上野公園は美術館・博物館そして動物園などの有料施設に入らずとも、そこかしこを
プラプラと歩けば、寛永寺の名残と共に江戸から昭和を感じる史跡が随所にあります。
陽気に誘われて園内案内図を片手に「建物・彫像・石碑」の探訪を楽しみました。
当日この目で見てきたものを分野別に紹介します。
1.建造物
(1)旧因州池田屋敷表門:国立博物館の屋外展示の一つ。「黒門」とも呼ばれ、
鳥取藩池田家江戸上屋敷の正門でした。昭和29年(1954)にここへ移築。
加賀藩の表門であった東京大学赤門と並び称される格式の高い門です。
(重要文化財)
(2)国際子ども図書館:明治後期に鉄骨補強煉瓦造りのルネサンス様式で建設さ
れたもので、明治期洋風建築の代表作の一つ。2000年に建築家安藤忠雄
氏の参画を得て、国立初の児童書専門図書館として再生した。外見も中
も素晴らしいです。
(3)黒田記念館:大正13(1924)年、日本近代洋画の父、黒田清輝没後の昭和3年
(1928)に竣工したのが黒田記念館です。昭和初期の美術館建築の代表です。
(4)旧東京音楽学校泰楽堂:明治23年に創建。日本最古の木造の洋式音楽ホールです。
(重要文化財)保存修理工事中なので工事塀で囲われていました。
(5)上野東照宮:寛永4年(1627)藤堂高虎が造営。現存する社殿は1651年(慶
安4年)に徳川家光が造営替えをしたもの。当時の建築技術が結集した見
応えのある荘厳な造り。(重要文化財)一見の価値ありです。
(6)旧寛永寺五重塔:寛永8年(1631)江戸幕府草創期の重臣土井利勝が、東照宮
造営にあたり寄進した塔ですが、寛永16年(1639)に焼失し、現在は焼
失後昭和33年(1958)に寄進されたものです。(重要文化財)動物園の
塀越しに見られる。
(7)清水観音堂:寛永寺を建立した天海僧正が建立。寛永8年(1631)に京都の清水
寺に倣って建立された。浮世絵で有名な舞台になった『月の松』や、京都
の清水寺を模した舞台など、小さな寺院ですが見どころがあります。
(重要文化財)
(8)寛永寺弁天堂(不忍池弁天堂):ここも天海僧正の建立。創建当時のお堂は戦
災で消失し、現在のお堂は昭和33年(1958)に再建されたもの。
(9)博物館動物園駅跡: 京成電鉄の京成上野駅と日暮里駅の間で運営されていた駅
です。廃駅となりましたが、今でも電車はこの下を走っています。
2.彫像
(1)トーテムポール:7mの高さがあります。案内板にもなっていて左手が動物園
を示す。下の方に動物がいっぱいいます。その前は桜の木の基準木です。
(2)お化け燈籠:6mの巨大さからお化け燈籠と呼ばれている。日本三大灯篭のひ
とつで、残りの二つは、京都市南禅寺、名古屋市熱田神宮の大灯籠。
(3)小松宮彰仁親王像:皇族でありながら、明治維新後の戊辰戦争(1868年)、佐
賀の乱(1874年)、西南戦争(1876年)等の内乱鎮圧の指揮を執り、その後、
日本赤十字社の総裁を務めるなど、文、武、共に、日本国に大きな貢献を
している。
(4)ボードワン博士像:彼の「上野の山を近代的な公園にすべき」との提言で上野
公園は造られた。だから公園の生みの親ともいえるオランダの一等軍医。
(5)野口英世像:細菌学者。福島の貧農の家に生まれ、北里柴三郎博士(細菌学者。
破傷風菌の培養に成功、破傷風、ジフテリアの血清療法に寄与)に師事し、
ロックフェラー研究所に入り、梅毒の病原体を発見しました。
(6)地獄の門(国立西洋美術館):フランス人建築家ル・コルビュジェの設計によ
る美術館の前庭にある。他に「考える人」「カレーの市民」などのロダン
の彫刻群が展示されている。
(7)上野大仏:度々の地震や火災で破壊され、第二次世界大戦では金属拠出令によ
り胴体を国へ供出。面部のみが寛永寺に戻った。
(8)西郷隆盛像:銅像を見た奥さんが「夫はこんな人じゃなかった」とショックを
受けたという話は有名ですが、その真意は「人前に浴衣で出るような失礼
な人じゃなかった」・・・だったようです。
(9)時忘れじの塔:落語家の故・林家三平師匠未亡人海老名香葉子さんが建立した、
東京大空襲を忘れないための平和の母子像の記念碑
3.石碑
(1)彰義隊戦死者の墓:彰義隊は徳川慶喜の護衛組織。上野戦争で新政府軍に敗れ
解散した。(台東区有形文化財)
(2)天海僧正毛髪塚:家康の参謀となった天台宗の高僧。寛永20年に108歳で死去。
日光に葬られ、この地には供養塔が建てられた。寛永寺の建立者。
(3)博士王仁碑:朝鮮の百済から、論語十巻、千字文一巻と共にやってきた人物で
す。「古事記」「日本書紀」にも記され、日本に漢字、儒教を伝えた偉人。
(4)パゴダ(仏塔):上野大仏再建の願いを込めて上野観光連盟が建立した仏塔。
内部には薬師如来・月光菩薩・日光菩薩が安置されている。
(5)正岡子規碑:野球好きの子規が、大学時代にベースボール大会を行っていたこ
ろに詠んだ句。正岡子規記念球場脇にある。公園内に野球場があるとはね。
(6)川柳発祥の地:川柳の原点である「誹風柳多留」の発祥の地の記念碑。誹風柳
は、江戸時代中期から幕末にかけて、毎年刊行されていた川柳の句集とい
われる。
4.その他
(1)擂鉢(すりばち)山古墳:約1500年前の前方後円形式の古墳。今は丘の上は
休憩所です。公園内に古墳があるのです。
(2)時の鐘:精養軒の脇にひっそりとある。江戸市民に時を知らせていた時の鐘。
今でも朝夕六時と正午の三回鐘が響いている。
(3)上半身だけの自由の女神像:もともとは宮城県石巻市にあったが東日本大震災
で被災した。傷ついた女神像を東京芸術大大学院生が再生させた。
(仮設らしい)
(4)シロナガスクジラ:全長30m、国立科学博物館の前にあるこの模型を見ると、
その大きさに圧倒されます。
(5)蒸気機関車:国立科学博物館前に蒸気機関車D51(デゴイチ)がある。
上野公園は博物館や美術館、動物園、芸術大学など、多くの重要な文化施設が集まるエ
リアですが、国の重要文化財である建造物や史跡が多くあります。
開園から140年、震災や戦災という荒廃を経ながらも、そこにはいつも、公園の文化を
大切に守ろうと奔走する、上野を愛した人々の姿があったのだと思います。
今回の地図を片手の歴史探索は楽しくて疲れを全く感じませんでした。だって新しい発
見がいくつもありましたからね。まだ不忍池周辺を歩いていませんので、次回来たらゆ
っくりと探訪をしながら歩きたいと思います。