ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

姫ネコ・アメリの気まぐれツイート-その6 <裏目に出ちゃった>

2013-10-28 08:23:41 | 日記




 かなり前の事なんだけど、飼い主夫婦の結婚記念日の話をするわね。田舎のご両親

が私の住むマンションにやって来ることになったの。田舎の家に連れて行ってもらった

時以来の再会だったから、あの時のお礼の気持ちを表すことにしたのよ。


お爺さん:おっ、玄関ドアのすぐ中で、アメリが座ってお出迎えしてくれているぞ。

       嬉しいな。こんにちは!元気だったかい?

お婆さん:アメリちゃん、久し振りね。お出迎え、ありがとう!


二人は部屋に入ると早速コーヒーを沸かして、広い丸いテーブルの上にカップを二つ並

べたの。私はコーヒーの匂いが大好きだから、テーブルに飛び乗ってカップに顔を近づ

けたわ。すると、おじいさんが遠くの方から手を伸ばして、無理な姿勢でコーヒーカップ

を取ろうとしているのが見えたから、気を利かせて、お爺さんの方にカップを押してあげ

ようとしたの。

そしたら勢い余って、カップを倒しちゃったのよ、さらに間の悪いことに、すぐ隣にあった

カップまで倒れて、両方のコーヒーがテーブルの上にいっぱいこぼれちゃった。


お婆さん:あら、大変、テーブルの上の物が濡れてしまうから、早く拭き取らなくちゃ。

      台拭きはどこにあるのかしら?アメリ、いたずらしちゃ、だめでしょ。

お爺さん:おいおい、アメリ、会った早々に大仕事を作ってくれたな。


いたずらじゃなくて、サービスしようと思っただけなのに・・・。ウ~ン、大失敗。

コーヒーの片付けが終わって、お爺さんが私を抱こうと手を差し伸べてきたの。私はそ

の手を軽く噛んであげたわ。これは気を許している相手に対する私流のご挨拶なのよ。


お爺さん:痛っ!アメリに噛まれた。それに引っ掻かれた。

お婆さん:アメリ、噛んじゃダメよ。それに爪が伸びているわね。切ってあげましょう。


トンデモナイ!私は爪を切られるのが大嫌い。爪とぎの場所があるから、そこでガリガリ

やれば、それでいいの。でもお婆さんが爪切りを探している様子だったから、いつもの棚

の上に避難することにしたの。エイヤッ!と勢いよく飛び乗ったら、せっかくご両親がお

祝いに買ってきたケーキの箱を蹴飛ばしちゃった。


お爺さん:やられた!ケーキを落とされた。ア~ァ、まっ逆さまだよ。

お婆さん:まあ~、大変。コーヒーの次はケーキなの?爪切りどころじゃないわね。

      早く片付けないと。アメリ、あっちに行ってらっしゃい。

お爺さん:せっかくのケーキが台無しだな。アメリ、ダメじゃないか!


そんなこんなで、私はすっかりダメ猫の烙印を押されたみたい。だって、私を見る目が

二人共、いつもとはちょっと違うんだもの。私はションボリ。

しばらくして、名誉を挽回するために、プレゼント作戦を考えついたわ。実は私ってコレ

クターなのよ。コマゴマしたものを秘密の場所に隠しているの。そのコレクションの中で、

一番のお気に入りが鈴の付いた携帯ストラップ。気が向いた時に、これで遊んでいる

の。お婆さんの好みに合うかもしれないと思ったから、プレゼントするつもりで口にくわ

えて持って行ったのだけど・・・それが裏目に出ちゃった。


お婆さん:アメリが何か、くわえて来たわ。あら、これは私のストラップよ。ずっと前に

      無くしたと思っていたけれど、アメリが隠していたのかしら?

