ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

春を先駆ける「越年(オツネン)トンボ」

2020-03-23 07:37:00 | 日記


春に先駆けて飛び始めるトンボの話です。日本には約200種(世界で約5000種)のトンボがいるそうですが、そのほとんどは
幼虫(ヤゴ)で冬を越します。良く知られているオニヤンマ、シオカラトンボなどのトンボ類はこのタイプです。
しかし、アキアカネなどのアカネ類とアオイトトンボは卵で冬を越します。

そんな中、成虫の姿で越冬するトンボがいることをご存知でしょうか?名前は「オツネントンボ」、「ホソミオツネントンボ」、
「ホソミイトトンボ」というイトトンボの仲間で、日本ではこの3種類だけが知られています。この3種類は夏に羽化した成虫
が未成熟な状態で冬を越し、翌春、交尾・産卵します。ですから、成虫の姿での生存期間はとても長くて、9~10ヶ月になりま
す。オツネントンボは「越年トンボ」と書きます。彼らは成虫の姿で春を迎えますから、トンボの仲間では一番早く飛び始め
「春の先駆けトンボ」と言われています。

冬場でも近隣にある公共の牛久自然観察の森によく行きます。冬の樹林の中は何もないと思われますが、実は樹木に葉のない冬
季はバードウォッチングに最適なのです。もう一つの目的は越年トンボを見つけることです。3種類しかいない珍しい生態を持つ
トンボ探しは宝探しに似ていて楽しいものです。

樹林の中で越冬中の3種類の越年トンボはみんな地味な茶色です。そして、低木の葉の陰に隠れていたり、枝につかまってジッ
としていますから、目を凝らさないと見つけることは難しいです。探すポイントは日当たりがよく、あまり風の当たらない場所
にあって、擬態になれそうな細い木の枝がでている樹木を見つけることです。

私はこれまで毎冬、越年トンボを見つけてきました。よく止まっている樹木の場所を数ケ所把握しているので見つけられるのです。
巧妙なカムフラージュではないのですがまるで木の枝です。わかって観察しないと間違いなく発見は難しいです。大きさは3〜4cm
といったところ。アキアカネのような一般的なトンボよりも小さいので、通常のトンボのイメージを想像していると確実に見落と
してしまいます。

3種類の越年トンボですが、細身の名がつくホソミオツネントンボとホソミイトトンボの2種は春になるとブルーのきれいな色に変
身します。しかし、細身の名がつかないオツネントンボは地味な茶色のままで変化しません。でも越冬中は3種類ともに地味な茶色
ですから、一匹だけ見つけて名前を識別することは難しいのですが、細身の名の付いた2種は本当に体形が細いです。対してオツネ
ントンボは体がしっかりしているので、確実ではないのですが判断材料になります。

私が見つけているのは1種類だけです。見つけたのはしっかりした体つきなので、おそらく「オツネントンボ」だと思います。その
オツネントンボを今年は見つけることができませんでした。残念に思って、近くにいた学芸員さんに今年は見ているかと聞いてみた
ら、ここにいるのはオツネントンボで間違いないということ、そして、真冬でも陽ざしが暖かいと飛ぶので、今年のように暖冬で陽
ざしの良い日の気温の高さが尋常ではない日は、頻繁に飛んでいるとのことでした。それでも「寒い日は枝にしっかり止まっていま
すよ」と教えてくださいました。

過去に見つけたオツネントンボを思い返してみると、暖かい陽ざしを浴びた枝でモゾモゾと動いていましたね。しかし、冬季の間は
冬眠中なのだからモゾモゾと動いても、枝を離れて飛び立つとは思いませんでした。学芸員さんのお話しで、オツネントンボは真冬
でも暖かい陽ざしがある時は森の中を飛んでいることを知りました。勉強になりました。来年は飛んでいる姿を見つけようと思います。

今冬の日差しの良い日は確かに驚きの暖かさで、3月並みの気温という日が多くありました。いつもの場所で見つけられなかったこ
とに納得です。これも地球の温暖化の影響なのでしょうね。

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街にベンチアートが生まれた背景

2020-03-09 07:54:26 | 日記


江戸時代までは街中でも人々は通りの中央を闊歩していたと思うのです。それが明治時代以降になって自動車が普及したとたん、街中の通りの中央部分は自動車に占領され、街を歩く人々は通りの両側に押しやられて、許可された狭い道幅の中を窮屈な思いや、肩をぶつけ合いながら歩くしかなくなりました。更に過酷なことにその通路には疲れても休む場もありません。だから人々はひたすら目的地まで耐えて歩き続けなければならなかったのです。でも、そんな生活を文句も言わずに受け入れたのは、自動車の持つ利便性や経済効果を認めて、その利潤に頼った生き方を人々が選択したからですよね。

でもこうした抑圧的な生活環境は少しずつ通りを歩く人を疲弊させました。人々は街中を歩く魅力が持てなくなり、徐々に街中へ足を運ばなくなったのです。この結果、人の集まる場所にかたよりが生じて、活力の地域格差、地域の経済格差が生じ、街全体としても活力が失われていきました。

これではいけないと、街に人々を呼び戻そうと行政も商店主たちも立ち上がりました。その第一弾の矢として、最強の手段だとして取り組んだのが、1階に、地面に、人があふれる、人が滞留し続ける街づくりです。そこに軸足を持ってこそ、真にアクティブな街づくりは始まるのだと考えたのです。そして、着目したのが街にベンチを設置することでした。歩き疲れた時にいつでも座れるベンチこそが、最小の投資にして、街に最高の効果をもたらすと考えたのですね。実際、ニューヨークでは2,000ものベンチを座りやすさ、色調の統一、そして会話のできる配置などを考えて戦略的に設置しました。その結果、多くの人々が街に戻って来たのです。

この結果に意を良くして第2弾の矢が放たれました。こうして街中に戻ってきた人々を逃がさず、飽きさせず、長く留まってもらおうと「パブリックアート」の芸術作品が街中に出現したのです。人々はその作品を見に集まるようになりました。パブリックアートとは名前のとおり公共の場所に置いてあるアート作品で、美術館などに行かなくても、誰でも行けそうな場所に置いてあるのが特徴です。設置される空間の環境的特性や周辺との関係性において、街中の空間の魅力を高める役割を担ったのです。公共空間を構成する一つの要素と位置づけされ、記念碑的なものより、象徴的なもの、コンセプチュアルなものになります。そこには建築の壁画、音、風、光などを利用したものも含まれます。皆さんもユニークなアート作品を街中で見かけて実感されているのではないでしょうか。

現在は第3弾の矢が放されています。今、パブリックアート作品とベンチの組み合わせや、ベンチ自体がアート作品であるものなどが街中で見られるようになりました。アート作品とベンチの組み合わせの一つの事例が、写真で紹介した丸の内仲通りのベンチたちです。

街中を歩いていると、必要がなくても座りたくなる、そんな奇抜なデザインのベンチがいろいろと出現しています。年齢を重ねるごとに、お世話になる頻度も増えていく街中のベンチ。座り心地だけでなく、デザインやどんな材質かも気になるところです。

最近は街歩きが楽しくなってきました。これからはこうした奇抜なアイデアのベンチアートを見つけながら歩こうと思います。街を歩いていて、さまざまな形状、さまざまな場所にあるベンチを眺めていると、そこにたくさんの物語を感じることができるのが魅力ですね。
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