を調整しながら、ツボを船
上に並べて置いていきます。後はタコが自分で出てきたところを捕まえたり、ツボに濃
い塩水をかけて追い出して、船上の生簀に保管していきます。これはタコに傷をつけな
いための工夫です。
<タコの豆知識>
1.食用のタコといえば、マダコ、ミズダコ、イイダコですね。
①マダコ:日本で食べられているタコのうち8割を占めています。体長は60㎝ほどで、
沿岸の岩場や砂場などが住み家。調理法は刺身、寿司や煮物といったものに
加え、シーフードスパゲティなどの具にもなります。
②ミズダコ:体長3mにもなる最大のタコ。生息域は水深が100~200mの比較的深い
場所。近年ミズダコの漁獲量が減少していっており、輸入物が増えている。
身が柔らかいため、刺身、しゃぶしゃぶなどに適しています。
③イイダコ:タコの中では小ぶりで体長は約30cm程度。水深10mほどの砂場に潜み甲
殻類を主食としています。茹でてから刺身や酢の物にすると美味です。
2.マダコの国内漁獲量は国内消費量の1/4ほどしかなく、3/4はモーリタニア、モロッ
コなどのアフリカ北西部からの輸入です。国内でのタコ類の漁獲量日本一(2019年)
は北海道で、全国シェアは断トツの66.4%、2位の兵庫県3.6%、3位青森県の3.5%
で国内漁獲量の約74%を占めています。
3.タコは、8本の足のうち、何本の足を使って歩くのか?
タコは、8本の足のうち、海底を歩くときに使うのは、主に後ろの二本だけなので
す。残りの6本はというと…餌をとったり、興味のあるものに触ってみたりと、ヒ
トの手のように使います。
4.鹿島灘で漁獲されるタコといえば,「マダコ」と「ミズダコ」です。
ミズダコとは、茨城ではヤナギダコとミズダコを総称した呼び名で、底びき網漁で
獲られており、日立市ではさくらダコと称して市のさかなに選定しています。
<タコの栄養価と効能>
タコの特徴はタウリンをたっぷり含んでいて、血圧やコレステロール値を下げるので、
高血圧や血管障害を防ぐほか、肝機能を高めてコレステロールが原因となる胆石病を
改善します。またナイアシンは食欲減退、冷え性を改善し、ビタミンEは心臓病や脳梗
塞、ガンを予防します。加えて、ビタミンB2、そして鉄、亜鉛、などのミネラル成分
が豊富です。
<ひたちなか市のタコ文化>
ひたちなか市はタコ加工生産で日本一ですから、タコへの思い入れは強く、街の中には
タコにまつわる施設やモニュメントが目に付きます。
1.8月8日は「タコの日」:ひたちなか市では、8月8日を「タコの日」と定めています。
さらに、10月10日は「とと(魚)の日」で、毎月10日は「魚を食べる日」と定め
ています。この日に訪れた際は、特にタコや魚を食べたいところです。
2.タコ日本一宣言(書籍):地元商工会議所がタコの本を出しています。その名も、
「タコ日本一宣言 : 魚のおいしいまちづくりへの挑戦」。タコに関する様々な情
報が詰まっている必見の一冊。市民の手で、タコの歌「愛しのキューバンボーイ」
のCDも制作しました。
3.立ち寄りたいタコスポット
①あ印:タコ加工会社の中でもその先駆的な会社が「あ印」です。エントランスには、
様々なタコの漁具が飾ってあり、たこ博士の像が出迎えてくれます。2 階には
直売所があり、工場で製造している商品を購入することができます。
②那珂湊おさかな市場:年間100万人以上が訪れるひたちなか市のお魚スポット「那珂
湊おさかな市場」。魚屋特有の威勢の良い声が響き渡り、多くの買い物客
で賑わいます。市場には、おいしい生タコや蒸しタコ、酢タコなどが売ら
れています。那珂湊に来たのならタコなどの魚介類は、お土産におススメ
です。
③那珂湊漁協加工直売所・魚食楽(さくら):那珂湊おさかな市場の対岸にあります。
ここでは漁師めしをお手頃価格で味わえます。そこで売られている「たこ
飯」はその中の名物の1つ。さらに、ここで売られている「那珂湊焼きそ
ば」にはタコが入っており、茹でた地ダコが売られています。
④たこ焼きフェス:毎年8月、世界の料理とコラボしたたこ焼きなど、様々なアレンジ
たこ焼きを食べることができます。(今年は延期)
お薦めの一品に、「みなとの多幸めし」があります。那珂湊漁港などで水揚げの鹿島タコ
を使用した縁起のいい「たこ→多幸」のネーミングのお弁当。時間をかけじっくり煮込ん
だやわらか~いタコ足と、その煮汁で炊き込んだ県産米の蛸加薬ご飯や、那珂川鮭、地元
野菜などとの絶妙なハーモニーがいいです。
是非、このお弁当をご賞味あれ!
<蛇足ですけど・・・>
タコと言えば、兵庫県の明石ダコが有名ですが、真冬の荒波にその身を揉まれて育った鹿
島ダコ の方が、肉厚でしっかりとした歯ごたえがある、と言われているのですよ。