お爺さん:ライオンやヒョウは獲物を木の上などに運ぶらしいから、このストラップも

      アメリにとっては獲物なのかな?隠しておく習性は先祖伝来だったりして・・・

お婆さん:そんなこと、どうでもいいじゃない。それよりも糸がほぐれてしまって、もう使

      えないわ。このストラップは京都で頂いた記念品なのよ。気に入っていたの

      に、アメリがダメにしちゃったわ。今日のアメリはドジばかりね。

      そうだ、ケーキを買い直しに行ってくるわ。


私の思惑は大ハズレ。二人を歓迎しようと思ったのに、こんな結果になっちゃって大弱

り。嫌われて、もう二度と田舎の家には連れて行かない・・・なんてことになったらど

うしよう。

ア~、どうすれば、ご両親の機嫌を治せるのかな~とヤキモキしていたところに、飼い

主の若夫婦がお仕事を終えて帰って来たのよ。事の顛末を聞いた若夫婦が私の弁護を

してくれたお蔭で、お爺さんたちにはちゃんと私の気持ちが伝わったらしいわ。

この日は、本当に心から若夫婦に感謝。お爺さんとお婆さんの私を見る眼が元通りに

なったんだもの。ダメ猫の烙印はあっという間に消え去ったみたいでホッと一息ついた

のよ。

「うまくいかない時には悪あがきをしないほうが賢明だ」ということを学んだ日だったわ。
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お白州に引き出された六人の僧

2013-10-21 08:13:01 | 日記


昔、布教と修行のために托鉢(たくはつ)をしながら、全国を行脚している六人のお坊

さんがいました。あちこちでの彼らの功績が評判となり、今では、どの村でも「幸せを運

ぶ六人の僧」の到来を待ちわびるようになりました。

もちろん、そのような評判になっていることなど、当人たちは全く知りません。ある村の

入口に来た時のことです。「六人の僧 御一行様ご逗留中」と書かれた立札が仰々しく掲

げられているではありませんか。


一の僧:おいおい、私たちはまだ、この村に立ち入っていないのに、この立札は何だ?

二の僧:「逗留中」ということは、すでに六人の僧とやらが村にいるのだな。

三の僧:私たちとは別の六人の僧が存在するとは・・・とにかく村に入ってみよう。


六人の僧が首を捻りながら、村の中に足を踏み入れると、賑やかなお囃子の音や人々

の笑い声が聞こえてきました。六人の僧は目の前をネギやジャガイモを重たそうに抱

えて、急ぎ足で過ぎようとする村人に声をかけました。


六の僧:ちょっとお伺いします。とても賑わっているようですが、今日はお祭りですか?

村人 :いや、祭りではなく、おもてなしの最中だよ。はてさて、お前さんたちは何者だ?

一の僧:全国を行脚している六人の修行僧ですが・・・

村人 :何?お前たちが六人の僧だと!六人の僧 御一行様は村の広場で宴会中だぞ。

     食が終わると、村にすばらしいお宝を残していかれるらしい。お前たちは

     六人の僧の名を騙るニセモノに違いない。お~い、みんな来てくれ。

     ニセモノの六人の僧が現れたぞ。お奉行様のところに引っ張り出してやれ。

四の僧:広場にいるのは本当に六人の僧なのですか?どうか一度、会わせて下さい。

五の僧:こう申してはなんだが、どう見ても、ここが豊かな村だとは思えぬのに、

     大事な食べ物をその方たちに与えている理由を知りたいものだ。

村人 :ニセモノが何を言うか、失礼な!確かにこの村は貧しい。しかし、六人の

     僧様が逗留された村は幸せで豊かになったと聞いている。その方たちがこの

     村に来て下さったのだ。だから、我々は自分たちが飲む酒を水で薄め、料理

     も食べたふりをして六人の僧様のおもてなしをしているのだ。

     おい、こいつらを早く奉行所へ連れて行け。六人の僧様の名を騙るとは不届き

     なやつらだ。思い罰を与えてもらおう。


六人の僧は集まって来た村人に取り囲まれ、奉行所に連れて行かれました。そして、

お白州に引き出されてしまったのです。ふんぞり返った偉そうなお奉行様の尋問が始ま

りました。


奉行 :本物の六人の僧は村の広場におられる。お前たちはあの方たちの名を騙るニセ

     モノであろう。正直に白状しないと百叩きの刑に処してやる。

六の僧:お言葉を返すようですが、本物の六人の僧は私たちなのです。どうか、広場に

     おられる方たちに会わせて下さい。必ず、私たちが本物だと証明して見せま

     すから。

奉行 :それほど自信があるなら、会わせてやろう。おい、広場の僧様たちをこちらに

     ご案内しろ。すぐに、お前たちの化けの皮をはがしてやるから、おとなしく

     しておれ。

一の僧:お伺いしますが、どうして広場の六人が本物だと思ったのですか?

奉行 :教えてやろう。日照り続きで困っていたところにあの方たちが来られ、雨乞いを

     して下さったのだ。すると、すぐに雨が降ってきた。お前たちには到底できまい。

二の僧:今の時期は海からの暖かい空気と山から降りてくる冷たい空気がぶつかり、雷

     が発生しやすいのです。小さくとも黒い雨雲を見つけたら、その下が雨になるこ

     とは誰にでも予想できますよ。おそらく短い時間の雨だったのではないですか?

奉行 :偉そうに何を言うか。確かに短い時間ではあったが、雨が降った。もっと降らせ

     たかったら本格的な雨乞いをするから、食事をさせてくれとおっしゃったので、

     村人が接待しておるのじゃ。六人の僧様を愚弄した罪は騙りの罪よりも重いぞ。


その時です。役人が転がり込むようにして、お白州に駆け込んできました。


役人 :お奉行様、大変です。広場の六人の僧様たちが消えてしまいました。私がお白

     州にニセの六人の僧が来ているので、会って欲しいと伝えたところ、着替える

     から部屋を貸して欲しいと申されました。私は着替えの部屋の前で待っていま

     したが、いつまで経っても出て来られないのです。声を掛けても返事がないの

     で、仕方なく、ふすまを開けたら部屋の中は、もぬけの殻でした。

奉行 :何!いなくなった?まさか、こちら様が本物で、本物が現れたことを知ったニセ

     モノが逃げ出したということなのか?早く追いかけて、捕まえてこい。

三の僧:お奉行様、お待ち下さい。追いかけて捕まえるのはお止めいただきたい。

     きっと、空腹に耐え切れず、こんな悪さを思いついたのでしょう。

     許してやって下さい。

四の僧:皆さまの大切な食料をたくさん食べてしまったようなので、私どもが代わりに

     償いを致しましょう。この村に入る前に調べたのですが、田んぼにつながる

     水路には大きな問題があります。新しい水路を作るお手伝いをさせて頂けま

     せんか?もうひとつの水路ができれば、お米の収穫量が増えると思うのです

     が・・・

奉行 :いやはや、本物のお坊様たちをお白州に座らせてしまうとは、誠に申し訳ない

     ことをしてしまった。濡れ衣を着せられたことに怒りもせず、村のために新

     しい水路の確保にご尽力いただけるとは本当にありがたいこと。

     どうか、よろしくお願い申す。


六人の僧は村人が知らない滝があることを告げ、そこを起点に水路を作るように指示し

ました。共同作業で水路は立派に出来上がり、翌年からは豊かな実りのある村になった

のです。水路の源となった滝は「六僧の滝」と名付けられ、村の入口と滝壺には六地蔵

が祀られました。村人は滝の周辺をいつも清潔に保ち、流れ落ちる水をとても大切にし

続けているそうです。
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テレビの高画質化はどこまで進むのか?

2013-10-14 07:42:37 | 日記



今年はテレビ放送(1953年2月1日)開始から60年、人間で言えば還暦の年だ。

そして地上デジタル放送になって丸2年になる。今、テレビは3D化や4K、8Kといった高

画質化に向かって進化している。私はこの急激な進化に追いついていけず、家電店に

行ってもテレビの販売コーナーに足を向けることはなかった。

ところが先日、偶然にテレビで4K画像をハイビジョン用に変換した「カナディアンロッキ

ーの風景」を、さらにWeb動画YouTubeで「青森のねぶたまつり」の様子を8K画像で

見て、これらの映像の美しさに衝撃を受けた。画像の美しさは私の想像を遥かに上回る

ものだった。

そこで、テレビの高画質化について改めて調べてみた。


1.アナログ放送からデジタル放送へ

  地上デジタル放送はものすごく高画質の映像を圧縮して送っている。しかも受信側

   のデータ欠損が少ないので、地上アナログ映像より遥かに高画質、すなわちフル

   ハイビジョンなのだ。

   買い替えによって高画質映像の実力を、まざまざと見せつけられた。

2.フルハイビジョンから4Kそして8Kへ

  4Kとは大画面・高画質を追求した次世代のテレビだ。従来のフルハイビジョンと比較

   して4倍の画素数と、人が目にする風景を忠実に生成するというICC技術の使用を

   組み合わせることで、たなびく髪の毛一本にいたるまでくっきりと、また、跳ねる

   水滴のひと粒までも鮮やかに描写する。8Kは更に上を行く16倍の画素数だ。

   (※4K液晶テレビとは? …横3,840x縦2,160ピクセル以上の画素数を持つパネ

     ルを搭載した液晶テレビ。横方向の画素数が3,840(約4,000)≒4K(キロ)な

     ので、4Kテレビと呼ばれている。DVDの画質に比べると24倍の画素数)

   私の見た4K映像はフルハイビジョン用に変換したものだが、それでも通常のフル

   ハイビジョン画像と比較して、4Kの画像は圧倒的に綺麗だった。

   8Kテレビは更に高画素数だ。私はパソコン画面で動画サイトのYou Tubeで8Kの

   画像を見たが、印象に残ったのは3D並の立体感だった。すなわち、高画質になる

   ほど3Dが不要なほどに立体感が出てくることを初めて知ったのである。

3.4Kそして8Kからスマートテレビへ

  高画質化が行き着くところまで行けば、次は機能の拡大になるのだろう。「テレビ

   を超える新世代のテレビ」といわれるスマートテレビは将来のテレビの主力になる

   と言われている。大画面・高画質の視聴を目的としたこれまでのテレビとは違い、

   ネットを通じた映像視聴から家庭内の様々な機器を管理し、制御する役割も担える

   テレビだ。そこで、インターネットテレビとも呼ばれている。

4.どこへ行く3Dテレビ

   3Dテレビが売れていないようだ。2010年ごろに次世代のテレビとして鳴り物入り

   で登場し、映画「アバター」のヒットで一躍脚光を浴びたが、世界的な退潮が明ら

   かなようだ。理由はメガネと制作費の高さがネックなのだとか。

5.テレビ画面はどこへ向かうのか

   新しいテレビのトレンドとして注目されているのが「湾曲した4Kテレビ」。画面を

   湾曲させることで、画面が視聴者を取り囲むような形になり、これまでの平面画面

   よりも臨場感のある視聴体験が得られるそうだ。ちょうど映画館のスクリーンが中

   央に向けて湾曲しているように。このシアター体験を家庭で楽しめるのが狙いだ。

6.4Kテレビはテレビ需要の起爆剤となり得るのか?

   テレビを売ろうとしてメーカーが製品のスペックを4倍に高めても、消費者が現在の

    フルハイビジョンの画質で満足していたら、4Kテレビは売れない。

    テレビの需要は2010年度に最盛期を迎え、年間2568万台を販売したが、201

    1年7月24日の地上アナログ放送から地上デジタル放送への移行を境に販売台

    数が一気に減少。2013年度の年間出荷台数は600万台を超える程度に留まる

    と見られているという。こうした状況下で4Kテレビは起爆剤となるのだろうか。

    今、4Kテレビは4Kテレビ放送が始まっていないにもかかわらず、価格が安くな

    ってきたことと高画質化の需要が健在であることから、結構売れているようだ。

    それはパソコンとの接続など「4Kの可能性をテレビだけで終わらせるな」という

    コンテンツが支持されているからだとも聞いている。余計なお世話だとは思が、

    3Dの二の舞にならなければ良いが・・・といささか心配している。

    2020年のオリンピックイヤーには8Kテレビが市場に出て来る。次にどんなテレ

    ビを購入すべきか、悩ましいところだ。
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花の精の音楽隊

2013-10-07 08:34:34 | 日記




 朝早く、仲良し3人組が背中にお弁当を背負って集まってきました。長老の家でフクロ

ウ博士から聞いた「花の精」に会いたくなり、これから裏山の花畑に向かうのです。


ポン吉:あ~、眠い。こんなに早起きをしたのは初めてだから眠くてしかたがないよ。

     だけど、花の精に会いたかったら、早朝の花畑に行かなきゃダメなんだよね。

ミミ :フクロウ博士はそうおっしゃったわ。でも、花の精って本当にいるのかな?

コン太:あのフクロウ博士の話だからウソじゃないと思うよ。

ミミ :そうかな?これまでお花畑には何度も行ったけど、花の精なんて見たことがな

     いわ。

ポン吉:そうだね。もし、本当にいるのなら、僕達にわからないはずはないと思うけどな。

コン太:花の精なんて思いもよらなかったから、気付かなかっただけかもしれないよ。

ミミ :ホラ、お花畑が見えてきたわ。急ぎましょうよ。


仲良し3人組は洞くつの向こう側にある花畑に着きました。色とりどりの花々が咲いてい

ましたが、花の精は見当たりません。3人組は朝食をとりながら、待つことにしました。

しばらくすると、軽快な音楽が聞こえて来たと同時に、甘い香りが漂い始めました。


ポン吉:あっ!あれは何だ?一列に並んで行進しているぞ。だんだん近づいてきた。

     甘い香りも強くなってきた。これが花の精じゃないか?フクロウ博士の言って

     た通りだよ。

ミミ :とても小さいけど、本当に人間の子供のような姿をしているわ。お洋服がとても

     可愛いし、小さな楽器を持っているのね。おもちゃみたいだわ。この甘い香り

     はどこから来るんだろう?

ポン吉:僕達のことには気付かないみたいだから、声をかけてみようよ。

    コンニチワ!君達は花の精ですか?

妖精A:あれ?あなた達には私達の姿が見えるの?どうせ見えないはずだと思ったから

    通り過ぎようとしたんだけど、見えているの?

    あぁ、分かった!フクロウ博士が言ってた仲良し3人組って君達のことね。

    ようこそ!会えて嬉しいわ。

ミミ :言葉が通じるのね。嬉しいな。少しお話を聞かせてもらってもいいかしら?

妖精B:もちろんいいよ。僕達の姿が見えたり、会話ができるのは、仲間以外ではフクロ

     ウ博士と君達だけかもしれないね。でもこの時刻に、ここへ来なかったら会え

     なかったんだよ。僕達がこうして行進するのは太陽が昇り始める頃だけだから

     ね。

コン太:どうして花の精さん達は早朝しか出て来ないの?

妖精C:それはね、花粉を運んでくれるハチさんを呼び寄せるためなんだよ。ハチさんが

     一番活発に働くのは早朝なんだ。だから、朝の早いうちに、音楽と甘い香りで

     たくさんのハチさんが来てくれるように誘っているのさ。

ミミ :花粉って何?運んでもらうといいことがあるの?

妖精B:花は咲いた場所で一生を過ごすんだ。君たちのように自分で動き回ることはでき

    ないんだよ。だから子孫を残すために花粉というものを作って、ハチさん達に運

    んでもらい、受粉のお手伝いをしてもらっているのさ。花の奥には甘い蜜がある

    んだよ。それは花粉を運んでくれるハチさん達へのお礼だね。

コン太:受粉ね~。そうか!花の精さん達は朝早く、楽器を鳴らしながら行進して、ハチ

     さん達に花のある場所を知らせているんだ。そして花もその音楽を聞くと甘い

     香りを一段と強く発散させて、ハチさん達を惹きつけているんだね。

妖精C:その通り、よくわかったね。ほら、ハチさん達が飛んできたぞ。そろそろ僕達の

    今日のお仕事はおしまいだ。帰る時間が近づいてきた。

ポン吉:どこへ帰るの?

妖精A:それだけは内緒なの。今日はハチさん達がたくさん集まってくれたし、あなた達

     にも会えたから、とても嬉しいわ。

ミミ :これまで会えなかったのは、朝早くここへ来なかったからだったのね。

妖精B:もうひとつ覚えていて欲しいことがあるよ。花の寿命は短いから、会える時期は

     限られているんだ。季節が巡ってくれば、必ずここに戻って来るから、その時

     なら早朝に会えるよ。

ポン吉:ネェ、君達のことを長老や動物村のみんなに話してもいいかな?

妖精C:長老のことは聞いているよ。彼なら、きっとわかってくれると思うけど、それ以外

     の住民には理解できないんじゃないのかな。

コン太:君達の話をしたら、動物村のみんながもっと花に関心を持って、踏み荒らしたり

     しないで、大切にすると思うんだけどな。

ミミ :私達だけでも、これからはお花をもっと大切にしましょうね。再会を楽しみにし

     ているわ。次に会うときは、お話をもっともっと聞かせてね。

妖精A:いいわよ。面白い話ならいっぱい知っているから、次に会った時に話すことにす

     るわね。じゃあ、さようなら。


花の精達は楽器を持ち直して一列に並び、ゆるやかなテンポの音楽を奏でながら遠ざ

かりました。それを見送る3人組の頬を爽やかな風がやさしく撫でて、吹き抜けて行きま

した。
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